バイオマスプラスチックは主に、飼料用や工業用のトウモロコシの一種「デントコーン」からつくられます。アメリカで製造されるバイオマスプラスチックのほとんどが、遺伝子組み換えを行ったデントコーンを原料としており、日本でもすでに市販されています。バイオマス由来プラスチックの原材料が遺伝子組み換え作物でないことを証明することは、現在の分析技術では不可能と言えます。
遺伝子組み換え技術で原料成分を効率良く生産
バイオマスプラスチックの従来の製法は、土の中にいる細菌が特定の環境下で蓄えた栄養を人為的に植物に与えてバイオマスプラスチックの原料となる成分を植物内で生産するもの。しかし、この方法では、細菌を育てるための大きなプラントや大量のエサが必要になり手間や費用がかかります。そこで登場するのが遺伝子組み換え技術です。植物の葉緑体に遺伝子を組み込み、原料となる成分を自力で作ることができる植物が生まれれば、畑に植えておくだけで効率よくこの成分を生産することができるようになります。
セルロースからバイオ燃料も代替プラスチックも
2019年3月、ウィスコンシン大学マディソン校を拠点とする研究者らが、遺伝子操作した土壌微生物によって、生分解性ポリマーの原料となる PDC(2-ピロン-4,6-ジカルボン酸)をリグニンから直接獲得する技術を開発しました。米国エネルギー省(DOE)が資金を提供するGreat Lakes Bioenergy Research Center(GLBRC)の、によるものです。
この土壌微生物「ノブスフィンゴビウム・アロマチシボラン (Novosphingobium aromaticivorans)」は細胞壁中のセルロースと他の化学成分との隙間を埋める樹脂であるリグニンのほぼすべての成分をより小さく分解。従来はこの分解プロセスにおいて、PDC が得られるのですが、同微生物の遺伝子を 3 個除去することで、リグニンから PDC を直接獲得できたのです。
日本では、PDC はプラスチックボトルや合成繊維等の PET ポリマーの添加剤として、すでにさまざまな製品で使用されており、環境中で自然分解された時に環境ホルモンを浸出させないことがわかっています。
リグニンは、長年、製紙工場のボイラーで焼却処分されてきました。
バイオマスの燃料への転換効率の改善に、植物の細胞壁の構造、特にリグニンの含有量や組成を変える必要があります。リグニンが、セルロースを発酵性の糖に転換する際に使われるセルロース分解酵素に、物理的なバリアーとして立ちはだかってきたのです。
まだPDC は既存の技術において獲得が難しいものですが、もし、バイオ燃料をセルロースから作製してリグニンを排出し、今まで不要物だったリグニンを効率的・高収率にPDCに転換できるようになれば、代替プラスチックのみならず、新たなリグニン産業が生まれるかもしれません。