前回のバイオマスコラム「【考察記事】水素・アンモニアは本当に「次世代のホープ燃料」なのか?(前編)」でお伝えした通り、水素・アンモニア燃料は、燃焼時にCO₂を排出しないため、一般的には“期待の次世代エネルギー”と考えられています。
| 【水素・アンモニア発電の「2つのメリット」】 |
| ・CO₂を出さないクリーンな発電ができる ・既存の火力発電所を活かして「ゼロエミッション」を実現できる |
しかし、水素・アンモニア燃料が普及するまでの道のりは険しく、到底「主力燃料にはなれないだろう」というのが僕の考えです。
なぜ、僕は、水素・アンモニア燃料に対して悲観的なのか?
その理由は「普及を阻む3つの壁」が立ちはだかっているからです。
| 【水素・アンモニア活用に立ちはだかる3つの壁】 |
| ・【第1の壁】取り扱いの難しい危険物である ・【第2の壁】莫大な投資コスト ・【第3の壁】発電に必要な燃料を確保できない |
どんな壁があるのか、一つずつ、見ていきましょう。
目次
1.【第1の壁】取り扱いの難しい危険物である
最も大きな壁として立ちはだかるのが「取り扱いの難しさ」です。
まず、水素については、最も軽い元素であるため、空気中に拡散しやすく、常に「爆発の危険性」と隣り合わせです。
とりわけ燃焼範囲は、空気中の濃度で「4~75%」であるため、プロパンなどの可燃性ガスよりも、ずっと容易に燃焼することが知られています。
たとえば、2019年5月には、韓国の水素貯蔵タンクが爆発し、8人の死傷者が出した大事故がありました(朝日新聞「水素って爆発するのでは? リスクと対策、温暖化促進指摘の研究も」2024年6月24日)。
このとき、水素貯蔵タンクだけでなく、周辺施設も損傷したことが知られています。水素爆発の脅威を物語る象徴的な事故といえるでしょう。
静電気や火花の発生で、いとも簡単に着火してしまうため、水素発電の運用においては、水素を漏らさないためのきわめて厳重な対策が求められます。
また、アンモニアも「強い毒性を持つ有害物質」として知られており、非常に扱いにくいものです。
一般的に、アンモニアは、植物の生育に必須である窒素を供給する化学肥料として知られています。
ですが、アンモニアは吸い込むと呼吸器を傷めることが知られています。
とりわけ、高濃度のアンモニアは生命に関わるほど危険です。
おおよそ、2500~6500ppmにさらされると、30分ほどで生命に危険が及ぶとされています(カグラべーパーテック株式会社「2024.3.5 アンモニアガスの人体への影響は?」)。
そのため、アンモニアについても、非常に厳格な漏洩対策が求められます。
以上の通り、水素・アンモニア燃料については「安全に保管・運ぶ仕組みづくり」にセンシティブにならざるを得ません。
そして、事故が発生したときに、人命を危ぶむリスクが非常に高いため、多くの企業が“及び腰”になっているのです。
2.【第2の壁】莫大な投資コスト
2つ目の壁は、経済的な負担です。
たとえば、JERAと三井物産は、アメリカでアンモニア燃料の製造工場を立ち上げるプロジェクトがあります
このプロジェクトにおいては、年間140万トンのアンモニアを製造する予定のようですが、その投資額は、日本円で「5900億円」にものぼります。
ちなみに、バイオマスペレットならば、30億円ほどの投資で、年間で15万トンの燃料を製造できます。
同じ6000億円で比較した場合、バイオマスなら200倍となる「3500万トン」の燃料を供給できます。
それだけ、アンモニア燃料はその製造インフラコストがすさまじく高額なのです。

実は、水素も似たような状況です。
例えば、水素発電は1kW/時あたり97円のコストがかかります。これは、液化天然ガスの7倍だとされており、非常に高額です。
さらに、水素を液化して運ぶには「−253℃」という極低温にする必要があるため、専用タンカーなど、輸送インフラへの投資が莫大になります。
つまり、水素もアンモニアも、投資コストが極めて高い燃料なのです。
水素・アンモニア燃料における「エコロジーの理想」と「エコノミーの現実」の間には、まだまだ、大きなギャップがあるといえるでしょう。
3.【第3の壁】発電に必要な燃料を供給できない可能性が高い
3つ目の壁は、燃料供給量の限界です。
たとえば、現在の日本のアンモニアの需要量は年間300万トンで、主に肥料用です。
一方、電力用に転用しようとすると、約10倍の「3000万トン」ほどが必要になると考えられています。
つまり、至極単純に言って、圧倒的に供給量が足りない。
だとするならば、国内に製造拠点を設けるのか、それとも、外国から輸入するのか、輸入するならばどの国から工面するのか――こういった燃料確保の目処すら、現状では立っていません。
4.まとめ低炭素・再生可能エネルギーへの切り札は「バイオマス」しかない!
本コラムでも触れてきた通り、水素やアンモニア燃料には、実用化・普及に向けて越えなければならない高いハードルがいくつも存在します。
率直に言えば、現時点ではまだ「夢のエネルギー」という段階を出ていない。
それが、僕の正直な見立てです。
そうしたなかで、日本が化石燃料に依存した発電から脱却し、低炭素・再生可能エネルギーを軸とした電源構成へと現実的に移行していくうえで、欠かせない選択肢があります。
それが、バイオマス燃料です。
なぜ、低炭素・再生可能エネルギーの現実解がバイオマスなのか?については、次月にお届けする「【考察記事】水素・アンモニアは本当に「次世代のホープ燃料」なのか?(後編)」で解説したいと思います。
今日はこのへんで。
また次回のバイオマスコラムでお会いしましょう!
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