「自社で製造している木質ペレットがなかなか売れていない」
「バイオマスの品質を保証する『認証』を活用して、差別化を図りたい」
あなたはもしかしたら、木質ペレットなどのバイオマス燃料の販売先を増やすために「バイオマス関連の認証」の取得を検討しているのではないでしょうか。
認証は“第三者によるお墨付き”が得られるものですから、競合他社との差別化を図るうえでは、非常に有効な手段です。
しかし、バイオマス関連の認証は、さまざまあります。
それぞれの特徴を理解しないと、不要な認証を取得しかねませんから、注意が必要です。
そこで本記事では、バイオマス発電所向けに木質ペレットを生産しているメーカー様におすすめの「バイオマス関連の認証」を3つご紹介し、それぞれの特徴について解説します。
おすすめのバイオマス認証3つ |
・FSC®(Forest Stewardship Council®:森林管理協議会) ・SBP(SUSTAINABLE BIOMASS PROGRAM:持続可能なバイオマスプログラム) ・GGL(GREEN GOLD LABEL) |
「バイオマス認証を取得したいが、どれを選んだらいいのかわからない」という方にとって、参考になる記事です。
それでは早速、みていきましょう。
目次
1.バイオマス認証とは?
「バイオマス認証」という言葉に、決まった定義はありません。
しかし、おおまかにいえば「生物由来の資源(バイオマス)に対して、3つの観点から品質を調査することで、品質を保証する認証」と定義できます。
バイオマス認証の基本ポイント |
・持続可能性(Sustainability) ・合法性(Legality) ・追跡可能なこと( traceability) |
・持続可能性(Sustainability)
「持続可能性(Sustainability)」とは、自然環境の維持に支障を与えるようなバイオマスの製造が行われていないかをチェックする観点です。
持続可能な社会を目指すSDGs時代、もっとも注目されているチェック観点といえるかもしれません。
おおまかには、以下に挙げる観点について調査します。
・バイオマスの枯渇につながらないか ・周辺の植生に悪影響を与えないか ・動物のすみかを奪わないか |
・合法性(Legality)
「合法性(Legality)」とは、違法に伐採された原木を使用したバイオマスでないかをチェックする観点です。
具体的には「樹木の伐採が禁止されているエリアで伐採された原木を用いていないか」といったことを調査します。
・追跡可能性(Traceability)
「追跡可能性(Traceability)」とは、バイオマス燃料を製造する際の「生産~流通」までの全プロセスについて「見える化」されているかについて調査する観点です。
例えば「原木の伐採/輸送/バイオマス工場での加工/海上輸送/荷揚げ/発電所への搬入」に至るまでのプロセスで、どれくらいの温室効果ガス(二酸化炭素など)を排出しているのかを計算し、石炭などの化石燃料を使用した場合のプロセスと比較して「どれくらい温室効果ガスの削減効果があるのか」などが調べ上げられます。
製品の製造過程で排出される温室効果ガスは「LC GHG(=Life Cycle Green House Gas/意訳:製品製造のライフサイクルで排出される温室効果ガス)」と呼ばれています。
調査の結果、LC GHGが「化石燃料を使用した場合と比べて有意な差が見られなかった」となれば、バイオマス認証が得られないようなケースも出てくるだろうと考えられます。
まとめると、バイオマス認証とは以下のようなものだといえます。
バイオマス認証の定義 |
バイオマス資源に対して『持続可能性』『合法性』『追跡可能性』3つの観点から、品質を調査し、『適格』だと認められた際に、そのバイオマス資源の品質に対して“安心して使えるものである”ことを公に認める認証である |
2.バイオマス認証を取得するメリット
「バイオマス認証とは何か」について、ご理解いただけたのではないでしょうか。
しかし一方で、このバイオマス認証は「誰にとって・どのようなメリットがある」ものなのか疑問が湧いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論からいえば「バイオマス燃料メーカー」と「バイオマス発電所」の2者に大きなメリットがあります。具体的には、以下のように整理できます。
バイオマス認証を取得するメリット | バイオマス認証を取得した燃料を使用するメリット |
バイオマス燃料製造メーカー | バイオマス発電所 |
●競合他社との差別化ができる (=売上の拡大につながる) バイオマス認証を取得することで、「環境上のリスクがない」と公に認められるため、バイオマス発電所から選ばれやすくなる | ●事業継続を脅かすリスクを排除できる (=持続的に売上を上げられる) バイオマス認証を取得したバイオマス燃料を発電所で利用することで、社会的な信用が得られて「事業継続」につながる |
一つずつ、みていきましょう。
・「バイオマス燃料製造メーカー」が競合他社と差別化できる
バイオマス認証の取得で、メリットが得られるプレーヤーの一人が「バイオマス燃料の製造メーカー」です。具体的には、木質ペレットの製造メーカーなどが挙げられます。
これはイメージが湧きやすいかもしれません。
例えば、A社とB社、2つのバイオマス燃料メーカーが、バイオマス発電所に営業をかける場合。品質・価格ともに拮抗しているのであれば、どちらの会社の燃料が導入されやすいでしょうか。
●A社: 『持続可能性』『合法性』『追跡可能性』3つの観点から品質が保証された(=バイオマス認証を取得している)バイオマス燃料を製造している ●B社: バイオマス認証は取得していない |
この場合、いわずもがな、A社ではないでしょうか。
バイオマス認証を取得しているのであれば、環境負荷の少ないビジネスを行っている事業者だと認められます。そのため、競合他社よりも一歩抜きんでることができます。
これが、バイオマス認証を取得することで得られるメリットの一つです。
・「バイオマス発電所」が事業継続を脅かすリスクを排除できる
一方、バイオマス認証を取得したバイオマス燃料を利用する「バイオマス発電所の事業者」もメリットが得られます。
なぜならば、社会的な信用が得られて「事業継続」につながるからです。
例えば、A社とB社、2つのバイオマス発電所がある場合。
どちらの発電所の方が、ブランドイメージがよいでしょうか。
●A社: 『持続可能性』『合法性』『追跡可能性』3つの観点から品質が保証された(=バイオマス認証を取得している)バイオマス燃料を使用している ●B社: バイオマス認証を取得したバイオマス燃料は一切使用していない |
こちらの場合も、A社に軍配が上がるのではないでしょうか。
「認証を取得したバイオマス燃料も、取得していないバイオマス燃料も、燃やしてしまえば同じ」と考える方もいるかもしれません。しかし、これからのSDGs時代には、事業者としての「透明性」や、安心して取引できる「信頼性」のようなものが益々求められていくでしょう。
そうしたなかで「燃やせば何でも一緒」といった態度を貫くような企業は生き残れません。
これからは「持続可能な社会を作り出すために、自社は何ができるか」について徹底的に考え、相応の企業経営を行っていく志がある企業が選ばれていきます。
そういった時代背景を鑑みると、バイオマス認証を取得した燃料の調達は、バイオマス発電所にとっても、競合他社と差別化を図れる取り組みだといえます。
3.3つのおすすめ「バイオマス認証」
「バイオマス認証を取得するメリットはわかった。それで、どの認証を取得すればいいのだろう」と感じた方もいらっしゃるかと思います。
そこで、本章では、バイオマス燃料メーカーの方々に対して、私がおすすめするバイオマス認証を3つご紹介したいと思います。
おすすめのバイオマス認証 |
・FSC®(Forest Stewardship Council®:森林管理協議会) ・SBP(SUSTAINABLE BIOMASS PROGRAM:持続可能なバイオマスプログラム) ・GGL(GREEN GOLD LABEL) |
一つずつ、みていきましょう。
・FSC®(Forest Stewardship Council®:森林管理協議会)
出典:FSC®(Forest Stewardship Council®:森林管理協議会)
「FSC®(Forest Stewardship Council®:森林管理協議会)認証」は、森林における「生物多様性」を守りつつ、森林で生活する人々の権利を守りながら生産された製品であることを認証するものです。
「環境保護等の観点から適切に管理された森林で伐採された木材であること」を公に認める認証であるため、バイオマス燃料に付与する認証として適しています。
現在、もっとも普及している環境保護関連の認証制度の一つです。
・SBP(SUSTAINABLE BIOMASS PROGRAM:持続可能なバイオマスプログラム)
出典:SBP(SUSTAINABLE BIOMASS PROGRAM:持続可能なバイオマスプログラム)
「SBP(SUSTAINABLE BIOMASS PROGRAM:持続可能なバイオマスプログラム)」は、“エネルギー利用のための持続的な木製バイオマスであること”を認証するものです。
要は「エネルギーとして利用する際に、環境保護の観点から問題がないバイオマスか?」を認証するものです。
SBPは、ヨーロッパにあるバイオマス発電所関連の公益事業会社によって設立されました。
先述したFSC®は「木材の管理状況」にフォーカスした認証制度である一方、SBPは「バイオマスを収集した心理の管理~工場での加工~消費者のもとに届くまでのサプライチェーン全体」が評価対象になる点が、大きな特徴です。
「バイオマス認証」と銘打たれているため、バイオマス燃料の製造メーカーやバイオマス発電所の事業者にとっては、わかりやすい認証といえます。
今後、知名度が益々上がっていく「今、大注目のバイオマス認証」です。
・GGL(GREEN GOLD LABEL)
「GGL(GREEN GOLD LABEL)」は、PKS認証(バイオマス燃料として用いられる「パームヤシの殻」に関する環境認証)の一つです。日本の「資源エネルギー庁」の認定を取得している認証プログラムとして知られています。
バイオマス燃料の認証も取得できる点でおすすめの認証の一つです。
「3つの認証制度の違いを詳しく知りたい」という方は、お気軽にご相談ください。
貴社の取り扱っているバイオマス製品に応じて、おすすめの認証制度をアドバイスさせていただきます。
4.バイオマス認証を取得する方法
ここまでの記事を読んで「バイオマス認証を取得したい」と考えた方のなかには「結局のところ、どうすればバイオマス認証を取得できるのか」についても、知りたいと思ったのではないでしょうか。
結論からいえば、方法は二つあります。
一つは「日本にあるバイオマス認証の取得代理店に問い合わせる」という方法です。以下に、3章でご紹介したバイオマス認証のホームページのURL一覧をまとめてみました。
気になる認証機関のホームページをチェックしてみてください。
◇バイオマス認証を取り扱う会社
FSC® (Forest Stewardship Council®: 森林管理協議会) | https://jp.fsc.org/jp-ja/How_to_get_certified |
SBP (SUSTAINABLE BIOMASS PROGRAM: 持続可能なバイオマスプログラム) | https://sbp-cert.org/accreditations-and-certifications/ |
GGL (GREEN GOLD LABEL) | https://greengoldlabel.com/getting-certified/ |
「ホームページが英語でよくわからない」
「バイオマス認証の取得に知見がある人に仲介してもらいたい」
という場合には、YKパートナーズまでお気軽にご相談ください。
代表の草野が取次いたします。
「YK Partners」について |
・YK Partners代表・草野 善信(クサノ ヨシノブ)からのメッセージ ・YK Partnersの事業概要 ・YK Partnersへのお問い合わせ |
5.まとめ
いかがでしたか。
「バイオマス認証とは何か」について、理解が深まりましたでしょうか。
ここで本記事の内容をまとめます。
●バイオマス認証とは?
バイオマス資源に対して『持続可能性』『合法性』『追跡可能性』3つの観点から、品質を調査し、『適格』だと認められた際に、そのバイオマス資源の品質に対して“安心して使えるものである”ことを公に認める認証である
●バイオマス認証を取得するメリット
バイオマス認証を取得するメリット | バイオマス認証を取得した燃料を使用するメリット |
バイオマス燃料製造メーカー | バイオマス発電所 |
●競合他社との差別化ができる (=売上の拡大につながる) バイオマス認証を取得することで、「環境上のリスクがない」と公に認められるため、バイオマス発電所から選ばれやすくなる | ●事業継続を脅かすリスクを排除できる (=持続的に売上を上げられる) バイオマス認証を取得したバイオマス燃料を発電所で利用することで、社会的な信用が得られて「事業継続」につながる |
●3つのおすすめ「バイオマス認証」
・FSC®(Forest Stewardship Council®:森林管理協議会)
・SBP(SUSTAINABLE BIOMASS PROGRAM:持続可能なバイオマスプログラム)
・GGL(GREEN GOLD LABEL)
●バイオマス認証を取得する方法
・日本にあるバイオマス認証の取得代理店に問い合わせる
・YKパートナーズに取次を依頼する
本記事が、バイオマス認証について知りたい方のお力になりましたら幸いです。