バイオマスとエシカル消費

バイオマスコラム

エシカル消費とは、直訳すれば「倫理的消費」の意味。人の良心に則った消費、つまり、地球環境や社会的課題の解決を考慮し、その課題に取り組む事業者のものを購入するなどの消費を行うことを指します。

SDGsの多くの目標を網羅

エシカル消費は、特に、2015年9月に国連で採択された2030年までに達成すべき持続可能な開発目標(SDGs)の17のゴールのうち、ゴール12「つくる責任 つかう責任」に関連します。しかし、それだけでなく、エシカル消費を実行に移すことは、目標1(貧困をなくそう)や目標10(人や国の不平等をなくそう)、目標13(気候変動に具体的な対策を)、目標14(海の豊かさを守ろう)、目標15(陸の豊かさも守ろう)、目標16(平和と公正をすべての人に)、目標17(パートナーシップで目標を達成しよう)といった目標をも同時にカバーできることになります。

英国発祥の社会的な消費概念

エシカル消費は、1980年代の英国におけるボイコット(不買運動)に源流を見ることができます。

1990年代、英国では社会的排除や失業問題が深刻化、企業の社会的責任に対する関心が高まる中、1997年にブレア政権が発足します。同政権はCSR政策に積極的に関与し、98年には「これからはエシカル(倫理的)アプローチが重要である」というエシカル・トレーディング・イニシアチブ(ETI)を発表。ブレア元首相が80年代末から90年代初めにかけて、外交上の政策過程で道義的・人道的な国際介入を「エシカルアプローチ」と表現したことに始まると言われています。(出所:消費者庁「海外における倫理的消費の動向等に関する調査報告書」)。

1989年には消費の専門誌『エシカルコンシューマー(Ethical Consumer)』が発行され、「倫理的消費」という言葉が生まれました。1998年にはエシカルビジネスを推進する協会「エシカル・トレーディング・イニシアチブ(Ethical Trading Initiative)」も発足。

英国では、同誌調査による市場規模は、1999年の130億£から2019年度は980億£に達しています。

単なるエコ消費とは違う

エシカル消費は、たとえば、商品選択の際に、オーガニックやヘルシーといった自身の健康のため、あるいは環境技術が優れた省エネ商品を地球に優しいという基準だけでなく、開発途上国生産者の自立や児童労働問題や貧困の撲滅や改善など人権への配慮も重視します。「それは『いつ、どこで、誰が、どうやって』つくったものなのか」という商品やサービスの背景のストーリー自体を自ら興味を持って調べ、そこに価値を置いて意識的に選択する、一人ひとりのそうした行動の積み重ねによって社会課題の解決に結びつくと考えるのです。

5つのカテゴリーにおける消費例

具体体にはどのようなものがエシカル消費になるのでしょうか?

2014年には「日本エシカル消費推進協議会」が設立され、2015年には消費者庁にエシカル消費の研究会である「倫理的消費調査委員会」が設置されました。

消費者庁は次のような5つのカテゴリーを定め、代表的なエシカル消費例を挙げています。

  1.  人  ・・・ 障がい者支援につながる商品
  2.  社会 ・・・ フェアトレード商品、寄付付きの商品
  3.  環境 ・・・ エコ商品、リサイクル製品、資源保護等に関する認証がある商品
  4.  地域 ・・・ 地産地消、被災地産品
  5.  動物福祉、エシカルファッション

出所:消費者庁「〜あなたの消費が世界の未来を変える〜

購入するだけでなく、地球温暖化抑制に寄与する車などのレンタルやシェアを積極的に活用することも、エシカル消費となります。

日本でも2000年前後から環境に配慮した家電や車、そうした素材で作られた衣料・家具・食品・雑貨などが登場してきました。馴染みのあるところではフェアトレードのチョコレートやコーヒーがありますよね。近年は、さまざまな環境認証ラベルの注目も高まっており、エシカル市場そのものが拡大してきていると考えられます。

エネルギーも今後はエシカル重視

第三者機関に「持続性」や「追跡可能性」を認証されたバイオマス由来のエネルギーを調べて知って選択し購入することも、「エシカル消費」です。

地域活性化のための地産地消エネルギーシステムで生産されたバイオマスエネルギーを購入することは、まさにエシカル消費に当たります。

多くの企業はSDGsの達成に取り組んでいます。一人ひとりのエシカル消費が、ひいては企業の評価を高めることにもつながるのです。