日本の再エネ事情

バイオマスコラム

J-クレジット制度とは

「J-クレジット制度」は、再エネ・省エネ設備の導入や森林経営などによるCO2を含む温室効果ガス(GHG)の排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。2013年4月から運用が開始されているこの制度についてみていきます。

前身の2つの類似制度を統合

「J-クレジット制度」の前身には、別々の省庁が主導する2つのクレジット制度がありました。経済産業省主導の「国内クレジット制度」と環境省主導の「オフセット・クレジット(J-VER)制度」です。前者の「国内クレジット制度」は、中小企業等のGHG排出削減を促進するために、中小企業等が削減したCO2排出量を大企業などに買い取ってもらう仕組みです。2008年3月28日に改定案が閣議決定された京都議定書目標達成計画の下、運用が開始されてきました。

後者の「オフセット・クレジット(J-VER)制度」は、国内で実施されたGHG排出削減・吸収プロジェクトを活用して、GHGの削減・吸収量をオフセット用のクレジットとする認証制度です。民間企業等が自らの排出量をクレジット等で埋め合わせて相殺する「カーボン・オフセット」を行う仕組みです。国際規格のひとつであるISOに準拠した信頼性の高い認証制度として、2008年11月から運営されてきました。

この2つの前身制度を発展的統合する形で、2013年、経済産業省・環境省・農林水産省の3省が共管する「J-クレジット」が生まれました。「J-クレジット制度」は2030年までの制度。2030年以降は、未定となっています。

要件を満たせば誰もが実施者に

実施プロジェクトの要件を満たせばJ-クレジットには管理者(実施者)に制限がなく、個人や法人格を有しない任意組織であってもプロジェクト実施者になれます。ただし、プロジェクトに登録すればJ-クレジットが発行されるわけではなく、クレジットの「認証」のために事業者は必ず審査機関の検証(登録プロジェクトのGHG排出削減・吸収量について検証報告書・モニタリング報告書を提出。J-クレジット制度認証委員会が審議、審議の結果を踏まえて国が認証)を受けなければなりません。

企業や自治体等が購入、CSRにも

認証されたJ-クレジットは、大企業や中小企業、地方自治体などに売却することができます。2006年4月制定の地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)により、温室効果ガスを相当程度多く排出する者(特定排出者)には、自らの温室効果ガスの排出量を算定して毎年の国への報告が義務付けられました。J-クレジットは、企業や自治体等が低炭素社会実行計画の目標達成のために購入する、あるいはCSR活動などに活用されています。

再エネも調達量をCDP等に報告可

対象事業は次の4種類です。
●再生可能エネルギー (発電)由来クレジット
●再生可能エネルギー (熱)由来クレジット
●省エネルギー由来クレジット
●森林吸収 由来クレジット  

たとえば、プロジェクト実施者がバイオマスボイラーを導入した場合、導入前と比べたGHG排出量の削減分がカウントされ、J-クレジットとして認証されます。FIT認定設備で発電し、電気事業者に売電した再エネ電力はクレジットの認証対象外になりますが、再エネによるクレジットは、「CDP※1質問」や「RE100※2」に再エネ調達量として報告することができます。

※1 英国の慈善団体が管理する非政府組織(NGO)であり、投資家、企業、国家、地域、都市が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営(出典:CDPジャパン)。企業に対して気候変動質問書を送付し、評価の上開示している。

※2 企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ。世界や日本の企業が参加(出典:環境省)。REはRenewable Energy=再エネの略。

J-クレジットの登録・認証等の詳細については、当該サイトをご覧ください。