「バイオマス産業都市って一体、何だろう?」
「バイオマス産業都市」とは、バイオマス産業を活用した町・村づくりを目指す地域のことです。
「バイオマス産業都市」の認定が、7府庁(※)によって毎年行われており、募集期間に応募した地方自治体のなかから、バイオマス産業都市が選出されます。
(※)内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省
「バイオマス産業都市」に選出されると、以下のようなメリットが享受できます。
①バイオマス関連の「助成金」や「補助金」を受ける際の「加点」になる ②関係府省の施策を活用できる ③関係府省によるサポートが受けられる(相談に対するアドバイスを受けられる等) |
本記事を読めば、
「バイオマス産業都市」への応募を行うべきか?
判断することができます。
それでは早速、ご覧ください。
目次
1.「バイオマス産業都市」の定義
バイオマス産業都市とは、冒頭で説明した通り、バイオマス産業を活用した町・村づくりを目指す地域のことです。
より正確な定義は、以下の通りです。
バイオマス産業都市の定義 |
バイオマス産業を活用した町・村づくりを目指す地域 |
バイオマス産業都市に求められる要件 |
①経済性が確保された一環システムを構築する ②地域の特性を活かす ③環境にやさしい ④災害に強い |
参考:農林水産省 大臣官房環境バイオマス政策課「バイオマス産業都市について」
上記の通り「バイオマス産業都市」は、単にバイオマス産業を活用した地域づくりをすればよいわけではありません。
バイオマス産業の導入によって、経済的な利潤が得られることや、地域の特性を活かすこと、脱炭素化に役立つこと、災害時の影響を受けにくい構想であることなども「条件」になっています。
バイオマス産業都市の具体的なイメージは、以下の通りです。
出典:農林水産省 大臣官房環境バイオマス政策課「バイオマス産業都市について」
上記の通り、農業・林業・漁業・畜産・酪農などが「地域一体」となって、バイオマス燃料の「原料収集・運搬・製造・活用」までを「一気通貫で行う」のが、バイオマス産業都市の最大の特徴なのです。
上記のイメージ図を、分かりやすく説明しましょう。
この場合には、バイオマス産業都市内で、以下のような「有機的な連携」が図られます。
バイオマス産業都市の連携例 | |
林業 | 「低品質な木材」や「未使用の木材」を、木質チップ・木質ペレットなどに加工して、地域内で運転している「木質バイオマス発電所」や、農業地域での「ボイラー燃料」として使用する |
漁業 | 売れ残りなどにより、処分するしかない魚等の「海洋物残渣」を、地域内で運転している「たい肥化施設」や「バイオガスプラント」に持ち込むことで「農業用たい肥」に変換する |
畜産・酪農 | ウシやニワトリなどの「家畜排せつ物」を、地域内で稼働している「バイオガスプラント」に持ち込むことで、地域内へ電力供給に用いたり、売電収入を得たりする |
農業 | 売れ残りなどにより、処分するしかない農作物等の「農作物残渣」を、地域内で稼働している「バイオガスプラント」に持ち込むことで、地域内への電力供給に用いたり、売電収入を得たりする |
農村部・都市部 | 食品加工施設・公共施設・小売店・一般家庭等から排出される「廃食用油」を地域内で稼働している「バイオディーゼル燃料の製造施設(=BDF製造施設)」に持ち込むことで、バイオディーゼルを製造・活用する |
地域公共団体等 | 上記の連携の「推進・取りまとめ」を行う |
このように、バイオマス産業都市内では、地域一体となって「脱炭素・持続可能性」を追求していくことが望まれます。
実際の具体例は「バイオマス産業都市について」に、4つの事例が掲載されています。
是非、併せて御覧ください。
2.「バイオマス産業都市」に選出されると補助金が受けられる?
我が国がSDGsを推進しているなか、「バイオマス産業都市」は、7府省が参画しており「注力事業の一つ」だと考えられます。
しかし、バイオマス産業都市に選出されたからといって、すぐさま補助金が受けられるわけではありません(各省庁の計画によって変動する場合あり)。
「バイオマス産業都市」に選出されると、各省庁が主管となった「補助金事業」に応募する際に「加点」がつきます。
この「加点措置」によって、補助金の審査に通りやすくなるのが、バイオマス産業都市に応募する際に享受できる「大きなメリット」です。
くれぐれも、バイオマス産業都市に選出されたからといって、補助金が受けられると勘違いしないようにしましょう。
3.「バイオマス産業都市」に応募する4つのメリット
先述の通り、バイオマス産業都市に選出されると、補助金を申請する際の「加点」になるのが、大きなメリットとして挙げられます。
加えて、先述の通り、「SDGs」を始めとした「持続可能な社会の実現」に高い関心が寄せられているため
・「持続可能な社会づくり」に関心が高い若者たちが集まってくる(=地域の活性化、労働力の確保)
・「持続可能な社会づくり」に関心が高い企業を誘致できる(=雇用の創出、財政の健全化)
なども期待できます。
そのほか、地域が抱える諸問題を、各府庁からアドバイスを受けながら解決したい場合にも、メリットがあります。
酪農・農業が盛んな地方自治体においては「ふん尿や農業の残渣物の処理」に関する問題があります。
林業が盛んな地域では、未使用材・低品質材の処分にともなうコストが問題になる場合もあります。
こうした問題の解決をしたい場合、バイオマス産業都市に選ばれれば、府庁のサポートを受けながら、問題解決に取り組めます。
バイオマス産業都市に選出されるメリットをまとめると、以下の通りです。
バイオマス産業都市に選出される4つのメリット |
・助成金を申請する際の「加点」になる ・「持続可能な社会づくり」に関心が高い若者たちが集まってくる(=地域の活性化、労働力の確保) ・「持続可能な社会づくり」に関心が高い企業を誘致できる(=雇用の創出、財政の健全化) ・地域が抱える諸問題を、府庁からアドバイスを受けながら解決できる |
「我が町は、バイオマス産業都市に応募すべきか?」
について迷った場合には「上記のメリットを享受したいか否か」で判断してみましょう。
4.応募書類「バイオマス産業都市構想」に盛り込む内容
「バイオマス産業都市」として認められるには、毎年行われる審査に応募する必要があります。
審査は、平成25年度より行われており、毎年更新される「バイオマス産業都市募集要領」を読み込んだうえで、「バイオマス産業都市構想」を提出する必要があります。
令和3年度の募集では、以下9点を盛り込んだ「バイオマス産業都市構想」の提出が求められました。
提出書類「バイオマス産業都市構想」に盛り込む内容 | |
⑴地域の概要 | ・対象地域の範囲、経済的・社会的・地理的な地域の特色、作成主体等 |
⑵地域のバイオマス利用状況と課題 | ・地域のバイオマスの賊存量、利用率等の現状と課題 |
⑶指すべき将来像と目標 | ・バイオマス産業都市を目指す背景や理由 ・バイオマス産業都市として目指すべき将来像 ・バイオマス産業都市として達成すべき目標 |
⑷事業化プロジェクトの内容 | ・プロジェクトの内容 ・事業内容・事業採算性に関する計画 |
⑸地域波及効果 | ・バイオマス産業都市構想の実現によって得られる効果 |
⑹実施体制 | ・バイオマス産業都市構想の実現や評価を行う体制 |
⑺フォローアップの方法 | ・目標の達成状況等の評価や構想見直しの時期・方法等を記載する |
⑻他の地域計画との有機的連携 | ・バイオマス事業化戦略に留意する ・バイオマス活用推進基本法に基づく市町村・都道府県バイオマス活用推進計画、その他の計画(分散型エネルギーインフラプロジェクト(総務省所管)で作成されたマスタープラン等)との有機的な連携が図られるよう考慮する |
⑼市町村バイオマス活用推進計画の策定 | ・バイオマス活用推進基本法に基づく市町村バイオマス活用推進計画の策定を要件とする |
参考:内閣府エネルギー・環境グループ 総務省地域政策課/文部科学省 環境エネルギー課/農林水産省 バイオマス循環資源課/経済産業省 新エネルギー課/国土交通省 環境政策課/環境省 地球温暖化対策課 バイオマス産業都市募集要領(令和3年度募集)
なお、2021年分の募集は終了しています。
バイオマス産業都市に応募したい場合には、2022年度の応募に向けた準備を行っていきましょう。
6.バイオマスタウンとの違い
「バイオマス産業都市」と併せてよく聞かれるのが「バイオマスタウン」です。
基本的には、2つの概念は似たようなものです。
ただし、厳密には「バイオマスタウン」をさらに発展させたものが「バイオマス産業都市」と定義されています。
バイオマスタウンは、市町村を対象としたものですが、バイオマス産業都市は、市町村だけでなく、
① 市町村(単独又は複数)
② 市町村(単独又は複数)と当該市町村が属する都道府県の共同
③①又は②と民間団体等(単独又は複数)との共同体
なども対象としているため、より大きな枠組みで構想するのが、大きな違いといえます。
加えて、バイオマス産業都市は「産業」とつく通り「経済性」が重視されます。
単に、バイオマスを推進するだけでなく、バイオマスの活用によって、経済的利益が得られることも、焦点になっているのです。
バイオマス産業都市に求められる要件 |
①経済性が確保された一環システムを構築する ②地域の特性を活かす ③環境にやさしい ④災害に強い |
参考:農林水産省 大臣官房環境バイオマス政策課「バイオマス産業都市について」
「バイオマスタウン」について知りたい方はこちらの記事もチェック! |
バイオマスタウン構想 |
7.まとめ
いかがでしたか。バイオマス産業都市について、理解が深まったのではないでしょうか。
ここで、本記事の内容をまとめます。
●「バイオマス産業都市」の定義
バイオマス産業都市の定義 |
「バイオマス産業都市」とは、バイオマス産業を活用した町・村づくりを目指す地域 |
バイオマス産業都市に求められる要件 |
①経済性が確保された一環システムを構築する ②地域の特性を活かす ③環境にやさしい ④災害に強い |
●「バイオマス産業都市」に選出されると補助金が受けられる?
・「バイオマス産業都市」に選出されたからといって、すぐさま補助金が受けられるわけではない(各省庁の計画によって変動する場合あり)
●「バイオマス産業都市」に応募する4つのメリット
・補助金を申請する際の「加点」になる
・「持続可能な社会づくり」に関心が高い若者たちが集まってくる(=地域の活性化、労働力の確保)
・「持続可能な社会づくり」に関心が高い企業を誘致できる(=雇用の創出、財政の健全化)
・地域が抱える諸問題を、省庁からアドバイスを受けながら解決できる
●応募書類「バイオマス産業都市構想」に盛り込む内容
提出書類「バイオマス産業都市構想」に盛り込む内容 | |
⑴地域の概要 | ・対象地域の範囲、経済的・社会的・地理的な地域の特色、作成主体等 |
⑵地域のバイオマス利用の現状と課題 | ・地域のバイオマスの賊存量、利用率等の現状と課題 |
⑶目指すべき将来像と目標 | ・バイオマス産業都市を目指す背景や理由 ・バイオマス産業都市として目指すべき将来像 ・バイオマス産業都市として達成すべき目標 |
⑷事業化プロジェクトの内容 | ・プロジェクトの内容 ・事業内容・事業採算性に関する計画 |
⑸地域波及効果 | ・バイオマス産業都市構想の実現によって得られる効果 |
⑹実施体制 | ・バイオマス産業都市構想の実現や評価を行う体制 |
⑺フォローアップの方法 | ・目標の達成状況等の評価や構想見直しの時期・方法等を記載する |
⑻他の地域計画の有機的連携 | ・バイオマス事業化戦略に留意する ・バイオマス活用推進基本法に基づく市町村・都道府県バイオマス活用推進計画、その他の計画(分散型エネルギーインフラプロジェクト(総務省所管)で作成されたマスタープラン等)との有機的な連携が図られるよう考慮する |
⑼市町村バイオマス活用推進計画の策定 | ・バイオマス活用推進基本法に基づく市町村バイオマス活用推進計画の策定を要件とする |
●バイオマスタウンとの違い
・「バイオマスタウン」をさらに発展させたものが「バイオマス産業都市」
本記事が、バイオマス産業都市について知りたい方のお力になりましたら幸いです。