日本における発電所の燃料と設備改訂はどうなっていますか?

木質バイオマス発電所の燃料と設備

自然の力を利用して発電する太陽光、風力、地熱の場合、それらのエネルギーを十分に得られる場所に設置しなければなりませんが、木質バイオマス発電にはその縛りはありません。しかし、どこにでも設置可能というわけではありません。

燃料の安定的調達が最大のコスト

木質バイオマス発電所の設置には、主に次の点を考慮する必要があります。

中でも重要なのが①。燃料を投入し続けなければならない木質バイオマス発電にとって、燃料の調達こそが最大のコストなのです。

燃料は、発電の方式(タービンの形態)によって変わります。国内で主流となっている直接燃焼方式(蒸気タービン)は、主に木屑を固形状にした木質ペレット、製材端材や間伐材を粉砕した木質チップ、熱分解ガス化方式(ガスタービン)の場合、主に木質ペレット、可燃性ゴミが燃料となります。

燃料にはなぜ輸入材が多いのか?

バイオマス発電の燃料として最も多く使用されているのは木質ペレットです。近年は輸入量が急増しており、対する国産木質ペレットの生産量は微増です(2019年の輸入量は106.0万トン、国産ペレット生産量は131,401トン)。

なぜ産業用国産材ペレットの需要拡大が進まないのでしょうか?この背景にあるのは、林業従事者の高齢化と担い手不足、小規模の家内工場が多く木質ペレットの生産コストが割高である(市場競争力がない)などの課題です。

さらに、輸入燃料は、大量に調達しなければ運送コストの回収が出来ません。発電事業として経済的に成立させるためには、燃料を大量消費できる大規模な設備が必要となり、必然的に10MWを超える大規模発電所の場合、主力燃料は輸入チップやPKSなどになってしまいます。

一方、中小規模の発電所では、国内からの未利用材などを燃料に使用しています。しかし、ここで問題となるのが発電コスト。木質バイオマス発電はエネルギー変換効率が低く(蒸気タービンの場合は10MWで12%前後)、出力規模が小さくなると、発電コストは急上昇してしまうのです。

熱電併給で経済性確保と地域貢献

その解決策として国内でも試行されているのが、中小規模設備の木質バイオマス発電における発電時の排熱も利用する熱供給事業(Combined Heat and Power、CHP)です。CHPはコージェネレーション(Cogeneration)とも呼ばれています。

熱の販売先、しかも年間を通して安定的に大量消費する複数の施設(温水プール、旅館・ホテル、施設栽培、その他公共施設など)を地域内に集積させて持つことによって、中小規模の木質バイオマス発電の経済性が確保され、地域のエネルギー自給にも貢献できるサステイナブルな事業が可能となります。

2020年現在、国内では、宮城県気仙沼市(近隣宿泊施設への温水提供)、秋田件北秋田市(道の駅の足湯)、岐阜県高山市(温浴施設)などで木質バイオマスによる熱電併給事業が行われています。

これら事例で採用されているのは ガス化発電方式です。直接燃焼方式よりも小規模から導入が可能であり発電効率がよい(25%程度)ためです。

2019年8月には熊本県南関町に直接燃焼方式の熱電併給可能な有機ランキンサイクル(Organic Rankine Cycle:ORC)のバイオマスプラントが誕生しました。ORCは蒸気タービンを、水ではなく有機媒体(シリコンオイルなど)を使って稼働させるもので、この国内初の竹によるバイオマスプラントは同年10月より実証運転を開始しています。