脱炭素に向けて、車も環境負荷の低いものへの移行が始まっています。
有望なものが燃料に「電気を使う自動車」と「バイオ燃料を使う自動車」、いわゆる「エコカー」です。
日本のエコカーのタイプ
クルマのエンジンに使われる燃料は、ガソリンと軽油です。
日本国内で市販・実用化されているタイプのエコカーは下表のとおりです。
なお、バイオ燃料で走る車は、いまのところ、地域活性化・循環型社会構築の観点からの廃食油原料のバイオディーゼルで走る公用車を中心としたもののみとなっています。
電気で走る、または電気を作りながら走るEV
世界に先駆けたEVカーといえば、トヨタの「プリウス」です。「プリウス」はハイブリッド車(HV)です。HVは、2つ以上の動力源、「電動機=モーター」+「内燃機関=エンジン」、つまり、電気とガソリンの2つを使って走る車のことを指します。
純粋な電動車は、蓄電池とモーターによって走るBEVです。
燃料電池車(FCV)は、搭載する水素を燃料に酸素と反応させる発電機(=燃料電池)で電気を作りながら走る車です。しかし、LCAの観点でみた時、ガソリンの代替である水素は化石燃料からつくり出すことからカーボンニュートラルであるとは言えません。
バイオ燃料車は、ガソリンや軽油に混ぜて走る
一方、バイオ燃料で走る車をフレックス燃料車(FFV)と呼びます。いわゆる、代替燃料車です。こちらは、ガソリンや軽油に、バイオマスからつくったアルコール(バイオエタノール)や脂肪酸メチルエステル(Fatty acid methyl ester、FAME=バイオディーゼル)を混ぜたものを燃料にします。それぞれ単一の燃料タンク、燃料供給系、エンジンのまま、つまり新規のモーター開発やエンジンと電動系の総合制御など新たな開発費を投入せずに、バイオ燃料を任意の混合で走ることが可能です。
フレックス燃料車のエンジンのバイオ燃料に対応する混合率の幅は車種により異なります。たとえば、欧米で見かける「E10対応車」はエタノール10%・ガソリン90%、「E85対応車」はエタノール85%・ガソリン15%で構成する燃料に対応する車です。
バイオ燃料の問題点は,燃料の供給量です。原料であるサトウキビやトウモロコシといった第一世代のバイオ燃料は、普及するほどに食料との競合問題が起きてしまいます。食料競合を避けた非食部を使った第二世代バイオエタノールの開発と実証試験が世界中で進められていますが、成長の早い植物をアルコール発酵させることにしたものの効率が悪く、その利用状況を見ると、2021年現在経済的に成立した条件下で商用化されているものは未だありません。
トヨタがハイブリッドFFVを開発
2018年、トヨタのブラジル生産/販売事業を担う「Toyota do Brasil(ブラジルトヨタ)は、フレックス燃料車に世界初ハイブリッドシステムを搭載した車を発表、翌年10月から本格生産を開始しています。ブラジルは、いまや全自動車販売台数の約9割をFFVが占めます。1973年の石油危機を発端とした原油の高騰を受け、1975年から「国家アルコール計画(プロアルコール)」を実施。1993年にはガソリンへのエタノール混合が法律により義務づけられています。バイオエタノール原料であるサトウキビ生産を自国で賄えるブラジルでは、それが可能なのです。
なお、トヨタは、一般的なFFVに比べて、ハイブリッドFFVは、特にサトウキビ由来のエタノールのみを燃料とする場合、CO2排出量を大きく削減とできると試算しています。