【2024年最新】バイオマス業界の課題、エネルギー政策など…ざっくばらんに何でも語ります!(前編)

バイオマスコラム
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今回のコラムでは、皆さんからよく寄せられる質問に対して、ざっくばらんに答えていきます。

【本コラムで取り上げるテーマ】
1.日本のバイオマス発電業界の課題は?
2.バイオマス発電は自然破壊につながる?
3.バイオマスの需要は増えるのか?減るのか?
4.バイオマス発電最大のベネフィットとは?
5.今後、日本が採るべき「エネルギー政策」は?

一つでも気になるトピックスがありましたら、是非ご覧ください。

それでは早速、見ていきましょう。

1.日本のバイオマス発電業界の課題は?

多くのバイオマス発電事業者が直面している大きな課題は「バイオマス燃料の価格高騰」です。

今現在は、多少なりとも収まっていますが、2021年に端を発した「ウッドショック」の影響が今もなお残っており、バイオマス燃料の高騰が続いています。

バイオマス燃料の価格高騰には、

・コロナの感染拡大による「リモートワーク」で新築住宅の建設ラッシュ
・気候変動による生育不良による供給量不足
・ロシア・ウクライナ情勢による原油価格の高騰
・円安ドル高

などが複合的に絡み合っているものと考えられています。

そのため、燃料調達に苦戦する中で「経営難」に陥っているバイオマス発電事業者の方もいらっしゃいます。

そうしたなかで、バイオマス発電業界では、

「燃料調達がきつい。バイオマス発電業界の健全な成長のためには、もっと手厚い補助金が必要だ!」

という声が高まっています。

しかし、政府は、

「もうバイオマスには『FIT制度』を通じて十分な補助をした」

「(バイオマスを混焼するためのプラント改造を含む)設備投資は不要である」

という厳しいスタンスを貫いています。

FIT制度による「買取価格の上昇」は見込めないのが現状なのです。

経済産業省「2022年度以降買取価格

そのため、バイオマス発電業界においては、安価に仕入れられる「バイオマス燃料の調達先」を探すことが喫緊の課題になっています。

このコラムをご覧のあなたも、もしかしたら、燃料調達に苦戦しているのではないでしょうか。

そうした方に向けて、以下のコラムでは

「安価な価格でバイオマス燃料を安定調達する方法」

について解説しています。

バイオマス発電の燃料調達が難しい理由と安定調達する2つの方法を解説

少しでも気になる方は、チェックしてみてください。

なお、ここで強調しておきたいのは、バイオマス燃料の「安定調達」の問題さえクリアできれば、初期費用の回収は「最短8年程度」と、非常にスピーディな点です。

さらに、FIT制度による買取保証期間(20年)については、ほかの再生可能エネルギーと比べても群を抜いて高額な「40円/kWh」という買取価格が設定されています。

そのため、期待される売上高(1年あたり)は「6億4000万円」となります(2000kW程度の小型な設備容量の場合)。

「これから、バイオマス発電事業をスタートしたいが、収益性などがよくわからない。イマイチ情報収集が進んでいない」という方は、以下のコラムが参考になるかもしれません。

【専門家解説】バイオマス発電所の収益性は?初期費用回収は最短8年

2.バイオマス発電は自然破壊につながる?

たびたび「バイオマスは資源量が有限なので、自然破壊につながるのでは?」というご質問をいただきます。

僕自身は、明確にその可能性を否定しています。

なぜならば、適切な管理のもと、計画的に「植樹・伐採」のサイクルを維持していけば、森林は枯渇することなく、増やすことすら可能だからです。

その点が、石炭を始めとする化石燃料(有限資源)との大きな違いです。

とりわけ、日本の国土の森林率は「約67%」と、先進国のなかではフィンランドに次いで「第2位の豊かさ」を誇っていますから、生かさない手はありません。

その際、積極的に植林したいのが、成長スピードの早い「早生樹」です。

我が国には、管理されていない「手つかずの森林」が多いため、そうした場所に、「早生樹」を植えることで、効率よくバイオマス燃料を生産でき、必要な燃料を確保できるようになります。

「早生樹」の導入ベネフィットについては、以下の記事の「3.耕作放棄地への早生樹エネルギー植林を行う」で解説しています。

【専門家コラム】脱炭素化のカギは「バイオマス国産化計画」である!(後編)

3.バイオマスの需要は増えるのか?減るのか?

バイオマスの需要は今後「爆増する」と、僕は考えています。

なぜならば、あらゆる業界で「2030年までに46%の温室効果ガスの削減」を求められているなかで「バイオマスは石炭の代替資源」になれる唯一のものだからです。

バイオマスの需要の増加が予想される主な業界
・火力発電所(「石炭燃料」は「バイオマス燃料」に置換できる)
・製鉄業界(製鉄に必要な「コークス」は「バイオマス」に置換できる)
・セメント業界(セメント燃焼時の「石炭」は「バイオマス」に置換できる)
・ケミカル業界(化学製品の原料の「石炭」は「バイオマス」に置換できる)

だから「バイオマス燃料の生産事業者」になるのは素晴らしいアイデアだと思っています。

この点については、以下の記事で詳しく取り上げています。

【専門家コラム】「バイオマス燃料」の需要は“うなぎ上りに上昇”の可能性あり
【専門家コラム】まだある!バイオマス燃料の需要が“右肩上がり”になる理由
【専門家コラム】セメント業界・ケミカル業界で「バイオマス」の需要が高まる理由

4.バイオマス発電最大のベネフィットとは?

再生可能エネルギーでありながら、我が国に「安定的な電力供給」を叶えてくれるのが、バイオマス発電における最大のベネフィットだと思います。

例えば、太陽光で発電した電気は、とても高額な蓄電池を組み合わせなければ貯めておくことができません。

一方、バイオマス発電ならば、バイオマス燃料さえ確保しておけば、どこであっても、自由自在に電力量を調整できるため、我が国の「ベースロード電源」になりえます。

バイオマスは太陽光を吸収し、光合成によって、自身のボディーに蓄積する特徴があるため「バイオマス=自然の太陽光パネル」だといえるでしょう。

僕は、バイオマス発電は、水素発電、アンモニア発電の技術が確立するまでの「キーパーソン」だと思っています。

たとえてご説明するのは難しいのですが、

「大谷翔平もいいけど、松井秀樹もイチローもまだ野球界には貢献しているよね」

「トロント・ブルージェイズの菊池雄星や、シカゴ・カブスの今永昇太もやるじゃん!」

という感じです。

「バイオマスは日本を救う」なのです。

【専門家コラム】発電業界の脱炭素化の“救世主”は「バイオマス発電」である!

5.今後、日本が採るべき「エネルギー政策」は?

日本は、イギリスから始まった19世紀の「産業革命」で、主力燃料であった「バイオマス」から「石炭」に切り替えました。

この方向転換によって「温暖化」が進んでしまったのは非常に残念なことです。

温暖化を防ぐためには、今こそ「産業革命以前のエネルギー体制を振り返る必要がある」と思っています。

私はこのアイデアに対して「バイオマス国産化計画」というネーミングで、重要な施策を4つ取り上げました。

脱炭素化を叶える「バイオマス国産化計画」
1.輸入材を撤廃し「100%国産材」由来のバイオマス燃料を活用・輸出する
2.ハイパフォーマンスな伐採機器の導入で国内の林業の「効率化」を推進する
3.耕作放棄地への早生樹エネルギー植林を行う
4.林地の所有権に関する問題を解決する

詳しくは、以下の記事をご覧ください。

【専門家コラム】脱炭素化のカギは「バイオマス国産化計画」である!(後編)