バイオマス発電所へのAI導入について

バイオマスコラム

バイオマス発電所へのAI導入について考えてみます。その意義は大きく分けて二つあります。一つは発電所の機器類の故障や修理のタイミングを事前に感知して、未然に大きなトラブルを防ぐというメンテナンスの観点です。もう一つは購入したバイオマス燃料の管理と発電所への持ち込みタイミングを最適化して、発電所の稼働効率を最大化するというオペレーションの観点です。

前半の観点では、AIは機器類の不調をわずかな音の聞き取りで感知できますから、24時間体制での稼動ならびに人員の削減が可能になるでしょう。大きなトラブルを防げますし、修理で数日発電所を止めなくてはいけないところを、部品の交換で済めばトラブルとしては軽傷で済みます。こうすることでコストダウンにもつながると思います。

後半の観点では、特に輸入したバイオマス燃料の保管方法は多種多様だと思うのですが、例えば複数種類あるすべてのバイオマス燃料を規格品のコンテナに貯蔵し、それを数段に積み上げて管理するとします。AIであればコンテナの中身が何なのか、いつ入荷したものかも把握できています。またその燃料固有の熱量であるとか水分率なども管理できます。さらに保管場所から発電所に運ぶまでのロジ、例えば何時から何時は道路が渋滞するとか、そういった要素も考慮に入れたうえで、その日の運転状況に合わせた最適な燃料デリバリースケジュールを組めると思うのです。

バイオマスは木質であったり農業残渣であったり、いずれも自然由来の燃料ですから、あまりに長期に保管してしまった燃料は劣化しますので、先入れ先出しの管理も大切になります。

加えてこのシステムを通さない国産のバイオマス燃料も多くのバイオマス発電所では受け入れるので、新たな留意が必要です。国産のバイオマス燃料の品質は季節や天候によって大きく変化します。例えば冬場であればもっと熱量が高い燃料をより多く投入しなければなりませんし、ある季節に豪雨が続けば、国産燃料の水分率が上昇して、燃料としての性能が低下する。そうした時にPKSのように熱量の高い輸入燃料を高率で配合するなどして、発電所の稼働を安定させる必要があります。

こうした燃料由来の調整もAIに任せられると思います。

このようにして規模の大小にかかわらずAIの活用によって、バイオマス発電事業は、事業投資としての収益率向上の可能性はまだまだあるのではと思っています。