「バイオマス発電」がSDGs時代に求められる4つの理由

バイオマスコラム

2022年2月に、欧州の再生可能エネルギー関連誌「Bioenergy Insight」と同メディアのウェブサイトに、私のインタビュー記事が掲載されました。

タイトルは「“We cannot wait another five or 10 years”(=あと5年、10年と待ってはいられない)」。「脱炭素化」を実現するのにふさわしい発電方法について、私なりの見解を述べたものです。

本稿では、インタビュー記事で語った内容に、オリジナルの補足を加えつつ「次世代に求められる発電方法」に対する私の主張を、わかりやすくかみ砕いて、お伝えしたいと思います。

1.脱炭素化には「バイオマス発電」が最適である4つの理由

脱炭素化を実現するうえで、最適な発電方法は「バイオマス発電」です。

これが、本稿における私の中心的な主張です。

バイオマス発電とは、農業残渣や間伐材、家畜の排せつ物、生ごみなどの資源を燃料に用いた発電方法です。脱炭素化を実現するためには「バイオマス発電」を推進していくべきだと、私は考えています。

その理由は、大きく分けて4つあります。

脱炭素化には「バイオマス発電」が最適である4つの理由
・火力発電所ですぐに稼働できる
・ベースロード電源になる
・発電で使う「バイオ燃料」が調達しやすい
・ほかの発電方法は「コスト面・技術面・環境面」などで一歩及ばない

その理由について、一つずつ説明していきましょう。

①火力発電所ですぐに稼働できる

一つ目の理由が、バイオマス発電であれば、火力発電所ですぐに稼働できるという点です。

発電所で「脱炭素化」を行う場合、目をつけるべきなのは「火力発電所」です。火力発電所は、燃料を燃やす際に多量の温室効果ガス(二酸化炭素など)を排出するため、地球温暖化を加速させる一因になっているからです。

とはいえ「火力発電所を廃炉しよう」というのは現実的ではありません。日本のエネルギー供給は76.3%が火力発電が占めており、頼りきりな状況だからです。

そこで、火力発電所で使われている化石燃料(LNG(天然ガス)・石油・石炭)の利用量を削減し、その代替燃料として「カーボンニュートラル」なバイオマス燃料を投入しようというのが、私の考えです。

バイオマス燃料は、化石燃料と同じように火力発電所で使用できる燃料です。

化石燃料をバイオマス燃料に置換するだけで、今まで通り発電できるため、スムーズに脱炭素化を実現できます。

単純計算ではありますが、仮に化石燃料の投入量を30%減らし、代わりにバイオマス燃料を投入すれば、温室効果ガスを30%減らすことができます。

バイオマス燃料を用いれば、これほど簡単に、脱炭素化を実現できるのです。

日本の電力の80%近くを占める火力発電所を活かし、大きな設備投資なく、脱炭素化を実現できる——こうしたシナリオは「バイオマス発電」によって、いともたやすく現実のものとなります。

だからこそ、脱炭素化を推進するSDGs時代は、バイオマス発電を推進すべきなのです。

②ベースロード電源になる

バイオマス発電を推進すべき2つ目の理由が「ベースロード電源になりうる」という点です。

ベースロード電源とは「昼夜や天候のコンディションに関わらず、安定的に発電できる電力源」のことです。

現時点では、原子力発電や火力発電などが「ベースロード電源」だと認識されています。しかし、原子力発電は「安全上のリスク」が大きすぎますし、火力発電は温室効果ガスを排出します。いずれも、手放しで推奨できる発電方法ではありません。

また、再生可能エネルギーの風力や太陽光は、昼夜や天候の影響によって、発電量が上下します。風力発電は、風が吹かなければ発電しませんし、太陽光は、曇りや雨であれば発電しません。

一方、バイオマス発電は、再生可能エネルギーを用いた発電方法のなかで唯一「ベースロード電源」になりうる発電方法です。

なぜならば、バイオマス発電は、燃料となるバイオマス燃料の確保さえできれば、昼夜・天候問わず、安定的に発電できる発電方法だからです。

意外と知られていませんが、バイオマス発電の場合「発電出力を調整できる」のも大きなメリットの一つに数えられます。

このように「時間帯や天候による影響を受けずに安定的に発電できるベースロード電源である」という点も、バイオマス発電を推進すべき理由の一つに挙げられます。

③発電で使う「バイオマス燃料」が調達しやすい

バイオマス発電を推進すべき3つ目の理由が「バイオマス燃料は調達しやすい」という点です。

バイオマス燃料は、捨てる予定の「生物由来の廃棄物」を活用するのが基本となります。そのため、資源の確保がしやすく、世界中から調達することができます。

また、火力発電で用いる化石燃料のように「有限な資源」を活用しなければならなかったり、風力発電や太陽光発電のように、昼夜や天候によって「確保できる量が異なる」資源でもありません。

廃棄物を活用するため、資源を有効活用できます。このように地球環境にやさしい発電方法である点も、バイオマス発電の大きな魅力の一つです。

バイオマス燃料の原料例
・木質ペレット(間伐材が原料のもの)
・食用廃棄油
・生ごみ
・下水汚泥
・家畜糞尿
・有機肥料
・汚水
「バイオ燃料とは何か」について知りたい方はこちらもチェック
【解説】バイオ燃料とは?わかりやすくメリット・デメリットを説明、提供企業3選

④ほかの発電方法は「コスト面・技術面・環境面」などで一歩及ばない

バイオマス発電以外の発電方法は、「コスト面・技術面・環境面」でデメリットが多いです。

どうして、ほかの活電方法では「ベースロード電源」として一歩及ばないのか。

その理由を、以下の表に簡単にまとめてみました。ご確認ください。

ほかの発電方法が「次世代のベースロード電源」として一歩及ばない理由

・原子力発電
原子力発電所は、現状、一部しか再稼働していない。今後、ベースロード電源として活用できる希望は薄い。

その理由は、安全管理にかかわるコストが甚大であるから。ロシアが行ったウクライナの原発への攻撃のように、安全管理上のリスクが大きい。安全設備投資や廃炉するまでのコスト、使用済み核燃料の処理施設の確保など「総保有コスト/TOC(Total Cost of Ownership)」が高い。もはや「競争力のある」電源ではなくなっている。

トータルで見た場合、再エネを用いた発電の方が、電力コストは圧倒的に安いのが現状である。
・太陽光発電
太陽光は、昼夜・天候に左右されるため、ベースロード電源としては不適。

住宅の屋根への設置促進は可能だと考えられるが、大規模発電のための「用地確保」はむずかしい。日本は自然災害が多く、発電のためのまとまった土地の確保ができない。過去には、熱海の土石流問題や河川氾濫による発電設備の流出問題などがあった。

また、太陽光パネルの設置によって影になるところは、植物が育たなくなる問題も指摘されている。
・陸上風力発電
第一に、日本には平地が3%しかない。そのため、陸上風力は、ベースロード電源としては不適。

強風が吹くのは山頂だが、物理的に大規模発電設備を設置できない。大型トレーラーで運び込んだり、発電用の土地を確保したりするのが困難。低周波の運転音やバードストライクなど環境上の問題も多いため、どうしても適地が限られてしまう。
・洋上風力発電
洋上風力設備を海底に固定させる必要があるが、日本の海は遠浅なため、設備を置ける海域は海外線の一定幅に限定されてしまう。そのため、洋上風力は、ベースロード電源には不向き。

日本が大規模な洋上風力発電設備を設置するには、深海に設置できる「浮体式」の設備が必須だが、この設備は発展途上にあり、どの企業も実用化に成功していない。技術革新には最大10年程度かかる見込み。
・水素発電/アンモニア発電
ベースロード電源として、ほかの発電方法よりは有力視されているが、技術革新が必要。実用化まで10年はかかる見込み。

これまで挙げた①~④が、私がバイオマス発電をおすすめする理由となります。

脱炭素化には「バイオマス発電」が最適である4つの理由
・火力発電所ですぐに稼働できる
・ベースロード電源になる
・発電で使う「バイオ燃料」が調達しやすい
・ほかの発電方法は「コスト面・技術面・環境面」などで一歩及ばない

2.「バイオマス発電」を稼働する際の注意点3つ

1章でお伝えした通り、バイオマス発電は「脱炭素化を実現する次世代のベースロード電源」として、もっとも魅力的な発電方法だといえます。

ただし、いくつか注意点もあります。

「バイオマス発電」を稼働する際の注意点3つ
・バイオ燃料は食料になる生物資源を用いない
・炭化バイオマスを活用する
・カスケード利用する

2-1.バイオ燃料は食料になる生物資源を用いない

一つ目の注意点として「バイオ燃料は食料になる生物資源を用いない」が挙げられます。

バイオマス発電を行う際、食料として活用できる生物資源まで、バイオマス発電に活用するのは望ましくありません。

例えば、コムギやオオムギなどは食料になりうるため、これをバイオマス燃料として使うのは避けるべきです。今もなお、貧困による食糧難にあえいでいる国があるなかで、電力供給よりも食料供給が優先されるべきだからです。加えて、将来的には人口爆発により、食料の確保がむずかしくなる可能性が指摘されているからです。

例えば、パーム油の場合。

食用となる油は燃料として使わず、精製過程で工場から排出される残渣物である「PKS」や、農園残渣の「EFB」「PALM TRUNK」などは、バイオマス燃料として活用するのが望ましいです。

2-2.カスケード利用する

バイオマス発電を行う際には、カスケード利用を推進していくべきだと考えています。

「バイオマスのカスケード利用」とは、一言でいえば「資源の有効活用」を推進する考えのことです。以下、当サイトのコラムに分かりやすく説明した箇所がありましたので、抜粋いたします。

「付加価値の高いものから順に使っていこう」という考え方を示したものに「バイオマスの5F」があります。

(1)Food(食料)
(2)Fiber(繊維)
(3)Feed(飼料)
(4)Fertilizer(肥料)
(5)Fuel(燃料)

「食料(Food)」が最も価値が高く、次にその残骸を利用した「繊維(Fiber)」製品、家畜等の「飼料(Feed)」と続き、「肥料(Fertilizer)」を経て、最後に「燃料(Fuel)」としてその役目を終えます。これも「バイオマスのカスケード利用」です。

森林資源から生み出される多種多様な木質系バイオマスを、無駄にすることなく、段階的にとことん使い切っていく…それがカスケード利用です。カスケード利用の流れを構築していくことは、地球環境保全と林産業の活性化にとって、大変重要な意味があります。

出典:YK Partners バイオマスコラム「バイオマスのカスケード利用とは何か

上記で説明した「バイオマスの5F」のように、限りある資源を食料、繊維、飼料、肥料として使い「廃棄するだけ」の状態になった残渣物を、バイオマス発電の燃料として活用していくことが望まれます。

「バイオ燃料とは何か」について知りたい方はこちらもチェック
バイオマスのカスケード利用とは何か

2-3.炭化バイオマスを活用する

バイオマス発電の燃料は、木質ペレットなどを炭化させた「炭化バイオマス」を活用するのが望ましいです。

なぜならば、海外からバイオマス燃料を輸入することも考えられるなかで、燃料重量を圧縮し、燃料効率を上げることで、バイオマス燃料の競争力が上げる(=燃料のコスト削減ができる)からです。

現状、バイオマス燃料の価格は「安い」とはいえません。

ベースロード電源として活用するには、バイオマス燃料を低廉化することが望まれます。その手段として、炭化バイオマスの活用が考えられます。

「炭化バイオマスとは何か」について知りたい方はこちらもチェック
【解説】炭化バイオマスとは?活用するメリット・注意点について

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