バイオマスコラム
2026.02.25

【専門家注目!】「廃棄物由来のバイオマス」で変わるエネルギーの未来とは?(前編)

こんにちは。

バイオマスの現場を20年以上見てきた草野です。

この数年、「エネルギー(燃料)」と「ゴミ」の境界が揺れ動いているのを肌で感じています。

「ゴミ」だと思われていたものが、見方を変えれば貴重な「エネルギー(燃料)」となり、発電の一端を担う——そんな時代が、すぐそこまで来ています。

前編となる本コラムでは、今、大注目の「廃棄物由来のバイオマス」の可能性(メリット)に焦点を当てて、解説したいと思います。

1.「廃棄物由来のバイオマス」とは何か?

バイオマス発電で用いられる「バイオマス燃料」と聞くと、植林された森林において、混み合いすぎた木々の間引きで生じる「間伐材」や、製材くず、建築廃材などを加工したチップをイメージする方が多いと思います。 

ですが、実は、バイオマス燃料になるものは、それだけではありません。

「ゴミ」として焼却処分されるようなものの中にも、焼却ボイラーなどの環境を整えれば、バイオマス燃料として使える資源があるのです。

例えば、「バイオマス発電」の一種である「バイオガス発電」では、次のようなものが、バイオマス燃料として活用されています。

一言でいえば「廃棄物由来のバイオマス」です。

【廃棄物由来のバイオマスの具体例】
・農作業後に残る「稲わら・もみ殻・野菜くず」などの農業残渣
・街路樹の「剪定枝・落ち葉・草」
・一般家庭から出る「紙くず」「食品廃棄物」「廃食用油」
・家畜のふん尿(牛、豚、鶏などのふん)
・下水汚泥(下水処理場の有機物を含んだ汚泥)

近年、注目されているのは、紙とプラスチックを固めた再生燃料である「RPF」です。

RPFとは「Refuse Paper & Plastic Fuel」の略で、主に、廃プラスチック、紙くず、木くず、古布など、水分量が少なく、熱量が高い廃棄物を選別し、ペレット状の固形燃料に加工したものです。

RPFは、捨てるはずだった廃棄物に、バイオマス燃料という「第二の使い道」を与えるサステナブルな燃料といえます。

今のところ、それほど普及していないのが実情ですが、RPFの活用に向けた取り組みが推進されています。

【バイオマス発電所でRPF活用を推進する企業2選】

・東ソー株式会社
東ソーは、山口県周南市にある老朽化した石炭火力発電所を「バイオマス発電所」にリニューアルする。2026年4月に完成予定のバイオマス発電所は、一般的なバイオマス燃料のほかに、建築廃材やRPFなどの「廃棄物由来のバイオマス燃料」も利用する予定である。
この取り組みは「温室効果ガスの排出量削減」「廃棄物の有効活用」を行うべく、計画されたもの。現段階では「バイオマス混焼」だが、将来的には「バイオマス専燃」により、二酸化炭素の排出量を、年間50トン削減したい考え。

・タケエイ
タケエイは、紙くず、繊維くず、廃プラスチック類などを選別・圧縮・成形することで、発電所用の「RPF」を製造しています。製造したRPFは、グループ内のバイオマス発電所である、千葉県市原市の「市原グリーン電力株式会社」や神奈川県横須賀市にある「株式会社タケエイグリーンリサイクル横須賀発電所」で、燃料材として活用している。

出典:
・東ソー「南陽事業所にバイオマス発電所を新設~エネルギーの脱炭素化に向けた施策~
・タケエイ「サーキュラー・エコノミーの実現に向けて

プラスチックは海洋汚染や海洋生物の生命を脅かすマイクロプラスチックの問題が、近年クローズアップされています。

そのため、丁寧に回収して、発電燃料として有効に使った方がよいと、僕は考えています。

RPFについては、2020年の記事で簡単に紹介していますので、よろしければ、あわせてご一読ください。

折を見て、最新の情報を盛り込んだ記事をアップできればと考えています。

【「RPF」について知りたい方はこちらの記事もチェック!】
プラスチックゴミの燃料化についての課題と今後

RPFをはじめとする廃棄物由来のバイオマスの活用は、捨ててしまっては“もったいないもの”に、活路を与えるサステナブルな取り組みです。

僕は、脱炭素時代にこそ推進すべきアプローチだと考えています。

2.廃棄物由来のバイオマスを活用する3つのメリットとは?

では、廃棄物由来のバイオマスを活用することで、具体的に、どんなメリットがあるのでしょうか? 

先に結論を言えば、廃棄物由来のバイオマスの活用には、4つのメリットがあります。

【廃棄物由来のバイオマスを活用する3つのメリット】
・「ゴミの減量」につながる 
・「エネルギー自給率」を向上できる 
・「燃料コスト」を削減できる 

1つずつ、見ていきましょう。

2-1.「ゴミの減量」で「温室効果ガスの排出削減」につながる

廃棄物由来のバイオマスを活用することで、ゴミの減量につながり「温室効果ガスの排出削減」に貢献できます。

官公庁のデータについては、最新の情報がなかなかアップされていない状況のようですが、平成26年度の「バイオマス発電事業の持続的な普及に向けて(経済産業省)」が、参考になります。

この資料には「バイオマスの最大利用可能量(年間)」という項目があり、「バイオマスの賦存量(湿潤重量)」や「最大利用可能量」が記載されています。

出典:経済産業省「バイオマス発電事業の持続的な普及に向けて(経済産業省/平成26年)

データを見ると「家畜排せつ物」の場合には、2010年時点で、90%がバイオマスとして活用されています。

家畜排せつ物は意外にも、きっちりとバイオマス燃料として活用されているのですね。

これが、もしも「利用率が100%」となれば、3080万トンのバイオマス燃料になると試算されています。

このデータのうち、注目したいのは、バイオマス利用率の低い「食品廃棄物」や「林地残材」「農作物非食用部」です。

食品廃棄物の賦存量は1900万トンであり、とても多いのですが、2010年時点での活用率は、27%に過ぎません。

この食品廃棄物の利用率が100%になると「1634万トン」ものバイオマスを活用できると試算されています。

「林地残材」の利用率が100%の場合には、800万トン、「農作物非食用部」の利用率が100%になった場合には350万トンが、バイオマス燃料として活用できる見込みです。

このように、各種の廃棄物由来のバイオマスを積み上げていくと、その賦存量は「2億6550万トン」にもなり、仮に利用率100%となれば「1億2046万トン」ものバイオマス燃料を確保できると試算されています。

焼却処分されるはずだった廃棄物由来のバイオマスを、丁寧に回収・分別して、バイオマス発電の燃料として再利用すれば、ゴミの減量になります。

つまり、焼却処分するゴミが減るため、温室効果ガス(二酸化炭素)の排出量を削減できます。

紛れもなく、SDGs時代に歓迎される取り組みです。

この点が、廃棄物由来のバイオマスを活用するメリットの一つです。

2-2.エネルギー自給率を向上できる

廃棄物由来のバイオマスの活用は「エネルギー自給率の向上」にも貢献します。

より具体的に言えば「バイオマス発電 × 国産資源のカスケード利用」によって、エネルギー自給率を向上できます。

少し複雑な話なので、順を追って説明しましょう。

ご存じの方も多いと思いますが、日本のエネルギー自給率は、2021年時点で「13.3%」と、主要先進国の中でも最低水準です。

火力発電も原子力発電も、燃料調達の大部分を海外からの輸入に依存しているのが実情です。

ですが、バイオマス発電においては、エネルギー自給率を向上できるポテンシャルがあります。

現状では、バイオマス燃料の7割は海外からの輸入品なのですが、我が国は「世界2位」の森林大国であり、国内においては木質資源の賦存量がとても多いです。

つまり、国内にある木質資源を「カスケード利用」の考え方で、高品質な木材は、家具などに使う一方、使い物にならない部分や、捨てる予定の部分、森林整備時に出る細枝・曲がり材・端材などを丁寧に回収し、チップ化すれば「廃棄物バイオマス」として、バイオマス発電で活用できます。

こうした廃棄予定の木質資源の活用が進めば、海外への燃料依存を減らすことができます。その結果、エネルギー自給率の率向上につながるというわけです。

日本のエネルギー自給率についての議論は、以下の記事で詳しく解説しています。

興味がある方は、あわせて御覧ください。

【日本のエネルギー自給率について知りたい方は以下の記事もチェック!】
日本が「エネルギー自給率向上」よりも考えなければならない「1つの視点」とは?

2-3.燃料コストを削減できる

先述の通り、バイオマス発電においては、燃料の7割を海外の輸入に頼っています。

しかし、国内で発生する林地残材、製材所残材、廃材、木くず、剪定木や稲わらのように地域で発生する「廃棄物由来のバイオマス」は、捨てる予定のものであるため「原料費=ゼロ」です。

そのため、バイオマス発電の燃料として活用すれば、理論上は、燃料コストを下げることができます。

バイオマス発電ビジネスにおいては、経費の8割が「燃料費」ですから、その部分を大幅にカットできるのは、嬉しいポイントですね。

バイオマス発電の経営における売上や経費については、以下の記事で詳しくお伝えしています。気になる方は、併せて御覧ください。

【バイオマス発電の収益性について知りたい方は以下の記事もチェック!】
【専門家解説】バイオマス発電所の収益性は?初期費用回収は最短8年

3.まとめ

廃棄物由来のバイオマスは、ごみとして焼却されていた資源に、もう一度「エネルギー(燃料)」という役割を与え、命を吹き込む取り組みです。

さらに「ゴミの削減」や「温室効果ガスの排出削減」に加え、「エネルギー自給率の向上」や「バイオマス発電のコスト削減」までつながる可能性がある画期的なものです。

廃棄物由来のバイオマスは、SDGs時代にこそ力強く活用していくべき燃料だと、僕は考えています。

ただし、廃棄物由来のバイオマスには、乗り越えなければならないハードルもあります。

次回は、廃棄物由来のバイオマスに立ちはだかるハードルと、そのハードルを乗り越えた先の未来について、お話ししたいと思います。

それでは、次回のバイオマスコラムでお会いしましょう!