前回のコラムに引き続き、「よくある質問」に対して、私なりの考えをガンガンぶつけていく特別コラムをお送りします。
【本コラムで取り上げるテーマ】 |
1.日本の電力需要、今後増える?それとも減る? 2.原発の再稼働、今後どうなる? 3.日本の電力業界、消費者は安心して大丈夫? |
一つずつ、見ていきましょう。
1.日本の電力需要、今後増える?それとも減る?
「発電所ビジネスに興味がある。でも、少子高齢化の日本で、電力需要が増えるのか、減るのか判断できない……」
時々、このようなご相談をいただくことがあります。
皆さんが不安を口にされる通り、日本の人口は減っていくことが予想されています。
しかし「日本の電力需要は、右肩上がりに増えていくだろう」と見ています。
ですから、発電事業を始めるのに、今は悪くないタイミングだと見ています。
電力の需要増を押し上げる要因の1つが「生成AI関連技術」です。
ご存じない方も少なくないのですが、生成AIを使って、私たちが欲しいデータを取り出すときには「膨大なデータ計算」が必要になります。
さらに、データ計算のもととなる「データベース(DB)」も必要ですが、そのデータベースは、データセンターの容量を大きく圧迫します。
すると、データセンターの新設が必要になっていきます。
我が国においては、2050年に、データセンターが現在よりも40%ほど増えると予測されています。
データセンターは、電気で動いていますから、データセンターが増えれば増えるほど、電力消費量も加速度的に増えていきます。
それが、日本の電力需要が右肩上がりに増えるだろうという予測を裏付ける根拠の一つです。
【なぜ、日本の将来的な電力需要は高まるのか?】 |
国内においても「生成AI」の需要が急激に高まっている ↓ 「生成AI」を動かす際に「膨大なデータ計算+データベースの保存」が発生する ↓ データセンターの需要が高まるが、大量の電力を消費する ↓ 将来的には「日本の電力消費は高まるだろう」と予想できる |
特筆すべきなのは、電力中央研究所は、9240億キロワットの電力消費量(2021年)が、2050年に「最大37%増える」と予測していることです。
個人的には、生成AIの需要増以外にも、以下の2点が「日本の電力需要増」を押し上げる要素だと思っています。
【日本の電力需要が高まる理由】 |
1.少子高齢化社会になれば、若年層の慢性的な労働力不足が生じるため、さまざまな業界で「ロボット化」が進む 2.電力を大量に消費する「リニアモーターカー」は大量の電力を消費する(リニアモーターカーの電力をまかなう予定だった「福島第一原子力発電所」は廃炉となったため、発電所の新設が必要になると予想される) |
以上の通り、発電需要は高まっていく可能性が高いため「発電事業」を始めるのは、悪くない話だと思っています。
とりわけ重要なのは、「脱炭素」は不可逆的ですから、「再生可能エネルギー」が主要プレイヤーになり、少なくともこの先5~10年はバイオマスにならざるを得ないことです。
その点については、以下の記事で詳述しています。気になる方は、チェックしてみてください。
2.原発の再稼働、今後どうなる?
日本国内には、2023年10月時点で、12基の電子力発電所が稼働しています。
【稼働中の原子力発電所】 | |
都道府県 | 管轄/発電所名/稼働基数 |
福井県 | 関西電力/美浜発電所/1基 |
福井県 | 関西電力/大飯発電所/2基 |
福井県 | 関西電力/高浜発電所/4基 |
佐賀県 | 九州電力/玄海原子力発電所/2基 |
鹿児島県 | 九州電力/高知原子力発電所/2基 |
愛知県 | 四国電力/伊方発電所/1基 |
出典:一般社団法人日本原子力文化財団(JAERO)PDFファイル
2022年における電源構成を見ると、原子力発電は「5.6%」となっています。
【日本の電源構成】 |
・火力 72.7% ・太陽光 9.2% ・水力 7.6% ・原子力 5.6% ・バイオマス ・風力 0.9% ・地熱 0.3% |
出典:日本経済新聞「再生エネルギー、21.7%に増加 22年度の電源構成」
2024年9月6日に、総理大臣官邸で行われた「第12回原子力関係閣僚会議」の報告書には、次のように記載されています。
「原子力発電所の再稼働については、安全性の確保を大前提としつつ、地元理解を得た上で再稼働していく、というのが政府の一貫した方針です。柏崎刈羽原発についても、この方針に基づき、対応してまいります。 一方、東日本の電力供給構造の脆弱(ぜいじゃく)性、電気料金の東西の格差、今後の産業競争力や経済成長を左右する脱炭素電源確保などの観点から、柏崎刈羽原発の再稼働の重要性は高まっています。 |
出典:首相官邸「原子力関係閣僚会議」
つまり、原子力発電の安全性を確保したうえで、7基の原子力発電所を擁する「柏崎刈羽原子力発電所」を優先的に“再稼働”したいものと見られます。
このニュースに対しては賛否両論があることと思います。
我が国は、2011年の東日本大震災で、福島第一原子力発電所の1~3号炉における炉心溶融(ろしんようゆう/メルトダウン)を経験したからです。
「再稼働なんて怖い」という意見が根強いのもうなずけます。
その一方で、「安全対策は最優先。そのうえで、エネルギー自給率を向上させるためには原発再稼働も致し方ない」という考えもあるでしょう。
この点については、私の予想となりますが、再稼働するとしても、おそらくあと1~2基のみに留まるのではないかと思います。
地震多発地帯である日本では、いくら安全対策を講じたとしても、メルトダウンへの恐怖を完全に拭い去ることはできないからです。
地元住民の方々や、地方自治体の承認が取れないなど、山あり谷ありのまま、ほとんど再稼働せず、再生可能エネルギーの比重を増やしていく、という結果に終わるのではないでしょうか。
活断層の上にあるのではないかと言われている福井県の「敦賀発電所」は、安全面での懸念が色濃く残ることから、再稼働してはならないと思いますし、それが当然の判断だと思います。
新潟県にある「柏崎刈羽原子力発電所」については、事故を起こした福島第一原子力発電所と同じタイプの原子炉なため、このタイプが再稼働することもあってはならないと思います。
たとえ、原子力発電所が再稼働できたとしても、定期点検のたびに「超えなければならない壁」が立ちはだかります。
年に1回、定期点検をするものですが、その再稼働にも、地域住民と地方自治体の許可、認可が必要という法律になっているからです。
例えば、「柏崎刈羽原子力発電所」では、新潟県、柏崎市、刈羽市の承認と、住民の合意がないと、定期点検後の再稼働ができないことになっています。
そのため、東京電力は柏崎刈羽の再稼働は諦めていると思います。
3.日本の電力業界、消費者は安心して大丈夫?
とても素晴らしいことですが、日本電力会社には
「決して電力供給で国に迷惑をかけることがあってはならない」
というスタンスがあります。
そのため、燃料費が高騰しても、発電を止めることは原則としてありません。
基本的には、安定供給が期待できるものと考えてよいかと思います。
また、バイオマス発電で言えば、国内のIPP(独立系発電事業者)のほとんどは、FIT制度の恩恵を受けており、発電機を回す限り、20年間にわたって、政府による買取が保証されており、「発電所を動かすことが最優先」と考えています。
その点も、安心材料の一つです。
一方、欧州のバイオマス発電事業は、日本のFIT制度に類似した「補助金制度」がありますが、
「電気の需要が落ちたり、バイオマス燃料価格が高騰して、販売する電気と見合わなくなったら、簡単に発電を止める」
という発想ですから、このあたりのメンタリティーが、欧米と日本とでは大きく異なりますね。
以上の通り、電力の安定供給については、それほど心配しなくてもよいというのが、僕の考えです。
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