LCAとバイオマス利活用システム

バイオマスコラム

バイオマスの変換方法には、さまざまなものがあります。

より適正にバイオマス利活用システムをデザインするには、需要の種類・規模、原料とその組み合わせ・発生量等各地域や時期といった異なる可変要素を考慮した上で、「全体」をとらえて「環境負荷」を評価することが重要になります。                             「全体」の環境負荷の低減を達成するための分析・評価アプローチ手法がLCA(ライフサイクルアセスメント、Life Cycle Assessment)です。LCAを用いることで、バイオマスの変換プロセス、バイオマス利活用システムの特性を理解して課題を改良していくことができます。

LCA実施の留意点

製品やサービスのプロセス全体の「環境負荷」を推計して俯瞰的に分析・評価できる点がLCAのメリットです。バイオマス利活用システムにてLCAを実施する場合、次のことを明確にする必要があります。

(1)LCAを実施する目的は何か                              (2)何を比較するのか                                  (3)どのようにシステム境界を設定するか

(1)LCAを実施する目的は何か

目的を明確化する「定義」として次のようなものがあります。

(2)何を比較するのか

比較するためには、定量化できるよう製品やサービスの機能を特定して性能特性を明らかにしなければなりません。特定した機能を決定し定量化するための単位を「機能単位」と呼びます。通常、機能単位は、評価する製品やサービス、機能の「量・品質・時間的要素」の各値で構成されます。      たとえば、食品容器の機能が、量=「飲料1リットル」、品質=「FDA(米国食品医薬品局)の無菌条件」、時間的要素=「2週間保存」であると仮定した場合、機能単位は「FDAの無菌基準を満たしており、1リットルの飲料を2週間保存できる食品容器」となります。                 この機能を実現できるプラスチック製品、金属製品、または紙製品と比較します。飲料1リットルを保存するのに必要な紙、プラスチック、または金属の平均質量をシステムごとに算出して、その基準フローに従って全てのシステムに対してインプットデータとアウトプットデータを収集し集計します。

例示出所:日本化学工業協会「エグゼクティブガイド ライフサイクルアセスメント」

 

しかしながら、バイオマスの利活用では廃棄物や副産物の「処理」と併存して「再生資源の生産」というサービスが提供されるなど、単純な廃棄物処理のシステムとして取り扱えない場合も少なくなく、「機能単位」の設定が難しくなります。                            バイオマス利活用を対象にLCAを実施する場合は、システム全体のサービス、あるいはシステム全体の持続性を「機能」として設定するといった工夫が必要となります。

 

(3)どのようにシステム境界を設定するか

製品やサービスのライフサイクルは、「原材料採取・生産、製造、輸送・流通、使用、廃棄処理」のプロセスから構成されています。しかし、ここにリサイクル(再資源化・変換)プロセスが組み込まれると、単純にLCAのシステム境界が決められない場合が生じます。

リサイクルのループには、閉ループ型開ループ型があります。

前者は、回収された瓶を再度瓶として使用するように、“ある製品から同一製品に戻る”ケース、後者は、回収されたペットボトルがフリース製品に戻るように、“回収された製品から別の製品に戻る”ケースです。バイオマス利活用は、多くの場合「閉ループ型」と「開ループ型」が混合するシステムとなっており、どのようにシステム境界を設定するかでLCAの評価結果が大きく変わってくることになります。

たとえば、木質系バイオマスの利活用システムを考えてみます。                 まず原料である木質バイオマスが「森林管理(植林~伐採)~輸送・流通~製材~使用~廃棄」のライフサイクル を持ちます。次にその木質バイオマス(廃材)がチップやペレットに加工されるまでのライフサイクルがあります。つまり、それぞれに独立したライフサイクルをもつ活動からのアウトプットを組み合わせてシステム境界を設定することが重要になってきます。