【専門家が解説】「農業残渣バイオマス」に秘められた可能性に政府も注目!

バイオマスコラム

私は、2022年12月に、タイのバンコクで開催された再生可能エネルギーに関するカンファレンス「Recycled Energy Asia」に登壇させていただきました。

そのときお話ししたテーマは「Market potential for agricultural residue for biomass」。日本語に訳すると「農業残渣(ざんさ)バイオマスの市場可能性」です。

本稿では、この内容に加筆して、農業残渣の可能性についてお伝えしたいと思います。

バイオマス燃料の調達に関するヒントが欲しい方にとって、参考になる内容かもしれません。

1.期待の燃料「農業残渣バイオマス」とは一体何なのか?

カンファレンスでは、バイオマス燃料に関してお話ししました。

なかでも、もっとも強調したかったのが「農業残渣バイオマスは、SDGs時代にこそ求められる『期待のバイオマス燃料』である」ということです。

この主張について語る前に、まずは「農業残渣バイオマス」が何なのかについて、ご説明します。

残渣は「余りもの」や「残りかす」といった意味のある言葉です。

そのため、農業残渣バイオマスとは、その名の通り、作物の「食べれない部分」によるバイオマス燃料のことです。

つまり、「使い道のない残渣物を、バイオマス発電所の燃料として有効活用しよう」というアイデアに根付いたバイオマス燃料なのです。

農業残渣バイオマスの原料になる植物は、サトウキビ、トウモロコシのワラ、ベンクアン、ヤマイモの豆のほか、アーモンド・ピスタチオ・ピーナッツ・ココナッツ・クルミなどの殻(から)、もみ殻、ネピアグラスなどです。

農業残渣バイオマスをバイオマス発電所で利用することは、SDGs時代に合ったアイデアだといえます。使い道のない資源を有効活用するからです。

まずはこの点について、ご理解いただければ幸いです。

2.農業残渣バイオマスの魅力は「食料と競合しないこと」

既にお伝えの通り、農業残渣バイオマスは「捨てる予定の残渣物を、バイオマス燃料として有効活用しよう」というアイデアですから、SDGs時代に歓迎されるものです。

とくに強調しておきたいのは「食料と競合しない」という特徴です。

ひと昔前には、トウモロコシによるバイオエタノールの製造などが持て囃されましたが、普及が阻まれた過去があります。なぜならば、「食料になるものを燃料にするなんてもったいない」といった意見が挙がったからです。

食糧難で、その日食べるものにさえ困っている人々がいるわけですから、批判されるのも当然のことだと思います。

一方で、農業残渣バイオマスは、人間の食料にない部分を燃料にするアイデアですから、食料と競合することは一切ありません。

「ゴミとして捨てる予定の部分」のみを活用する点で、地球にやさしい燃料だといえますね。

3.「耕作放棄地」に「非食用作物」を植えるのも手!

しかし、「食料と競合しない」という点を踏まえつつ、農業残渣バイオマスの普及を実現するのは、なかなか難しいのでは?と感じる方もいるかもしれません。

しかし、実はよい方法が一つあります。

それは、「耕作放棄地で、バイオマス燃料として使える『非食用作物』を栽培する」というアイデアです。

耕作放棄地は、畑や田んぼとして活用される予定がない「不毛地帯」ですから、こういった手つかずの場所に「食べられないが、バイオマス燃料としては優秀」となるような作物を植えればよいのです。

日本には、39.6万haもの耕作放棄地があります。これは埼玉県の面積に匹敵する広さです。

何にも活用されていないこうした土地を、非食用のバイオマスの栽培に充当すれば、日本は効率よく、二酸化炭素の排出削減を進められるでしょう。

4.「農業残渣バイオマス」は経済産業省も熱い視線を送っている

農業残渣バイオマスを知るうえで、もう一つ知っておきたいのは「バイオマス発電を巡る現状」です。

日本政府は、バイオマス発電所に対して、太陽光発電所などよりも高い買取価格(40円/kWh)を提示しています。

バイオマス発電の普及に注力していることがうかがいしれます。

経済産業省「2022年以降の買取価格

とりわけ、熱視線を送られているのが、農業残渣バイオマスです。

今まさに、経済産業省が「農業残渣バイオマス」は「バイオマス燃料として適格か?否か?」を、審査・評価していることがわかっています。

農業残渣バイオマスを「バイオマス燃料」として、積極的に利活用できる環境を整えるために、有用性を調査しているのです。

2023年3月までには、日本国内のFIT制度において、どの農業残渣が、バイオマス燃料として認可されるのかが判明する見込みです。

これは、農業残渣バイオマスの命運を分ける“大きな動き”だと考えられます。

もしも、農業残渣バイオマスが「バイオマス燃料として適格である」となれば、バイオマス発電所のオーナーの間にも、利活用が拡大していく可能性があります。

そもそも、バイオマス燃料は、非常に大きな可能性に満ちた燃料です。なぜならば、火力発電所で用いられる石炭は、そのままバイオマス燃料に置き換えられるからです。

日本はまだまだ火力発電の割合が大きいです。ですから、木質ペレットと同様に、農業残渣バイオマスの利活用も広がっていったら、二酸化炭素の排出削減に大きく貢献するでしょう。

今後の動向に、注目していきたいと思います。

5.農業残渣バイオマスの普及には水分を飛ばす一工程にお金をかけないことが重要

今後に期待されている農業残渣バイオマスですが、1点、課題があります。

それは、残渣バイオマスを燃料として加工する工程が必要になる点です。

具体的には、水分を飛ばして、重量あたりの熱量を高めることです。

このプロセスに、時間やお金がかかり過ぎないよう工夫する必要があるでしょう。

そうしなければ「木質ペレットよりも安価に調達できる」という農業残渣バイオマスの価値が半減してしまうからです。

6.おわりに

最後に、本稿の主張をお伝えすることで、本稿の結びに代えさせていただきたいと思います。

農業残渣バイオマスは「使い道のない残渣物を、バイオマス発電所で有効活用しよう」

というアイデアに根付いたバイオマス燃料

・農業残渣バイオマスの魅力は「食糧と競合しないこと」

・「耕作放棄地」に「非食用作物」を植えるのも手

・経済産業省が「農業残渣バイオマス」は「バイオマス燃料として適格か?否か?」を、審査・評価している

農業残渣バイオマスの普及には水分を飛ばす一工程にお金をかけないことが重要

農業残渣バイオマスほか、これからの時代のバイオマス燃料に興味がございましたら、お気軽にお問い合わせください。