次世代バイオエタノール

バイオマスコラム

バイオエタノールは、製造形態別にいくつかに分類されます。
とうもろこし、サトウキビ、大豆などの穀物・廃糖蜜をアルコール発酵させて醸造して製造するのが在来法です。しかし、この第1世代バイオエタノールには、その生産のために飼料用穀物の作付面積が減り穀物相場が高騰し食料との競合、またサトウキビ畑拡大による森林伐採などの環境への悪影響など倫理面での問題が顕在化しました。
そこで登場したのが、第2世代である非食材や食材のうちの非食部分(デンプンや油を回収した後に廃棄される部分)を原料とするバイオエタノールです。原料には、廃材/乾燥地生育植物であるサボテン・牧草・藁・トウモロコシ茎・間伐材のセルロース等があります。

バクテリアでセルロースを分解
従来、セルロース細胞壁の分解は熱と化学処理を伴う難しい問題でした。しかし、米メリーランド大学カレッジパーク校のSteve Hutchesonは、チェサピーク湾の沼地で発見されたバクテリアが強力なセルロース細胞壁の分解能力を有する事を突き止めました。また、琉球大学や理化学研究所等による研究により、シロアリの消火器官内の共生菌によるセルロース分解プロセスがバイオエタノールの製造に役立つ事が明らかになりつつあります。

畑に廃棄の非食部分の環境影響も
米国では2000年代前半から、食料との競合対策として穀物の収穫後に残った茎、葉、穂軸である 「ストーバー」を含めたセルロース系バイオ燃料として利用する試みが始まっています。「ストーバー」は、これまで収穫後に畑に放置・廃棄されてきました。
実は、ストーバーには上記のような役割があるのではないかと考えられ、米国環境保護庁(EPA)の環境基準に則った畑から回収するストーバーの適正量など米国の農務省や大学で研究が進められています。

コスト面の課題が阻む国内普及
日本国内では、2006年にRIT(地球環境産業技術研究機構)とHONDAがセルロース分解法の大幅なコストダウンを可能とするRITE-HONDA法を開発しました。また、トヨタ自動車も熱帯の非食植物「ネピアグラス」を原料とするバイオエタノールの実用化を目指して研究を進めています。2013年以降、各地にはさまざまなプラントが建設されました。しかしながら、やはり製造コストの課題をクリアできず、一部の小規模な地産地消事業を除き、国内のほぼ全てのバイオエタノール事業が継続を断念する結果に至っています。
日本のバイオエタノールの自給率は依然極めて低く、ほぼ全量をブラジルからのサトウキビ由来のバイオエタノールに依存しているのが現状です。2020年現在、非可食原料を使用した環境性能に優れた、国産次世代バイオエタノールについて開発と実証実験が進められているところです。

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