バイオガス発電とは?仕組み・メリット・バイオマス発電との違いを解説

バイオマスコラム
Biogas Plant

「『バイオガス発電』って一体どんなものなんだろう?」
「バイオマス発電との違いが知りたい」

あなたは「バイオガス発電」に興味を持っているのではないでしょうか。

しかし、仕組みやメリット、バイオマス発電との違いなどについて、わかりやすく解説した記事がないため「バイオガス発電事業に踏み出すべきか」迷っているのかもしれませんね。

先に結論をいえば「バイオガス発電」と「バイオマス発電」には、次のような違いがあります。

また、バイオガス発電には、次のような「メリット&注意点」があります。

本記事では、「バイオマス発電所の建設コンサルティング/バイオマス燃料の調達サポート」を専門で行うYK partnersの代表・草野が、どの記事よりもわかりやすく「バイオガス発電」について解説します。

あなたに「バイオガス発電事業に参入すべきか」についてのヒントをご提供できましたら嬉しいです。

それでは早速、見ていきましょう。

1.「バイオガス発電」と「バイオマス発電」の違いとは?

冒頭でご説明した通り、「バイオガス発電」と「バイオマス発電」には、次のような違いがあります。

それぞれ見ていきましょう。

●「バイオマス発電」とは?

バイオマス発電は、生物由来の有機資源である「バイオマス(未利用材、廃棄物、木質ペレットなど)」を、燃焼することで、電気を生み出す発電方法です。

「バイオマスの燃焼」によって生じた「高圧の蒸気」によって、タービンを回転させて発電します。

一般的な火力発電では、バイオマスではなく石炭や石油などの化石燃料を燃やします。
そこが大きな違いです。

「火力発電所の燃料が、化石燃料ではなく「バイオマス」である=バイオマス発電」と考えると、非常にイメージしやすいかと思います。

以下にわかりやすいイメージ図がありますので、参考にしてみてください。

出典:関西電力グループ「バイオマス発電とは?仕組みについてわかりやすく説明」

【「そもそもバイオマスとは何か?」について知りたい方は、以下の記事もチェック!】

【解説】バイオマスの種類は3つある!それぞれの特徴・活用法

●「バイオガス発電」とは?

一方、バイオガス発電とは、バイオマス(家畜糞尿、食品廃棄物、木質廃材など)を「発酵槽」で発酵させ、そのプロセスで生じた「可燃性のガス」を燃焼することで、電気を生み出す発電方法です。

「バイオガスの燃焼」によって生じた「高圧の蒸気」によって、タービンを回転させて発電します。

バイオマス発電も、バイオガス発電も「発生した『高圧の蒸気』によって、タービンを回転させて発電する」という点では共通しています。

バイオガス発電については、大商金山牧場さんが解説した「イメージ図」がわかりやすいためご紹介します。理解のために役立ててみてください。

出典:大商金山牧場「バイオガス発電とは

上記の図にある通り、バイオガス発電では、発電以外にも「2つの副産物」が得られます。

・バイオガスの生成過程で発生する「排熱」

・窒素、リン酸、カリが含まれる「消化液」

「排熱」は、加温によって「給湯」などに利用できます。

「消化液」は、農作物のための「有機肥料」として活用できます。

バイオガス発電の過程で生成される消化液(=有機肥料)は、病原菌が含まれません。臭気も少なく、「安全性の高い肥料」として活用できる点で、非常に魅力的なものです。

バイオガス発電所は、酪農関係者が運用するケースが多いです。

以下の記事で、詳しく解説していますので、ご覧ください。

【「そもそもバイオマスとは何か?」について知りたい方は、以下の記事もチェック!】

食品分野の未利用資源を使ったバイオガス発電

2.「バイオガス発電」のメリット6個

「バイオガス発電」のメリットは「排熱や有機肥料など『二次利用』ができる」点だけではありません。

ほかにもポイントが「6個」あります。

一つずつ、みていきましょう。

①地球にやさしい「クリーンエネルギー」である

バイオガス発電は、地球にやさしいクリーンエネルギーです。

なぜならば、バイオマス発電同様、石油や石炭などの化石燃料の代わりに「バイオマス」を用いるため、地球温暖化の原因になる「二酸化炭素の排出量」を抑えられるカーボンニュートラルな発電方法だからです。

SDGs時代を見据えて、「持続可能なエネルギー産業」に取り組みたいならば、バイオガス発電も非常に魅力的だといえるでしょう。

②「電気の安定供給」が可能

バイオマス発電と同じく、バイオガス発電も「電気の安定供給」が可能になりやすいです。

なぜならば、太陽光発電や風力発電などと異なり、天候に左右されず、電気を発電できるからです。

③「ゴミの焼却費用」を低減できる

バイオマス発電同様、バイオガス発電も、捨てる予定の残渣物を有効活用できる発電方法です。

とりわけ、欧米では、酪農家などがバイオガス発電を取り入れているように、家畜によるふん尿などの処理に困っている方こそ、バイオガス発電は魅力的な事業だといえます。

④バイオマス発電よりも「設備投資/保守」にかかる費用が少ない

「プラントの規模」や「燃料の安定調達が可能か」によって、運用コストは変わりますが、一般的には、バイオマス発電所よりも、バイオガス発電の方が、プラントの構造がシンプルです。

そのため「設備投資」や「保守運用」にかかる費用が安く済む傾向があります。

ただし「消化液(液肥)」を持て余している場合、その浄化に費用がかかるため、稼働コストが高くついてしまう場合もあります。その点は注意したいところです。

⑤「バイオマス発電」と同様、FIT買取価格が高い

バイオガス発電は、高額な「FIT買取価格」が保証されています。

「35円/kWh(2000kw未満の場合)」です。

事業化を検討するうえで、非常に魅力的なポイントだといえるでしょう。

出典:経済産業省「2022年度以降の買取価格

⑥補助金を活用できる可能性がある

バイオガス発電は、バイオマス発電同様に、補助金を活用できる可能性があります。

農林水産省では、バイオマス発電やバイオガス発電を行う事業者向けに交付金の給付を行っています。交付金の種類は「みどりの食料システム戦略推進交付金」です。

以下に「みどりの食料システム戦略推進交付金を活用した地域別の取組件数」や「交付金の活用事例」に関する参考資料のリンクを掲載しました。

チェックしてみてください。

【バイオガス発電の導入で使える「交付金」は以下の記事をチェック!】

・農林水産省:「みどりの食料システム戦略の実現に向けた各地域の取組状況
・農林水産省:「西興部村(北海道紋別郡西興部村)構成員:西興部村、利用農家(13戸)、JAオホーツクはまなす等
・農林水産省:「株式会社B&M(北海道帯広市)協力機関:JA帯広かわにし、帯広市農業技術センター等

3.「バイオガス発電」の注意点2個

魅力がたくさんある「バイオガス発電」ですが、気をつけたい注意点もあります。

ポイントは以下の2つです。

①導入実績が少ない

北欧やドイツなどの環境先進国では、バイオガス発電は普及しています。

しかし、日本では、バイオガス発電はおろかバイオマス発電も、太陽光発電などと比べると導入実績が少ないのが現状です。

そのため、正しい運用知識が普及していないのが現状です。

バイオガス発電の運用には、専門家によるサポートが、必要不可欠といえるでしょう。

②「バイオマスの収集&運搬」がハードルになりやすい

バイオマス発電と同様「燃料の確保」は課題になりやすいです。

バイオマス燃料を確保し、安定的に収益を上げる方法については、以下の記事で解説しています。併せて、ご確認ください。

【バイオガス発電で「燃料調達」と「安定した収益を得る方法」は以下の記事をチェック!】

バイオマス発電の燃料調達が難しい理由と安定調達する2つの方法を解説
【専門家解説】バイオマス発電所の収益性は?初期費用回収は最短8年

4.まとめ

「バイオガス発電」について、理解が深まりましたでしょうか。

ここで本記事の内容を整理します。

●「バイオガス発電」と「バイオマス発電」の違いとは?

●「バイオガス発電」のメリット・注意点

本記事が、バイオガス発電について知りたい方のお力になりましたら幸いです。