バイオマスコラム
2026.02.25

【専門家注目!】「廃棄物由来のバイオマス」で変わるエネルギーの未来とは?(中編)

こんにちは。

バイオマスの現場を20年以上見てきた草野です。

【専門家注目!】「廃棄物由来のバイオマス」で変わるエネルギーの未来とは?(前編)」では、「廃棄物由来のバイオマス」を活用するメリットについて解説しました。

【廃棄物由来のバイオマスを活用する3つのメリット】
・「ゴミの減量」につながる 
・「エネルギー自給率」を向上できる 
・「燃料コスト」を削減できる 

中編となる本コラムでは、廃棄物由来のバイオマスの普及を阻む「2つのハードル」について解説します。

実は、廃棄物由来のバイオマスは、ゴミの減量につながったり、エネルギー自給率の向上に貢献するなどのメリットがありますが、普及に至りづらい課題があるのです。

それでは早速、見ていきましょう。

1.「廃棄物由来のバイオマス」に立ちはだかる2つのハードルとは?

廃棄物系バイオマスの普及には、次に挙げる2つのハードルがあります。

【「廃棄物系バイオマス活用」に立ちはだかる2つのハードル】
・「FIT価格:13~17円/kWh」と安く「収益性」が悪い 
・燃料ボイラーの「ナトカリ問題」が解決しきっていない 

1つずつ、見ていきましょう。

1-1.「FIT価格:13~17円/kWh」と安く「収益性」が悪い

間伐材由来の木質バイオマスには「32~40円/kWh」と、非常に高額なFITが設定されています。

具体的には、2000kW以上のバイオマス発電所で「32円/kWh」、2000kW未満のバイオマス発電所で「40円/kWh」です。

ですが、同じバイオマスでも、廃棄物系バイオマスは「13~17円/kWh」と、半額程度の買取価格が設定されています。

具体的には、建築資材廃棄物で「13円/kWh」、一般廃棄物その他バイオマスで「17円/kWh」です。

【建設資材廃棄物】
建設資材廃棄物(リサイクル木材)、その他木材

【一般廃棄物その他バイオマス】
剪定枝※、木くず、紙、食品残さ、廃食用油、黒液

※一般廃棄物・産業廃棄物に該当せず、「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」(林野庁)に基づく由来の証明が可能な剪定枝については、一般木質バイオマスとして取り扱う。

出典:資源エネルギー庁「買取価格・期間等(2025年度以降)

たとえば出力2000kWの発電所において、現実的な稼働率である約80%(=年間約7000時間)を前提とすると、売電収入は、2億円以上減ってしまいます。

FIT価格が「32円/kWh」である未利用木材と比較して、大きく収益がダウンしてしまうというわけです。

これでは事業化が難しいのは当然ですね。

【「売電単価」の違いによる収益比較】
・基本の計算式
年間売電収入(円) = 発電出力(kW) × 稼働時間(h) × FIT単価(円/kWh)

●FIT価格が「32円/kWh」の場合:
2000kW × 7000時間 × 32円 = 4.48億円/年

●FIT価格が「17円/kWh」の場合:
2000kW × 7000時間 × 17円 = 2.38億円/年

●FIT価格が「13円/kWh」の場合:
2000kW × 7000時間 × 13円 = 1.82億円/年

●FIT価格が「32円/kWh」の場合との比較
・FIT価格が「17円/kWh」:▲2億1000万円
・FIT価格が「13円/kWh」:▲2億6000万円
【バイオマス専門家・草野がズバッと深堀解説!】
「そもそもなぜ、廃棄物系バイオマスのFIT価格はこんなに低いのか?」

「そもそもなぜ、廃棄物系バイオマスのFIT単価は安くのか?」について、もう少し踏み込んでお伝えしたいと思います。

・未利用木材と廃棄物系のFIT単価の違い
皆さんもご存じの通り、バイオマス発電の売電価格は、事業開始から20年間においては、国が設定した「固定価格(FIT)」が適用されます。
これは、発電コストや政策優先度に応じて価格が決まります。
間伐材などの未利用木材のように、再資源化が推進されている燃料には、高めのFIT(最大32円/kWh)が設定されています。
一方、解体材や紙くず・廃プラなどを含む廃棄物系バイオマスは、再利用の優先度が低いうえに、不純物が多く、燃料としての品質が低いため、発電効率が下がりやすいです。
そのため、FIT単価も低く設定されてしまっているのです。

・FITを使わない市場ではどうなる?
今の電気代は10円/kwh程度です。
仮に「CO₂を出さない再生可能エネルギーですよ」と言っても、対価として支払われる“非化石価値”は数円程度です。
これでは、発電所の建設費・管理費・燃料集荷コストなどを考慮しても、到底、ペイできるものではありません。
廃棄物系バイオマスの価値は、低く見積もられており、それゆえに、事業化には大きなハードルがそびえ立っているのが実情です。

1-2.燃料ボイラーの「ナトカリ問題」が解決しきっていない

廃棄物由来のバイオマスを語るとき、必ずと言ってよいほど出てくるのが「ナトカリ問題」です。

ナトカリというのは、燃料に含まれるナトリウム(Na)とカリウム(K)のこと。

実は、この2つの成分が、ボイラーにとって非常にやっかいなのです。

それゆえ、廃棄物系バイオマスの利活用を阻害しているといっても過言ではありません。

たとえば、廃棄物系バイオマスの一つである廃プラスチックの中には、弁当の容器に残ったソースや醤油などの塩分がこびりついていることがあります。

こうした、食品には、ナトリウムが多く含まれており、燃焼時に反応して、ボイラー内部の配管や熱交換器を、腐食させてしまうことがあるのです。

一方、カリウムは、主に植物由来の廃棄物系バイオマスに含まれる成分です。

とりわけ、街路樹の剪定枝や竹、稲わら、落ち葉、樹皮、剪定くず、食品残渣などの廃棄物に多く含まれており、これらもバイオマス燃料として活用される候補です。

これらには、カリウムが高濃度で含まれているものがあり、燃焼時にナトリウムと同様、ボイラーを腐食させてしまうことが知られています。

このように、廃棄物系バイオマスには、ナトリウム(食品・調味料系)とカリウム(植物系)が混在しており、それぞれが異なるルートから、腐食の問題を引き起こしているのです。

腐食の原因となる「ナトカリ問題」の解決策を提示できなければ、廃棄物系バイオマスの普及は難しいといえるでしょう

【バイオマス専門家・草野のズバッと深堀解説!】
「バイオマス発電の“見えない敵”スラグって何?」

ナトカリ問題において、よく話題になるのが「スラグ」というガラス質の塊です。
燃焼後の灰の中で、ナトリウムやカリウムが結晶化すると、燃焼室の壁や配管にこびりついて固まってしまいます。これがスラグです。
見た目はただの石のようですが、発電設備にとっては非常に厄介な存在です。
スラグがたまると、ボイラー内部の熱がうまく伝わらなくなり、燃焼効率がガクンと落ちてしまうことが知られています。
スラグのほかには「クリンカー」や「アグロメレーション」なども、ボイラーの厄介者として知られています。
クリンカーは、ボイラー内に高温で融けた灰分(ミネラル)が凝固し、硬い塊として付着・堆積するものです。
一方、アグロメレーションとは、流動床ボイラーなどで使用される耐火材(ベッド材、砂など)が、溶けた灰分や融着物質と結合し、団子状となって、くっつく現象です。

・たとえるなら「焦げついたフライパン」
スラグやクリンカーを放置するのは、言うなれば、焦げついたソースがこびりついたフライパンをずっと使い続けているようなものです。
加熱ムラが起きて、料理もうまく仕上がらないのと同じように、発電設備でも必要な熱が得られず、発電出力が下がってしまいます。

・2000ppmが“赤信号”ライン
木質ペレットの品質としては、ナトカリ濃度(ナトリウム+カリウム)は2000ppm(=1kg中に2g)と規定されており、なかなか厳しい水準です。
この基準を超えたまま、燃料を使い続けると、ボイラーの腐食のリスクが上がることが懸念されます。
廃棄物系バイオマスでは、食品残渣や植物由来の成分が混在しているため、このナトカリ濃度をどう管理するかが、事業の安定稼働を左右する重要なポイントになるのです。

2.まとめ

廃棄物系バイオマスには魅力がたくさんあるんですが、現実には「収益が出にくい」「ボイラーが痛みやすい」という2つの壁が立ちはだかっています。

特にナトリウムやカリウムが原因で起きる“スラグ”は、発電効率を落とすやっかい者です。

こうした課題を、一つずつクリアしていかないと、「もったいないゴミ」をエネルギーに変える未来はなかなか近づいてきません。

今日のコラムはここまで。

次回は「廃棄物系バイオマスを普及するための具体策」について、僕なりの視点で語ってみたいと思います。お楽しみに!