バイオマスコラム
2024.12.10

【専門家コラム】太陽光発電ビジネスの「5つの注意点」とは?(前編)

皆さん、こんにちは。

YK Partners株式会社の代表・草野です。

ニュースや新聞などで盛んに取り上げられる「再生可能エネルギー」と言えば、「太陽光発電」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

まず、身近なデータとして、住宅用の太陽光発電の導入件数を見てみましょう。

少し古いデータとなりますが、2019年における住宅用(10kW未満)の太陽光発電の導入件数は約267万件となっており、過去20年間の推移を見ても、急速に増えていることがわかります。

出典:一般社団法人 太陽光発電協会「太陽光発電の状況(2020年10月30日)

エポックメイキングだったのは、2017年7月にスタートした「太陽光発電の固定価格買取制度(FIT制度)」です。

FIT制度は、国が定める価格で20年間、電力を固定価格で買い上げる制度です。

2012年当時は「42円/1kWh」と、現在のバイオマス発電並みの高価での買取が保証されていました。

そのため“太陽光発電バブル”を巻き起こしたのです。

さらに、我が国の「電源構成」も見ておきましょう。

日本における「太陽光発電」のシェア率(2023年度)は、「11.2%」となっており、液化天然ガスであるLNG(29.0%)、石炭(28.3%)に次いで、第3位のシェア率となっています。

出典:ISEP「2023年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)

出典:ISEP「2023年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)

太陽光発電は、私たち日本人の生活に深く根付いた再生エネルギーだと言えますね。

そうしたなかで、「再生可能エネルギー事業を始めたい」「太陽光発電事業って儲かるのかな?」と、興味を持っている方もいるかもしれません。

しかし、実は、太陽光発電事業には、ビジネスを始める前に「知っておいた方がいいリスク」が5つあります。

前編となる本記事では、なかなか表立ってフォーカスされていない「太陽光発電ビジネスの注意点」を2点、お伝えしたいと思います。

【太陽光発電ビジネスに存在するリスク】
・【収益性のリスク】太陽光で発電した電気の買取価格は安い
・【安全上のリスク】土砂崩れの原因になりうる

本記事と後編の記事を読んで「太陽光発電ビジネスをするか否か」を判断することをおすすめします。

それでは早速、見ていきましょう!

1.【収益性のリスク】太陽光で発電した電気の買取価格は安い

太陽光発電における1つ目のリスクが「買取価格の安さ」です。

冒頭でご説明した通り、FIT制度がスタートした2012年当時は「42円/1kWh」という破格の買取価格が20年間保証されていました。

現在のバイオマス発電は「46円/1kWh」ですから、それと同等レベルだったのです。

しかし、2023年現在における「産業用(10kW以上50kW未満)」の買取価格は「10円/1kWh」です。

実は、約10年前の「1/4程度」の買取価格に暴落しているのです。

出典:ENEMAKASE「これまでの太陽光発電の売電価格の経過は?

さらに、毎年、どれだけの「売電収入」が得られて、初期費用を何年くらいで回収できるのか確認したいと思います。

仮に、産業用の50kW程度の太陽発電システムを導入した場合、年間の発電量は「60000kWh」程度です。

従って、得られる年間の売電収入は「60万円」ほどです。

「60000kWh」×「10円/1kWh」=「60万円」……売電収入

産業用の50kW程度の太陽発電システムの初期費用は1000万円~2000万円程度となっています。ここでは仮に、1500万円としましょう。

初期投資が1500万円、メンテナンスも含めた維持費が「30万円程度」だとするならば、単純計算で、費用回収は「25. 5年」となります。

1530万円÷60万円=「25. 5年」……初期費用回収

これを「収益性のよいビジネス」と捉えられるかは、なかなか判断が難しいところだと思います。

太陽光パネルの耐用年数は「20~30年」であり、初期費用を回収したと思ったら、耐用年数に達してしまったというケースが考えられるからです。

……これでは、ビジネスとして成り立たないでしょう。

さらに、気をつけたいのは「売電価格は過去10年で1/4に暴落している」という事実です。

これから、もっと買取価格が下がり続ける可能性は否めません。

そうなると、ますます初期費用回収まで時間がかかってしまうでしょう。

さらに、太陽光パネルは、さまざまな材料で構成されているため、分解処理が難しく、廃棄処理に大きな費用が発生する点も、見逃せないポイントです。

廃棄コストについては、50kWの太陽光パネルであれば、100万円程度とされています。

初期費用、廃棄コストも含めて考えると、太陽光発電の収益性が良いと断言するのは、ちょっと難しいような気もします。

それでも、太陽光発電ビジネスを行いたいのであれば、

「FIT制度を使わずに、電力会社に直接買い取ってもらう」

という方法を、選択肢に入れた方がよいかもしれません。

インターネット上で「太陽子発電の買取価格ランキング」などを見ると「14円/1kWh」程度で買い取ってくれる電力会社もあるようです。

多少、高い価格での買取が期待できるというわけです。

いずれにせよ、収益性については、入念に試算した方がよいかと思います。

参考:

・Earthcom

太陽光発電投資の初期費用はどれくらい?維持費や売電価格もご紹介

・エネがえる

50kWの太陽光発電の費用は1180万円程度!維持費も詳しく解説

・ENEMAKASE

2024年12月の卒FIT買取価格ランキングはこちら!おすすめ買取プランを持つ会社をご紹介

2.【安全上のリスク】土砂崩れの原因になりうる

全国で、太陽光パネル由来ではないかと懸念が持たれている「土砂崩れ」が発生しており、人が亡くなる「人災」に発展しているケースもあります。

地域防災の専門家は、その危険性を次のように語っています。

斜面にソーラーパネルを設置することについて地域防災の専門家は、降った雨が地中に吸収されることなく流れ落ちるようになることから土砂災害を引き起こす危険性があると指摘します。
防災推進機構理事長 鈴木猛康 山梨大学名誉教授「太陽光パネルを敷き詰めてしまうと9割から場合によってはほぼ100%が地表を流れるんです。地表を流れてしまうとそれは小さな調整池ではですね、受け切れないんですね」
鈴木名誉教授は、全国で増えているメガソーラーが引き起こす土砂災害を「令和の公害」と呼んでいます。
防災推進機構理事長 鈴木猛康 山梨大学名誉教授「全国でたくさんのこういう危険な斜面が出来上がっていますので、今後毎年のように大きな災害が出てくると思います。エネルギー政策という名のもとに事業者のお金儲けだけが先走りする。安全を無視して、先走りしているというところが一番の問題だと思います」

出典:Yahoo!ニュース「【令和の公害】”斜面に太陽光パネル”が土砂災害を引き起こす可能性 住民「出たいです、お金があれば」と懸念

山地においては、近隣に住む地域住民の方々の「設置反対」も想定されるでしょう。

そうした反対を押し切ってまで、ビジネスを断行するのは、なかなか勇気が要ることだと思います。

3.まとめ

前編となる本記事では、太陽光発電ビジネスにおけるリスクを、収益性と安全面の2点からお伝えしました。

【太陽光発電ビジネスに存在するリスク】
・【収益性のリスク】太陽光で発電した電気の買取価格は安い
・【安全上のリスク】土砂崩れの原因になりうる

後編では「SDGs上のリスク」として、3つのリスクをお伝えする予定です。

【太陽光発電ビジネスに存在するリスク】
・【SDGs上のリスク①】「自然環境・生物多様性」に悪影響を与える可能性がある
・【SDGs上のリスク②】「パネルの廃棄処分」は環境負荷が大きい
・【SDGs上のリスク③】「食料自給率に悪影響を及ぼす」という批判がある

次回の記事も、是非チェックしてみてください。

2024年も大変お世話になりました。

来年も引き続き、バイオマスや再エネ関連の記事をお届けしてまいります。

それではまた。