日本における再エネ事情 (2)改正FIT制度とは?

出典:資源エネルギー庁

再エネ普及の起爆剤として期待されたFIT制度(固定価格買取制度)。開始後は再エネ導入に弾みがつきました。2011年度は電力全体に占める割合が10.4%(水力含む)だった再エネは、2017年度には16%までに増加。同時に、いくつかの課題も見えてきました。改正FIT法で何が変わったのでしょうか?

出典:資源エネルギー庁


旧FIT課題1:毎年増え続ける賦課金

賦課金とは、電力会社の再エネ電気買い取り費用の一部を使用電気量に応じて国民が負担する「再エネ発電促進賦課金」です。制度開始当初(2014年)は再エネの買取量も少なく使用電力1kWhあたり0.22円でした。しかし、2020年5月現在は2.98円。なんと13倍にまで上昇しています。再エネ導入が進むほどに賦課金は増え続けてしまうのです。

旧FIT課題2:太陽光発電への偏り

FITでは発電しやすい太陽光の買取価格が高めに設定されました。そのため、参入者が殺到し、再エネ全体の9割を太陽光発電が占める結果になりました。

旧FIT課題3:認定後も売電しない未稼働案件

中でも問題視されてきたのが、認定初期の高い固定買取価格を維持したまま発電設備を設置せず売電を開始しない事業者の存在です。太陽光パネルがさらに値下がりするのを待って先延ばしにしているこれらの事業者が稼働始めれば、さらなる国民負担増になりかねません。

そこで、これらの課題を踏まえ、再エネ導入目標「2030年度に22~24%」の達成と国民負担抑制を主軸に制度の大幅な見直しが実施されました。

適正事業者による低コスト発電で賦課金増抑制

改正後の主なポイントは、次の3点です。

【1】新認定制度の創設

適正な事業者の確保のため、再エネ発電事業者は事業計画書を提出し、設備のメンテナンスが必須となりました。高い買取金額の権利を持ったまま発電未稼働の事業者は排除されることになりました。

【2】買取価格の決定方法の見直し

住宅用太陽光と風力の買取価格は毎年2円ずつ引き下げられました。事業者のコスト意識を促すためです。天候に左右されない再エネ「地熱・中小水力・バイオマス」の普及促進を狙って2017~19年度の買取価格が固定されました。また、事業用の大規模太陽光設備は認定電力量を設定、コスト効率が高い事業者の参入を後押しする目的で入札制度が導入されました。

【3】買取義務者を小売事業者から送配電事業に移行

改正FIT後は、電力会社の送配電部門が販売する再エネを、小売電気事業者は卸電力市場を通じて購入することになりました。自由な売買で電力市場を活性化させ、再エネ導入を促進させることを狙っています。

FITは2020年末までに再見直し

FIT制度は、2020年度末までにさらなる抜本的な見直しが予定されています。

ドイツなどで導入実績のある、電力卸売市場における再エネ発電事業者の電力販売の市場価格にプレミアム分を上乗せする「FIP(フィード・イン・プレミアム)制度」なども参考にしつつ、詳細が決まっていくようです。