バイオマス・ニッポン総合戦略

バイオマスコラム

日本がバイオマスの利活用に国を挙げて取り組むきっかけになったのが、2002年12月に閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」です。バイオマスの注目も一気に高まりました。

府省横断で取組む、バイオマス利活用推進の行動計画

2002年6月、バイオマスの総合的な利活用推進を目的として内閣府、農水省、経産省、環境省、文部省、国土交通省共同によるプロジェクトチームとアドバイザリー・グループが設置されました。7回の会合を経て、同年12月「バイオマス・ニッポン総合戦略」は閣議決定されました。
同戦略では、1)地球温暖化防止 2)循環型社会の形成 3)競争力のある新たな戦略的産業の育成 4)農林漁業、農産漁村の活性化のためにバイオマス資源の利活用を促進する必要があると規定しています。

資源の製品及びカスケード利用に言及、高い目標設定

「バイオマス・ニッポン総合戦略」の特徴は、次の3点にまとめられます。
①バイオマス資源の製品利用についても言及
バイオマスといえば、それまでエネルギー利用が一般的でした。「バイオマス・ニッポン総合戦略」では、製品の素材としての利用もバイオマス資源の有効利用として位置付けています。
②資源のカスケード利用の重要性について指摘
バイオマス資源を余すことなく包括的な観点からの利活用促進をうたっています。
③高い具体的目標設定
下表のとおり、2010年を目途とする、具体的な高い数値目標を掲げています。

      出典:「バイオマス白書2003年」

京都議定書発効等の状況を踏まえ、目標値の見直し

2006年には、前年に発効した京都議定書の目標達成計画やこれまでのバイオマスの利活用状況を踏まえて、新たに2030年を見据えた「バイオマス・ニッポン」の姿として国産バイオ燃料の本格的導入、林地残材などの未利用バイオマスの活用等によるバイオマスタウン構想の加速化等を図る等同戦略の見直しが行われました。

その結果、以下の点が変更となっています。
●バイオマスタウンを500程度構築→ 6割程度の300地区
●2010年度までに原油換算308万キロリットルのバイオマス熱利用を導入
●2010年度までに原油換算50万キロリットルのバイオマス由来輸送用燃料を導入

見直しを受けて、2008年5月には「農林漁業バイオ燃料法」が、2009年6月には「バイオマス活用推進基本法」がそれぞれ制定されました。

総務省が改善勧告、バイオマスタウンはバイオマス産業都市へ

前述のように2010年度を目途に具体的な高い目標値を掲げてきた「バイオマス・ニッポン総合戦略」ですが、2011年、同計画に基づいて実施された214事業のうち、事業効果が表れたと認定できるのは全体の16%にあたる35事業であり、バイオマス関連施設の約7割が赤字という厳しい状況にあるとして、総務省は農林水産省と関係6省に改善を求める勧告を行っています。特に林地残材の98%、食品廃棄物や農作物非食用部の70%以上が活用されていないなどの課題が指摘されています。

2020年現在、「バイオマスタウン構想」は、2013年度にスタートした関係7府省(内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)による一大国家プロジェクト「バイオマス産業都市構想」に引き継がれています。