バイオマス発電の「環境アセスメント」とは?重要ポイント3つを解説

バイオマスコラム

バイオマス発電所の開発プロジェクトでは、燃料調達、資金調達、設計・施工管理、環境アセスメントなど、行うべきことが盛りだくさんです。

今回はバイオマス発電所の「環境アセスメント」を取り上げます。

「バイオマス発電所における環境アセスメントとは何か?」に始まり、「バイオマス発電所の環境アセスメントで問題になりやすい懸念事項」についても、詳しく解説します。

本記事を読めば、環境アセスメントに対する不安を軽減することができます。

「環境アセスメントの審査が不安だ」「環境アセスメントの審査をクリアしたい」といった方にとって、参考になる記事です。

それでは早速、ご覧ください。

1.バイオマス発電事業の「環境アセスメント」とは?

環境アセスメントとは、「大規模な開発事業を行う際に、『自然破壊』や『公害』につながるようなリスクがないかを審査すること」です。

「環境アセスメント」の定義
大規模な開発事業などを実施する際に、事業者が、あらかじめその事業が環境に与える影響を予測・評価し、その内容について、住民や関係自治体などの意見を聴くとともに専門的立場からその内容を審査することにより、事業の実施において適正な環境配慮がなされるようにするための一連の手続きをいいます。

出典:東京環境局「環境アセスメント

・バイオマス発電の場合

バイオマス発電所では、バイオ燃料を燃やして生成した「高温の蒸気」を、タービンに吹き付けて回転させることで発電します。発電したあとは、高温の蒸気を冷却する必要があります。

冷却に用いた水は、環境に影響のないレベルの水温に冷ましてから、海や河川に流します。そのプロセスにおいて、以下のような項目を調査します。

「環境アセスメント」で審査する代表的な項目①
・海や河川の生態系を乱すような影響はないか
・魚介類の不作につながるなど、漁業事業者にとって不利益につながらないか
・水質を変化させるリスクはないか

これらに加えて、以下のような項目についても、調査します。

「環境アセスメント」で審査する代表的な項目②
・建設工事中の騒音・振動は、甚大なものではないか(近隣の住民への悪影響はないか)
・工事期間が重なる発電所はないか
・NOx(窒素酸化物)・ SOx(二酸化硫黄)・ 煤煙(ばいえん:燃料の不完全燃焼で生じるスス・煙)による
 大気汚染の被害はないか

こうした複数の審査項目に対するチェックを行うことで、「環境リスク」を評価するのが「バイオマス発電事業における環境アセスメント」です。

・環境アセスメントに「低評価」「高評価」という概念はない

環境アセスメントに、高評価や低評価といった概念はありません。
「審査の基準をクリアするか否か」の1点となります。クリアしないと、建築許可が下りないため、発電事業をスタートすることができません。覚えておきましょう。

小規模のバイオマス発電所には「簡易アセスメント」が認められている

先述の通り、バイオマス発電所における環境アセスメントでは、さまざまなポイントをクリアしなければなりません。
国が求めるポイントをすべてクリアする(=フルアセスメント)となると、数年かかってしまうようなこともあります。
そのため、一定基準以下の小規模なバイオマス発電所の開発プロジェクトでは、都道府県の条例に基づいた「簡易アセスメント」が認められています。
簡易アセスメントの場合、フルアセスメントよりも基準が緩やかなため、スピーディに事業をスタートできます。
多くの発電事業者は、簡易アセスメントで審査を受けるべく、一定基準以下の小規模なバイオマス発電所を建設しています。

2.バイオマス発電事業の「環境アセスメント」で問題になりやすい3つの懸念事項

バイオマス発電事業における「環境アセスメント」について、理解が深まったのではないでしょうか。

前項では、代表的な審査項目を取り上げましたが、環境アセスメントがらみで問題になりがちなポイントを、詳しく解説します。

バイオマス発電事業の「環境アセスメント」で押さえたい3つの重要ポイント
・「冷却水の排出」に関する対応
・「大気汚染」を心配する周辺住民の方々への説明
・「騒音・振動」を心配する周辺住民の方々への説明

一つずつ、見ていきましょう。

2-1.「冷却水の排出」に関する対応

前章でお伝えした通り、バイオマス発電所では高温の蒸気を水で冷却したあと、その冷却水を海や河川に流します。

このとき、国の基準を満たした適正な方法で排水をしたとしても、漁業組合などから反発を受けることがあります。魚介類の漁獲量に影響がないかについて、心配しているからです。

そういった場合「水冷」ではなく、冷たい空気で冷却する「空冷」が用いられることがありますが、冷却効果が落ちてしまいます。また、空冷装置は高額なため、発電所経営を圧迫します。空冷による冷却措置は、採算性が落ちる選択肢なのです。

しかし、漁業組合の反発が強い場合には、やむを得ず、空冷を選択する場合もあります。

発電事業は、周囲の方々の理解を得ながら行っていく必要があるため、コンセンサスを取りながら、柔軟に対応することが大切です。

2-2.「大気汚染」を心配する周辺住民の方々への説明

発電所から排出される排気のほとんどは水(水蒸気)です。加えて、NOx(窒素酸化物)・ SOx(二酸化硫黄)などの排出量も、石炭を用いる火力発電所よりも大幅に少ないです。

また、バイオマス発電は「カーボンニュートラル」であるため、二酸化炭素の排出量も少ないものです。総合的にみて、火力発電所よりも環境への影響が少ない発電方法だといえます。

それにもかかわらず、地元に住む住民の方々から「大気汚染の危険性があるのではないか」といった強い指摘を受けることがあります。

そういった場合には、大気汚染の心配はほとんどないことを説明します。周辺住民の方々のなかにある先入観を取り除き、正しいデータに基づいて説明すれば、ご納得いただけるかもしれません。

一つの質問に対して、丁寧に説明を行い、ステップバイステップでコンセンサスを取ることが大切です。

2-3.「騒音・振動」を心配する周辺住民の方々への説明

バイオマス発電所の建設中は、トラックや建設機械の出入り、運転中の騒音振動、地盤固めのためのパイルの打ち込みなど大きな音と振動が発生します。

また、操業後も、ボイラーや発電装置のタービンの音や振動も発生します。

もちろん「防振・防音設計」になっていますが、気になる周辺住民の方々もいらっしゃるものです。

この点についても、周辺住民の方々にご納得いただけるよう、疑問点・不明点の解消に努めることが大切です。

3.まとめ

いかがでしたか。

バイオマス発電事業における「環境アセスメント」について、理解が深まったのではないでしょうか。ここで、本記事の内容をまとめます。

●バイオマス発電事業の「環境アセスメント」とは?

環境アセスメントとは、大規模な開発事業を行う際に、自然破壊や公害につながるようなリスクがないかを審査すること

「環境アセスメント」で審査すること
・海や河川の生態系を乱すような影響はないか
・魚介類の不作につながるなど、漁業事業者にとって不利益につながないか
・水質を変化させるリスクはないか
・建設工事中の騒音・振動は、甚大なものではないか(近隣の住民への悪影響はないか)
・工事期間が重なる発電所はないか
・NOx(窒素酸化物)・ SOx(二酸化硫黄)・ 煤煙(ばいえん:燃料の不完全燃焼で生じるスス・煙)による
 大気汚染の被害はないか

●バイオマス発電事業の「環境アセスメント」で問題になりやすい3つの懸念事項

バイオマス発電事業の「環境アセスメント」で問題になりやすい3懸念事項
・「冷却水の排出」に関する対応
・「大気汚染」を心配する周辺住民の方々への説明
・「騒音・振動」を心配する周辺住民の方々への説明

本記事が、バイオマス発電所の環境アセスメントについて知りたい方の参考になりましたら幸いです。

バイオマス発電所の開発は「YK Partners」までご相談ください

本記事をご覧になった方のなかには、バイオマス発電所の開発を行いたい方や、バイオマス発電所の開発を予定している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

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代表・草野は、バイオマス発電所のコンサルタントとして、これまでさまざまな開発事業に携わってきました。2017年からは、株式会社レノバ(東証プライム市場に上場している環境・エネルギー関連企業)で、エグゼクティブ・アドバイザーも務めております。

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