こんにちは。
バイオマスの現場を20年以上見てきたバイオマス専門家の草野です。
「【専門家注目!】「廃棄物由来のバイオマス」で変わるエネルギーの未来とは?(中編)」では、「廃棄物由来のバイオマス」の普及を阻むハードルについて解説しました。
| 【「廃棄物系バイオマス活用」に立ちはだかる2つのハードル】 |
| ・「FIT価格:13~17円/kWh」と安く「収益性」が悪い ・燃料ボイラーの「ナトカリ問題」が解決しきっていない |
後編となる本コラムのテーマは「廃棄物系バイオマス活用に向けた3つの具体策」です。
廃棄物由来のバイオマスには、FIT価格の安さや、ナトカリ問題などの課題がありますが、僕は、決して「乗り越えられない壁」ではないと思っています。
そこで本記事では「どのような具体策を講じていくべきか?」について、僕なりの見解を解説したいと思います。
それでは早速、見ていきましょう。
目次
1.廃棄物系バイオマスの活用推進に向けた3つの具体策
本章では、設備、流通、燃料面から「廃棄物由来のバイオマスの普及に向けた具体策」を挙げていきます。
| 【「廃棄物系バイオマス」の普及に向けた3つの具体策】 |
| ・【設備】ナトカリに強い焼却ボイラーを開発する ・【流通】「PPA」を推進する ・【燃料】「RPF」を推進する |
1つずつ、見ていきましょう。
1-1.【設備】ナトカリに強い焼却ボイラーを開発する
「廃棄物系バイオマス」の普及に向けた設備面での具体策は「ナトカリに強い焼却ボイラー」を開発することです。
まず前提として、ナトカリとは、廃棄物系バイオマスに含まれる「ナトリウム」と「カリウム」のことで、バイオマス発電のボイラーを傷めてしまうことが問題になっています。
具体的には、弁当容器などの廃プラスチックに付着しているソースや醤油由来のナトリウムと、街路樹の剪定枝や竹、稲わら、落ち葉、樹皮、剪定くず、食品残渣などに多く含まれているカリウムを合わせて「ナトカリ」と呼んでいます。
これら、ボイラーを傷めてしまうナトリウムとカリウムによる問題は「ナトカリ問題」と呼ばれており、廃棄物系バイオマスの普及を阻む大きな要因の一つとなっています。
●ボイラー内部を金属でコーティングする
このナトカリ問題の解決策としては、ボイラー内部を耐腐食性の高い素材で加工するのがよいです。
チタン、セラミック、ステンレスなどの金属類でコーティングすれば、腐食を最小限に抑えられるからです。
わかりやすいイメージとしては、食品がこびりつきづらくなるように、フライパンに「テフロン加工」を施すことです。
この原理を、バイオマス発電のボイラーにも活用すればよいというわけです。
とてもシンプルな発想ですね。
●ナトカリの影響を中和する「炭酸カルシウム」などを添加する
ほかには、ナトカリの影響を中和する「添加剤」を混ぜるアプローチも有効です。
ドイツでは、「炭酸カルシウム」を用いることで、ナトカリの影響を抑えられたという報告があります。
ナトカリ問題について詳しく知りたい方は「【専門家注目!】「廃棄物由来のバイオマス」で変わるエネルギーの未来とは?(中編)」を御覧いただければと思います。
| 【バイオマス専門家・草野のズバッと深堀解説!】 「添加剤は応急処置にすぎない!本当に必要なのはボイラーの革新」 僕は、10数億円の追加投資で、ボイラー機能のグレードアップができるだろうと考えています。 ただし、現実問題として、ナトカリ問題を克服するボイラーの開発は、あまり進んでいないのが実情です。 各ボイラーメーカーは検討を進めていると思いますが、表立っては出てきません。 一方で「添加剤を混ぜてナトカリの効果を薄める」試みについては、ボイラーの開発よりもやや進んでいる印象です。 添加剤のアプローチは、腐りかけた食材を食べてしまったあとに胃腸剤を飲むのと似たイメージです。 たとえるならば、キャベジンが効くか太田胃散が効くか、あるいは便秘薬の方がよいかといった具合に、より良い選択肢が模索されています。 しかし、添加剤の効能は、とても限定的です。 ボイラーに添加剤を入れても、ナトカリの影響で、石ころがたくさんでき、発電設備が停止してしまうことがあるからです。 抜本的には、ボイラーのコーティング技術の開発が急がれるところです。 今後とも、動向をウォッチしていきたいです。 |
1-2.【流通】「PPA」を推進する
「廃棄物系バイオマス」の普及に向けた流通面での具体策は「PPA(Power Purchase Agreement)の推進」です。
PPAとは、発電した電気をあらかじめ決めた価格・期間で、特定の相手に売る契約のことです。
データセンター、大型工場、商業施設、自治体など、大量に電気を使う事業者が、発電事業者から直接、再生可能エネルギーを買う仕組みです。
PPAの大きなメリットは、契約企業が「SDGsに積極的な会社」という社会的評価を得られることです。
今はESG投資やカーボンニュートラルが強く求められる時代ですから、注目度は高まる一方です。
実際、GoogleやAmazonといったグローバル企業は、再エネ100%調達を目標に掲げ、太陽光・風力だけでなく「バイオマスPPA」も視野に入れています。国内でも、データセンターや大手物流施設向けに、地域分散型のバイオマスPPAモデル開発が求められています。
そのため、廃棄物バイオマスによって作った電気を、PPAのスキームに乗せれば、長期的かつ安定的に「再エネ燃料」として活用されることが期待できます。
つまり、廃棄物バイオマスの利活用が推進されるというわけです。
| 【バイオマス専門家・草野のズバッと深堀解説!】 「PPAが拓く廃棄物系バイオマスの未来、鍵を握るのはGAFAMか?」 ここでは、廃棄物バイオマスの普及を叶える具体策として「PPA」を取り上げましたが、日本発で主導するのは、正直ハードルが高いです。 現状は、「誰が再エネを発電するのか」「どの発電所から買うのか」「いくらで売ってくれるのか」が曖昧で止まってしまっています。 non-FITの再エネ電気代が、FIT並みに下がってくれば、データセンター向け需要は急増しますし、PPAは廃棄物系バイオマス推進の有力な一手になると思います。 GAFAMなど、世界中にデータセンターを設置しているような企業が「どんなに高値でも、再エネ電気を長期的に購買・契約します!」と、PPAを推進する動きを見せることで、一気に流れが変わるでしょう。 |
1-3.【燃料】「RPF」を推進する
「廃棄物系バイオマス」の普及に向けた、燃料面での具体策は「RPF(Refuse Paper and Plastic Fuel)の推進」です。
廃棄物系バイオマスを普及させるためには「発熱量の底上げ」が欠かせませんが、その有力な選択肢が「RPF」なのです。
RPFとは、廃プラスチック類のほか、木くず・紙くず・繊維くずなどを細かく砕き、圧縮して固めた固形燃料のことです。
見た目は円柱状のペレットで、取り扱いや保管がしやすく、輸送効率も高いのが特長です。

出典:株式会社リサイクルクリーン「RPF工場のご紹介」
実は、このRPFは、1kgあたりの発熱量は6000〜8000kcalに達し、石炭とほぼ同等です。
つまり、化石燃料に頼らずに、高カロリーで安定した燃料を確保できる“優れモノ”なのです。
廃プラスチックは従来、埋立や焼却処理が多くを占めてきましたが、燃料として活用すれば、ゴミのリサイクル率を向上できる点でも魅力的です。
まさに、今のSDGs時代にピッタリな「リサイクル燃料」ですね。
廃棄物系バイオマスはさまざまありますが、RPFがより広く知られるようになれば、廃棄物系バイオマスの利活用に注目する企業が増えると思います。
| 【バイオマス専門家・草野のズバッと深堀解説!】 「RPF推進の突破口になるのは「PPAモデル」の推進!」 RPFの認知拡大によって、廃棄物バイオマスにスポットライトが当たるようになるとお伝えしました。 しかし、現状のFIT制度においては、RPF単独での利活用推進は、難しい面があります。 なぜならば、FIT制度による固定価格買取は「再生可能エネルギーのみ」を対象としており、化石資源由来の成分(廃プラなど)が含まれると、全量が再エネとしては認められず、買取価格が下がってしまうからです。 そのため、RPFは、発電事業者と需要家が直接契約する「PPAモデル」と組み合わせるのがよいと、僕は考えています。 PPAならば、価格や条件を自由に設定でき、採算性の高い事業にしやすくなるからです。 |
2.まとめ
いかがでしたか。
今回は、廃棄物系バイオマスの普及を進めるための3つの具体策として、【設備】ナトカリに強い焼却ボイラーの開発、【流通】PPAの推進、【燃料】RPFの活用をご紹介しました。
ナトカリ問題を克服できる設備が整えば、ボイラーの寿命が延び、安定稼働が可能になります。
PPAの仕組みを活用すれば、電力を大量に使う企業との長期契約によって事業の安定性が増します。
さらにRPFを組み合わせれば、発熱量を高めながら廃棄物のリサイクルも促進できます。
こうした取り組みを並行して進めることで、「もったいないゴミ」を持続可能なエネルギーに変える未来は、確実に近づいていきます。
今日はこのあたりで。
また次回のバイオマスコラムでお会いしましょう!