【専門家解説】バイオマス発電所の収益性は?初期費用回収は最短8年

バイオマスコラム

「バイオマス発電に興味があるけれど、収益性はどうなんだろう?」

あなたは、バイオマス発電所の経営に興味があるのではないでしょうか。

しかし、インターネットを検索しても「収益性に関する情報」が見当たらないため、事業に着手するか、迷っているのかもしれませんね。

結論からいえば、バイオマス発電所は以下の3点を担保できていれば「収益性の良い事業」だといえます。

バイオマス発電所の初期投資は「20億円程度」が標準的ですが「売上高」と「収益性の向上」により「最短8年程度」で回収が可能です。

バイオマス発電所の収益性を高めるために押さえたい3つのポイント
・小型のバイオマス発電所(2000kW以下など)を経営する
・「バイオ燃料」を安定的に供給してくれる「燃料サプライヤー」を確保する
・信頼性のある高品質なバイオマス発電設備を導入して「発電効率」を高める

裏を返せば、上記のポイントを押さえない場合、収益性を維持・向上させることはむずかしいですから、注意が必要です。

「バイオマス発電所を経営してみたいが、収益性が気になる」

「バイオマス発電所の経営で、失敗したくない」

といった思いがある方は、本記事を参考にしてみてください。

それでは早速、みていきましょう。

1.バイオマス発電所は収益性がよいのか?


冒頭でご説明した通り、バイオマス発電所は、一定の条件を満たせば収益性が高い事業だといえます。

なぜならば、バイオマス発電所にかかわる初期投資は「20億円程度」ですが、一定の売上高を上げられるよう、3つの条件を満たせば、8年程度で初期費用を回収できる可能性があるからです。

まずは「初期費用がどのくらいかかるのか」に加えて「毎年の売上」や「毎年の経費」など、リアルな数字をチェックしてみましょう。
ここでは、標準的な規模のバイオマス発電所をもとに「標準的な収益モデル(概算)」をご紹介したいと思います。

●初期投資

メーカーや機種によって異なりますが、導入件数の多い小規模なバイオマス発電設備(2000kW程度)の場合、「20億円」程度となります。

バイオマス発電所を始める場合、20億円程度が、標準ラインになると覚えておきましょう。

なお、固定価格で20年、電力を買い取ってもらえる「FIT(固定価格買取制度)」に認定されるためには「系統接続費用」が発生します。

これは、送電線に電線をつないで、発電した電気を送る際にかかる費用です。

各電力会社との交渉になります。

●売上高(1年あたり)

年間の売上は「電力の買取価格」によって大きく異なります。

例えば、2000kW程度の小型な設備容量の場合。

「40円/kWh」という高額な買取価格になっています。
その場合の売上高(1年あたり)は「6億4000万円」となります。


2000kW(発電量) × 8000時間(年間の発電時間) = 1600万kW(=年間の発電量)

1600万kW × 40円/kWh = 6億4000万円(=年間の売上高)

ちなみに、買取価格が安く「32円/kWh」の場合。

売上高(1年あたり)は「5億1200万円」となります。

バイオマス発電の場合「電力の買取価格」が、売上を大きく左右するということを、知っておきましょう。

●経費(1年あたり)

バイオマス発電所で発生する「経費」は、「2億円/年」ほどです。

具体的な「経費項目」は、以下の通りです。

バイオマス発電所で発生する経費
1.バイオマス燃料費
2.発電所の運営にかかわる人件費(所長、運転員、事務スタッフなど)
3.光熱費(工業用水など)
4.系統接続費
5.清掃費(バイオマス燃料は木くずが発生しやすいです)
6.灰処理費
7.発電所の定期メンテナンス費

上記のうち、80%程度を占めるのが「1.バイオマス燃料費」です。

標準的なバイオマス発電所において「年間8000トンの燃料」が必要な場合。

燃料費が「2万円/1t」ならば、それだけで「1億6000万円」もの経費が発生します。

全経費の20%程度にあたる「人件費」や「光熱費」なども加えると、全部で「2億円/年」ほどの経費が発生する計算となります。

●初期投資の回収に要する期間

先述の通り、経費は「2億円/年」です。

加えて、設備費に関する借入期間が、15年で金利込みの場合「1億6600万円/年」の返済を行う必要があります。

つまり、経費と設備費の返済額を足すと、年間の経費は「3億6600万円」となります。

そのため、初期費用の回収は「8年」となります。


「6億4000万円(売上高)」-「3億6600万円(経費)」= 2億7400万円

20億円(初期費用)÷ 2億7400万円 = 7.29年 → 初期費用は「最短8年程度」で回収可能

初期費用回収後は、毎年、2億7400万円(概算)ほどの利益が得られると考えれば、収益性がいいといえるのではないでしょうか。

ちなみに、太陽光発電の場合、初期費用の回収は8年~12年程度と同等レベルですが、FITによる買取価格は「9.5円~16円程度」と非常に廉価です。

バイオマス発電は、再生可能エネルギーのなかでメジャーな太陽光発電よりも、収益性がよいという見方ができます。

2.バイオマス発電事業の収益性を高めるために押さえたい3つのポイント

先述の通り、バイオマス発電所にかけた初期費用はおおむね8年ほどで回収できることから、収益性のよい事業だといえます。

しかし、冒頭でご説明した通り、安定した売上高を上げるためには「3つの条件」を満たすことが重要です。

バイオマス発電所の収益性を高めるために押さえたい3つのポイント
・小型のバイオマス発電所(2000kW以下など)を経営する
・「バイオ燃料」を安定的に供給してくれる「燃料サプライヤー」を確保する
・信頼性のある高品質なバイオマス発電設備を導入して「発電効率」を高める

以上に挙げた3つの条件を満たせない場合、収益性が落ちてしまい、不採算事業になる可能性もありますから、注意が必要です。

どんなポイントを押さえるべきなのか。一つずつ、みていきましょう。

●小型のバイオマス発電所(2000kW以下など)を経営する

バイオマス発電所において、もっとも重要なポイントの一つが「小型のバイオマス発電所(2000kW以下など)を経営する」という点です。
なぜならば、経済産業省の「2022年度以降の買取価格」にある通り、2000kW未満の小型発電設備であれば、「40円/kWh」という高い買取価格が、20年間保証されるからです。

経済産業省「2022年度以降の買取価格

なお、大型のバイオマス発電所は、FIT適用が「入札」になっており、高額の固定買取価格が期待できません。

収益性を見通すのがむずかしくなっているなかで、確実に高額な買取価格を期待できるのは、小型のバイオマス発電所に限ります。

大型と小型のバイオマス発電所とで、FITの買取価格に大きな差をつけていることから、政府は小型のバイオマス発電所の立ち上げを増やしていきたいものと、考えられます。

●「バイオ燃料」を安定的に供給してくれる「燃料サプライヤー」を確保する

バイオマス発電所の場合、バイオマス燃料が調達できないことには、何も始まりません。

1にも2にも「バイオマス燃料の調達」が、バイオマス発電所においては重要なことです。

バイオマス発電所を経営する際には、「安価なバイオマス燃料を安定的に調達すること」に力を注ぐようにしましょう。

例えば、林業が盛んな地域の場合、燃料調達に有利だろうと思われるかもしれませんが、意外と一筋縄ではいきません。

ほかの企業や製紙業などの「競合」との奪い合いや競争に巻き込まれるため、リーズナブル価格で安定的かつ長期的に仕入れることがむずかしくなるからです。

例えば、製材工場と信頼関係を構築して、優先的に廃材を回してもらったり、森林の整備業者と契約を結んで、一定量の間伐材をもらうだとか、何かしらの工夫を行うことが大切です。

林野庁・エネルギー庁は「耕作放棄地に創生樹種を植えてバイオマス燃料にする」といった構想を推進しています。

いずれにせよ、バイオマス発電所を経営する際には、燃料の安定調達が生命線となる点について、肝に銘じておきましょう。そうすると、売上を安定的に確保できます。

●信頼性のある高品質なバイオマス発電設備を導入して「発電効率」を高める

バイオマス発電所を経営する際には、バイオマス発電所の「発電効率」も気にされるとよいでしょう。

一度、導入したら、数十年は使うものであり、壊れやすい発電設備はメンテナンス費が余計にかかりますし、中長期的にみると、発電量に大きな差が生まれるからです。

国内外に、バイオマス発電設備のメーカーはいくつもあります。

実績があり、高品質なバイオマス発電設備やメーカーが知りたい方は、YKパートナーズまで、お気軽にお問い合わせください。

3.まとめ

いかがでしたか。

「バイオマス発電所の収益性」に関する疑問が解消されましたでしょうか。

ここで、本記事の内容をまとめます。

●バイオマス発電所は収益性がよいのか?

バイオマス発電所は、一定の条件を満たせば収益性が高い事業だといえる。

なぜならば、バイオマス発電所にかかわる初期投資は「20億円程度」ですが、一定の売上高を上げられるよう、3つの条件を満たせば、8年程度で初期費用を回収できる可能性があるから

●バイオマス発電事業の収益性を高めるために押さえたい3つのポイント

・小型のバイオマス発電所(2000kW以下など)を経営する

・「バイオ燃料」を安定的に供給してくれる「燃料サプライヤー」を確保する

・信頼性のある高品質なバイオマス発電設備を導入して「発電効率」を高める

本記事が、バイオマス発電事業の収益性について知りたい方のお力になりましたら幸いです。

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代表・草野は、バイオマス発電所のコンサルタントとして、これまでさまざまな開発事業に携わってきました。2017年からは、株式会社レノバ(東証プライム市場に上場している環境・エネルギー関連企業)で、エグゼクティブ・アドバイザーも務めております。

とりわけ「バイオマス燃料(木質ペレット)の安定調達」に関するサポートが一番の「得意分野」です。

これまで、数多くのバイオマス発電所さまに向けて、ニーズに合致した燃料供給事業者をご紹介してまいりました。

燃料調達に関してお困りでしたら、気軽にご相談ください。

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