政府はエネルギー政策の指針としてエネルギーミックス2030年を公表しています。
これは2030年時点でのエネルギー電源構成比率を示したものです。それによると再生可能エネルギーは22~24%、原子力は20~22%、化石燃料は56%となっています。
ここでは2つの問題があります。一つは原子力です。2011年の東日本大震災の時にすべての発電設備の運転を止めました。そして十分な安全対策を施し、自治体や住民の同意を得られた設備から、再稼働を計画してきました。しかし2020年5月現在で再稼働出来た設備は数か所にとどまっています。原子力には新設する計画や建設中の設備もありますが、現在ではそれらは中断されたままです。このままですと発電所設備も年を重ね、耐用年数を超える設備がでてくることから、それらは再稼働の対象からはずれていきます。そうすると原子力がエネルギーミックスで求められる20~22%の電源構成比率を達成できるのか、現状は非常に難しいのではないかと思われます。
またもう一つの問題は、ここにきて石炭への逆風がさらに強まっていることです。欧州の主要国のうち、英国、ドイツ、フランス、ベルギーなどが2030年以前には石炭火力からの脱却を宣言しています。対する我が国では依然として石炭火力への依存度が高いことが批判を受けています。19世紀の産業革命発祥の地、英国では、石炭が産業を支えてきたわけですが、近年では急激に再生可能エネルギーを促進しており、2026年までに石炭火力の全廃を宣言しています。従ってこのような国際的な石炭への逆風を考慮すれば、石炭への依存度をこれから減らしていかなければなりません。
そうすると我が国は原子力も石炭火力も、エネルギーミックス通りにいかなくなります。では、そうなった時に、代替の電源をどのように確保するのか、という深刻な問題にぶち当たります。もっとも我が国では人口の漸減を受けて電力消費は減るのではないかという見方もあります。しかし一方で、電気自動車の普及、産業の自動化促進、またテレワークがワークスタイルの一つとしれさらに普及すれば、むしろ電力需要は増えるのではないか、という見方もあります。
原子力や石炭火力の代替エネルギーは、再生可能エネルギーしかありません。世界的に見てもその動きは同じです。我が国では22~24%の目標にこだわらず、ますます再生可能エネルギーを促進していかなければならないと思います。