日本の再エネ事情はどうなっていますか?

バイオ燃料としてのパーム油とPKS

出典:バイオマス白書2019(資源エネルギー庁資料より泊みゆき作成)

伸び著しいパーム油とPKS

バイオマス発電の中でも、FIT認定量と稼働量が急増しているのが「一般木質等バイオマス」の発電です。うち、特にパーム油やPKS(Palm Karnel Shell=パーム油を絞った後に出るヤシガラ)を燃料とする発電が著しい伸びを見せています。ともにアブラヤシから取れる産物であるため混同されがちなパーム油とPKS。燃料としての両者の違いとこれらの合法性を含めたバイオマス発電の動きについてみていきます。

油は液体、ヤシガラは木材

まず、パーム油はアブラヤシの主産物(油)であり、「液体」です。FITでは「バイオマス液体燃料」として認定されています。

他方、PKSはアブラヤシの副産物であり、「固体」です。パーム油を製造する過程で発生する工場(農業)残渣であり、一般木質バイオマスと同じ扱いになります。つまりPKSは、バイオマス燃料としては一般木材の仲間なのです。既に多くのバイオマス発電所において木質ペレットやチップと一緒にPKSが混焼されており、PKSの輸入量も年々増加しています。

パーム油発電が抱える課題

パーム油は、世界中で最も使用されている低コスト高品質の植物油です。食品、化粧品、洗剤など生活用品の原料にもなっており、安定した調達が可能です。しかし、原生林を伐採して農地に転換するパーム油プランテーションが森林破壊につながるとして、欧米の環境保護団体を中心に以前から次のような強い懸念が示されてきました。

国際的議論が高まる中、2004年に、課題の解決に向けて非営利組織「Round Table Sustainable Palm Oil(持続可能なパーム油のための円卓会議、通称RSPO)」が設立されます。2013年にはRSPOによって、森林保護や人権問題等の観点から持続的なパーム油の認証基準が策定されました。

現在進行形のパーム油認証

RSPO認証には非常に厳格な複数の基準が設けられています。2020年現在、同認証のパーム油の生産量は未だ世界のパーム油生産量の19%に過ぎません(2020年RSPO調べ)。

その一方で、RSPOではカバーしきれていない課題への対処として、2013年にNGOとRSPO会員のパーム油業界によってパーム油革新グループ (Palm Oil Innovation Group:POIG)が発足し、RSPOに基準を追加したPOIG要求事項(POIG憲章)が策定されています。POIGの動きを受けてRSPOも2015年11月にそれまでの原則と基準をさらに上回るRSPO NEXT認証を発表しています。

こうしたEU中心の動きに対して、世界のパーム油生産の8割以上を占めるインドネシアとマレーシアの両国は、国策で認証制度ISPO(Indonesian stainable Palm Oil、持続可能なパーム油のインドネシア国内規定、2011年)やMSPO(Malaysian Sustainable Palm Oil、マレーシアの持続可能なパーム油、2013年)を導入して、独自の認証パーム油の販路拡大に動いています。

日本の今後のPKS第三者認証

日本国内では、2019年4月に総合資源エネルギー調査会の「バイオマス持続可能性ワーキンググループ」にてバイオマス発電に特化したFIT制度の在り方の審議がスタート。バイオマス発電燃料の調達先の流通経路の確認(トレーサビリティ)と持続可能性の基準について、環境問題や食料との競合の観点も含めた議論が進められており、すでに、「農産物の収穫に伴って生じるバイオマスは主産物(パーム油)だけでなく、副産物(PKS、パームトランク=アブラヤシの古木)についても、第三者認証の調達基準に則り持続可能性(合法性)を確保すること」になっています。今後は副産物も含めて持続可能性の確認方法が決定されたものだけがFITの対象となります。

PKSについては2022年3月までに持続可能性を証明する第三者認証の取得が義務付けられることになりました。パーム油の認証基準であるRSPOはそのままPKSに適用できないため、2019年11月同WG中間報告にて、RSPO認証に加えてとパーム油以外のバイオマスにも適用可能なRSB (Roundtable on Sustainable Biomaterials、持続可能なバイオ燃料に関する円卓会議)の第三者認証によって確認するという考え方が示されました。バイオ発電燃料の持続可能性の基準は5年をめどに見直しを検討することになっています。

早期FIT燃料化が望まれるEFB

アブラヤシには実はもうひとつ、FIT燃料として検討が進められている有望な副産物があります。PKSの外側にある空房(EMPTY FRUITS BUNCH = EFB)です。ペレットとして商品化されたものもありますが、EFBに蓄積しているアブラヤシ栽培時の肥料成分であるナトリウムやカリウムが発電機器にダメージを与える可能性が高いとして実用化には至っていません。毎年発生する3,400万トンのほとんどが廃棄され、メタンガス発生の原因にもなっており、早期のFIT燃料化が待たれるところです。