2020年度現在、未利用木材のFIT調達価格は、2,000kW未満が40円、2,000kW以上が32円と、木質バイオマス種別では最も高い価格が設定されています。そのために未利用木材の需要が高まり森林の過度の伐採につながるようなことはないのでしょうか?
「高すぎて過伐」にはならない理由
結論から言えば、当面は、そのような事態にはならないと考えます。
第一の理由は、未利用木材の発電用価格が、建築や家具の製材用等のマテリアル利用の価格を上回るほどでないことです。木材需要全体からみれば、燃料用が占める割合はまだ小さいものです。
出典:林野庁「我が国の木材需給の動向」
第二に、未利用材の燃料利用は持続可能な森林管理と一体となって進められていることが挙げられます。FIT調達価格の適用となるためには、森林経営計画の対象林や保安林など特定の森林から適切に伐採、生産された林地に放置され未利用となっている材であることの証明が必要となります。
未利用材燃料は利益が生み出しにくい
未利用材燃料は、森林内からの搬出や加工等その生産過程で多くのコストがかかっています。木質バイオマス発電はコストの大半が燃料の調達が占めています。高額な未利用材燃料は、それで生産した電気がたとえ40円または32円で販売できたとしても利益が生み出しにくいのです。
こうした理由から、当面、未利用材が高い価格設定故に需要急増して森林の過度の伐採につながるような事態にはならないでしょう。
林業政策の視点からも総合的な施策を
「未利用木材」は2区分されています。一つは製材用や合板用に丸太などマテリアル利用用に伐り出した後に残る小径材や枝条、端材などの「林地残材」です。もう一つが、伐採されたまま森林内に放置された丸太などの「間伐材」です。後者がマテリアル利用と競合する懸念について指摘する声もあります。今後の未利用材の燃料利用は、林業政策との関係を整理しつつ総合的に進めていくことが望まれます。