2020年7月7日経新聞の記事、低効率の石炭火力の休廃止についての私見

7/7日経新聞の記事、低効率の石炭火力の休廃止についての私見 バイオマスコラム

経産省が打ち出した低効率の石炭火力発電の休廃止は大きな波紋を呼んでいます。これはすでに政府が発表しているエネルギー施策に沿った動きなので、取り分けて驚きの方針転換ではないのですが、経産省がここまで明確に石炭火力の休廃止に具体的に触れたのは初めてですから、この発表は驚きを持って受け止められました。

数の上でも該当する石炭火力は少なくはなく、電力業界と自家発電を石炭で行っている企業にとっては名指しで死亡宣告をされたようなものなので、ショックは大きいだろうなと思います。

しかしここで二つの議論を呼びます。一つ目は休廃止した石炭火力の代替はどのエネルギーが補うのか、ということです。二つ目は幸いにも死亡宣告を免れた石炭火力は、現在建設中のものは、そのまま建設を進めて大丈夫なのか、ということです。

まず二つ目から行きますと、これはかなり難しいと思います。というのは欧州各国はすでに石炭火力全廃を宣言しているからです。英国、ドイツ、ベルギー、フランスなどが2030年以前に石炭火力全廃を宣言しています。こうした国際世界の動きは無視できませんし、また新設石炭火力の予定地では住民による環境アセスメントのやり直し訴訟や、そもそも石炭火力が必要なのか、という議論と環境を理由とした強い反対が起こっています。

ですから低効率設備のみならず、石炭火力そのものに対する、改めての評価が下されるのであろうと思います。それは電力業界や石炭による自家発電を行う企業にとっては非常に厳しいものになるだろうと思います。

次に一つ目の命題、すなわち代替エネルギーは何を想定しているのかですが、これは経産省も明確には、その発表の場では、述べていません。しかし経産省はエネルギーミックス2030という明確なエネルギー方針を公表していますから、この範囲に収まるようなエネルギーの代替を考えるのだと思います。エネルギーミックス2030では、再生可能エネルギー、原子力、石炭、ガスがおおよそ四分の一を担うことになっています。けれど石炭は休廃止の方向ですから、他のエネルギーとなりますが、ガスは実は再生可能エネルギーではなく、化石燃料です。従ってガスで代替するオプションはありません。原子力は既存の停止中の発電所の再稼働が取り沙汰されますが、実際に再稼働するには難しい関門をいくつもクリアしなければなりません。そうなると石炭火力の代替は再生可能エネルギーしかありません。我が国で認められている再生可能エネルギーは太陽光、風力、地熱、水力そしてバイオマスとありますが、バイオマスは自然エネルギーにも関わらず、太陽光や風力と違って、自然任せではなく、24時間の安定操業が可能で、しかも、要請に応じて、出力の調整も可能な火力発電です。

燃料となるバイオマスは国内にも豊富にあります。また国内バイオマスを活用することで、国内林業の活性化の手助けも可能となります。

このようにバイオマスが石炭火力を代替しなければいけない日はすぐそこに迫っています。具体的施策がすぐにでも必要な状況だと思います。