バイオマス発電では「燃料調達がむずかしい」という話を耳にすることがあります。
しかし、その理由について、正確に理解している人は少なくありません。
結論からいえば、その理由は「安価なバイオマス燃料(廃材)を安定的に供給できる事業者を見つけ出すのがむずかしい」からです。
本記事では、これらの点について、詳しく解説するとともに「バイオマス燃料の安定調達を実現するために押さえたいポイント」についても解説します。
安定的に「燃料調達」するために押さえたい2つのポイント |
・本業が「安定操業」している供給者を選ぶ ・「20~30万トン程度の廃材」を供給する供給者を選ぶ |
これらのポイントを押さえれば、燃料不足に悩まされることがなくなります。
「燃料調達の不安を解消したい」という方にとって、参考になる記事です。
それでは早速、ご覧ください。
目次
1.バイオマス発電で「燃料調達」が難しい理由
冒頭でご説明した通り、バイオマス発電で「燃料調達」がむずかしいのは「安価なバイオマス燃料(廃材)を安定的に供給できる事業者を見つけ出すのがむずかしい」からです。
やや複雑な話なので、一つずつ、順を追って説明しましょう。
第一に、バイオマス燃料として用いられる「木質ペレット」の原料は、間伐材、未利用材、枝、おが屑などの「廃材」です。家具や紙の原料として使えない「廃材」をバイオマス燃料として活用しているのです。
廃材であるがゆえに「非常に安価」であるのが、最大のポイントです。
家具や紙に使えるスギやヒノキを丸ごと一本、バイオマス燃料として活用すると、燃料の原価が高騰してしまい、採算が合いません。発電所として、経営が成り立たなくなってしまうのです。
まずは「バイオマス発電所では、非常に安価な廃材を燃料として用いている」という収益構造について、理解しておきましょう。
さて、一つのバイオマス発電所で必要なバイオマス燃料の量は、少なく見積もっても「30~50万トン/年間」程度となります。それだけ大量の廃材を供給できるのは、製材工場や家具工場に限られます。
例えば、カナダのブリティッシュコロンビア州などには、製材工場が集まっているため、バイオマス燃料に用いる廃材を確保できます。また、アメリカの南東部も、製材工場地帯があるため、バイオマス燃料に用いる廃材が手に入りやすいです。
東南アジア諸国の場合、1ヵ所の製材工場あたり、せいぜい10~20万トン程度の供給力です。大規模な製材工場地帯がないため、複数の工場から、供給を受ける必要があります。
このように、カナダ・アメリカ・東南アジアあたりで、廃材の確保が可能ですが、年間数十万トンもの廃材を、安定的かつ安価に確保するのは、なかなかむずかしいことです。家具工場の経営が傾くなどして、廃材が手に入らなくなるなどのリスクがあるからです。
「じゃあ、日本で廃材を手に入れればいいだろう」と考えるかもしれませんが、日本国内で、数十万トンもの廃材を確保することは、物理的に不可能です。結局のところ、海外から、バイオマス燃料用の廃材を大量に輸入しなければ、まとまった量の廃材を確保することができないのです。
以上の通り「安価な廃材を安定的に供給できる事業者を見つけ出すことがむずかしい」ことが、バイオマス燃料の安定調達がむずかしい最大の理由となります。
この点を踏まえたうえで、次章では「バイオマス燃料を安定調達するためのポイント」を解説します。
2.安定的に「燃料調達」するために押さえたい2つのポイント
続きまして、「燃料を安定調達するために押さえたいポイント」を解説します。
ポイントは全部で2つあります。
安定的に「燃料調達」するために押さえたい2つのポイント |
・本業が「安定操業」している供給者を選ぶ ・「20~30万トン程度のバイオマス燃料」を供給する供給者を選ぶ |
一つずつ、みていきましょう。
2-1.本業が「安定操業」している供給者を選ぶ
1つ目のポイントが、本業が「安定操業」している供給者を選ぶという点です。「安定的に、長期間にわたって、廃材を供給している実績があるか否か」を確認することが大切です。
これは、燃料調達でぜひとも押さえたい重要ポイントです。この点について確認が取れれば「家具工場の廃業で、廃材を確保できなくなった」なんて事態に見舞われないで済むからです。
供給元に対するチェックポイントを、以下の通りまとめてみました。
ぜひ、参考にしてみてください。
供給元を選定する際の4つのチェックポイント |
・毎年の伐採計画はしっかりと立てられているか ・伐採計画通りに、伐採してきた実績があるか ・毎年、どれだけの伐採量があるのか ・本業(製材、家具、パルプ材など)における材木の供給は安定しているか(=経営が安定しているか) |
2-2.「20~30万トン程度の廃材」を供給する供給者を選ぶ
バイオマス発電所で安定的な燃料調達を実現するためには、「20~30万トン程度のバイオマス燃料」を供給する供給者を選ぶ」のも重要です。
数百万トンレベルの供給力がある廃材工場等の場合、材木の集荷半径が200~300kmにも及んでいる可能性があり、材木の輸送費が余分に発生してしまうからです。
廃材といえども、バイオマス発電所で活用できるくらい安価ではなくなってしまうのです。
バイオマス発電所で用いる廃材の場合、輸送コストを考えると、集荷範囲は「半径150km以内」が限界だといわれています。
廃材の供給元を選ぶ際には「20~30万トン/年間レベル」の供給を行う「中小規模の製材工場」と取引するようにしましょう。
以上2点が、バイオマス燃料の安定調達を実現するために押さえたいことです。
安定的に「燃料調達」するために押さえたい2つのポイント |
・本業が「安定操業」している供給者を選ぶ ・「20~30万トン程度の廃材」を供給する供給者を選ぶ |
これらのポイントを押さえれば、燃料を安定調達できるようになります。
ぜひ、参考にしてみてください。
経営を安定させるために「輸送費の削減」にも取り組もう |
バイオマス発電所の経営を安定させるためには、「燃料の安定調達」が欠かせませんが、経営を安定させるためには、ほかにも取り組みたいことがあります。 それは「バイオマス燃料の輸送コストの削減」です。 国内だけでバイオマス燃料を安定調達することはむずかしく、海外からバイオマス燃料を輸入するのが大前提になりますが、大きな割合を占める「輸送コスト」を抑えられれば、バイオマス燃料の原価を抑えられるからです。 「輸送費の削減」として有効なのが「バイオマス燃料のトレファクション化(=半炭化)」です。トレファクション化とは、バイオマス燃料を燃やすことで、エネルギー密度を上げることです。容積が減るため、海上輸送費を削減することができます。 トレファクション化(=半炭化)においては、以下のような取り組みが重要になっていくだろうと、私は考えています。 ・(木質ペレットではなく)木質チップを炭化して、輸送する ・粗く砕いたバイオマス燃料をトレファクション化(=半炭化)して、ブリケット(=)に加工して輸送する これらの取り組みにより、輸送コストをを削減できるようになります。 |
3.まとめ
いかがでしたか。「バイオマス発電の燃料調達」に関する悩みや疑問は解消されましたでしょうか。
ここで本記事の内容を整理します。
●バイオマス発電の燃料調達が難しい理由
・安価なバイオマス燃料(廃材)を安定的に供給できる事業者が少ないから
●安定的に「燃料調達」するために押さえたい2つのポイント
・本業が「安定操業」している供給者を選ぶ
・「20~30万トン程度の廃材」を供給する供給者を選ぶ
●経営を安定させるために「輸送費の削減」にも取り組もう
本記事が、「バイオマス発電の燃料調達」について知りたい方のお力になれましたら幸いです。
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代表・草野は、バイオマス発電所のコンサルタントとして、これまでさまざまな開発事業に携わってきました。2017年からは、株式会社レノバ(東証プライム市場に上場している環境・エネルギー関連企業)で、エグゼクティブ・アドバイザーも務めております。
とりわけ「バイオマス燃料(木質ペレット)の安定調達」に関するサポートが一番の「得意分野」です。
これまで、数多くのバイオマス発電所さまに向けて、ニーズに合致した燃料供給事業者をご紹介してまいりました。
燃料調達に関してお困りでしたら、気軽にご相談ください。
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