前回のバイオマスコラム「【考察記事】水素・アンモニアは本当に「次世代のホープ燃料」なのか?(中編)」でお伝えした通り、水素・アンモニア燃料は、普及をはばむ3つの壁があります。
| 【水素・アンモニア活用に立ちはだかる3つの壁】 |
| ・【第1の壁】取り扱いの難しい危険物である ・【第2の壁】莫大な投資コスト ・【第3の壁】発電に必要な燃料を確保できない |
正直なところ、「夢のエネルギー」の域を出ていないというのが、僕の考えです。
そうしたなかで、日本が“化石燃料頼みの発電”から、“低炭素・再生可能エネルギー中心の発電”へと切り替えていくための“現実解”として、どうしても外せないのが「バイオマス燃料」です。
なぜならば、バイオマスは取り扱いが容易な固形燃料であり、既存の大型石炭火力発電所をそのまま活用できるからです。
水素やアンモニアのような爆発リスクや毒性がなく、商用化にあたってクリティカルな追加インフラを必要としない点にも、大きな魅力価値があります。
とはいえ、「本当にそうなの?」と感じる方もいるでしょう。
そこで今回のコラムでは、水素・アンモニア発電に立ちはだかる3つの壁を、バイオマ電ならどうなのか? という観点で検証してみたいと思います。
| 【バイオマス燃料は「3つの壁」をクリアできるのか?】 |
| ・【第1の壁】バイオマスの取り扱いは難しい? ・【第2の壁】製造に莫大な投資コストは発生する? ・【第3の壁】バイオマスに「燃料確保」の課題は? |
では、それぞれの壁について、一つずつ、検証していきましょう。
●【第1の壁】バイオマスは取り扱いは難しい?
結論はシンプルで、バイオマスはとても取り扱いやすい燃料です。
バイオマスは石炭と同じ“固体燃料”であるため、水素やアンモニアのように、うっかり漏れたら大事故につながるといったリスクとは無縁だからです。
なお、ペレットは水に濡れると崩れるので屋根付き倉庫やサイロを使いますが、チップやPKSは屋外保管も可能です。
港にドサッと積んでおける気楽さがある点が大きな魅力ですね。
燃焼時は、石炭と一緒に“混焼”するのが一般的です。
専焼(バイオマス100%)にしたい時だけ、半炭化(トレファクション)して“石炭に寄せる”ひと手間を加えるのが、現状におけるバイオマス燃料を運用する際の最適解です。
ちなみに石炭は、もともと太古の植物が自然に半炭化したものですから、バイオマスが化石燃料の代替燃料にできるのは、ごく自然な話なのです。
●【第2の壁】製造に莫大な投資コストは発生する?
バイオマス燃料の製造に莫大な投資コストは発生しません。
バイオマスは、すでに東南アジアを中心に製造設備が稼働しており、大量生産の体制が整っているのが現状だからです。
製造国も複数あり、特定国に依存していません。
また、製造設備はすでに稼働しているため、需要に応じた増産も比較的容易です。
専用インフラを新設しなければならない水素・アンモニアと比べ、スケールアップのハードルも低いと言えます。
こうした背景により、水素・アンモニアとは事情が異なります。
水素・アンモニアは専用インフラをゼロから作るところから始まるため、莫大な投資が必要になるためです。
●【第3の壁】バイオマスに「燃料確保」の課題は?
結論から言えば、バイオマスの燃料確保に、大きな不安はありません。
バイオマス燃料は、植物由来なので資源そのものが減らないうえ、世界中に存在する「再生可能資源」だからです。
化石燃料ほどエネルギー密度は高くありませんが、賦存量が多いことは、大きなアドバンテージといえるでしょう。
また、バイオマスの場合、日本国内には、豊富に森林が広がっています。
国内材はほとんど活用されていないため、まだまだ供給の余地が非常に大きいと言えます。
また、間伐材や林地残材のほか、今後は農業で出る“残渣”も有力な供給源の一つとして注目を集めています。
●まとめ
以上の通り、水素やアンモニアでは埋めづらい“商用化上のハードル”を乗り越えられるのが「バイオマス燃料」なのです。
最後に、政府関係者が実際におっしゃっていた発言をご紹介します。
「これから再エネ政策を支えられるのは、結局のところ、バイオマスしかない」
この言葉の背景には、
●既存の火力発電所の化石燃料をバイオマスに置き換えるだけで、すぐさまカーボンニュートラルを実現できる
●水素・アンモニア燃料のようなコスト・設備面でのハードルがない
などのアドバンテージが大きく、「やっぱりバイオマスだよね」といった想いがあるわけです。
とはいえ、水素・アンモニア燃料が注目されているのも事実ですから、今後とも国内外の動向については、ウォッチしていきたいと思います。
今日はこのへんで。
また次回のバイオマスコラムでお会いしましょう!
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