みなさん、こんにちは。草野です。
2026年に入り、アメリカおよびイスラエルによるイランへの軍事攻撃が勃発してから、いまだ終戦の兆しが見えていません。
そうしたなかで、エネルギー市場には激震が走っています。
ニュースを開けば、
「ホルムズ海峡の封鎖懸念」
「原油・LNG価格の暴騰」
といった言葉が飛び交っており、電気代や燃料費の上昇に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか?
2026年3月には、WTI原油先物が「1バレルあたり119ドル」もの高値を更新しました。
2026年1月は、「1バレルあたり60ドル」ほどでしたから暴騰というほかありません。
2026年7月現在では、83ドル前後で推移しており、やや落ち着きをみせていますが、戦争による原油価格への影響の甚大さを、改めて思い知らされたものです。
「これから一体、エネルギーはどうなってしまうんだ……?」
そんな不安が広がる今、脚光を集めているのが、「バイオマス燃料」です。
実は、バイオマス発電は、世界情勢がどれだけ緊迫しようとも、地政学リスクの影響を極めて受けにくい「最強の防波堤」になり得るポテンシャルを秘めているのです。
今回は、「なぜバイオマスは地政学リスクに強いのか?」についたて、わかりやすく解説していきます!
「バイオマス発電の『地政学的リスク』について知っておきたい!」という方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
1.バイオマスが地政学リスクに強い理由:中東エリアに依存しない燃料だから
なぜ、バイオマス発電は、リスクが低いのでしょうか?
単刀直入に結論を言えば、「物理的に中東を通るルートがゼロだから」です。
驚かれるかもしれませんが、日本が輸入しているバイオマス燃料(木質ペレットやPKSなど)のうち、ホルムズ海峡を通過しなければならないものは1トンもないのです。
さらに言えば、紅海側から出荷されるものもなければ、アフリカ大陸(南アフリカを除く)から届くバイオマス燃料もないのです。
日本のバイオマス燃料の主な調達先は、ベトナムやマレーシアなどの東南アジア、あるいはメキシコ湾沿岸などです。
パナマ運河や太平洋を経由して運ばれてくるため、中東でどれだけ激しい紛争が起きようが、海洋輸送の船が止まるルートを通っていないのです。
もちろん、まったく影響がないわけではありません。
現地の輸送トラックの軽油代や、原料乾燥用ボイラーの化石燃料代が値上がりすることで、サプライヤーから「価格の見直しをお願いするかも……」といった声が上がることがあります。
ですが、こうした事態は、東日本大震災の時に起きた「トイレットペーパー騒動」のようなもの。
一時的な流通の混乱や、心理的な売り惜しみに過ぎません。
原油やLNGのように、「物理的に燃料そのものが暴騰する/日本に届かなくなる」といった致命的なリスクの影響は受けずに済むのです。
2.太陽光や風力とはここが違う!「部材・中国依存」リスクの回避
「再エネなら、太陽光や風力だって燃料費がかからない。バイオマスと同様に、有事に強いエネルギーなのでは?」
なかには、こんなふうに思われた方もいるかもしれません。
確かに太陽や風力は、燃料不要で発電できる再生可能エネルギーです。
しかし、これらの再生可能エネルギーには、「特定の国から部材を調達するほかない」という地政学リスクが潜んでいます。
太陽光パネルは、世界生産の80~90%が中国製ですし、風力発電も、風車(タービン)のシェアの80%を中国が握っています。
一筋縄ではいかない中国と日本との微妙な関係……もしも将来、中国との政治的緊張が高まったら、どうなるでしょうか?
その際には、発電設備の建設もメンテナンスも、一気にストップしてしまうリスクがあるのです。
一方で、バイオマス発電はどうでしょうか?
バイオマスの優位性は、「リスクの高い国に依存する必要がない」という点にあります。
燃料となる木材は、海外輸入が7割を占めていますが、必ずしも中国などの他国に頼る必要がありません。
私はかねてから、「国産バイオマスを活用すればよい」とお伝えしてきました。
それは、日本が森林率世界第2位の森林大国であり、カスケード利用による林地残材などをかき集めれば、バイオマス燃料として活用できる余地が非常に大きいからです。
さらに、発電プラントの設備自体も、日本製や欧州製を中心に組み上げることができます。
これこそが、バイオマスが証明する地政学的リスクの低さなのです!
3.究極のリスクヘッジは「国産バイオマス」の活用!……だが立ちはだかる2つの壁
先述の通り、「究極のリスクヘッジ」こそが「日本国内の森林資源(国産バイオマス)」を使うことです。
万が一、化石燃料の輸入が止まっても、足元には膨大な木質資源が眠っているわけですから、「国産材で発電すればいい」というのは、とてもシンプルなロジックです。
ですが実は、この議論、FIT制度が始まった2013年から、ずっと平行線をたどっているのも事実です。
なぜ国産バイオマスへの完全シフトが進まないのでしょうか?
そこには日本の地理と業界が抱える「2つの大きな壁」が存在します。
ハードル①:集荷コストの壁(大型発電所の腹ペコ問題)
日本の主流である大型バイオマス発電所(50MWクラス等)は、年間約30万トンもの燃料を消費します。
これを国内材だけで賄おうとすると、発電所から半径300km以上の広範囲から木を集めてこなければならず、トラックの輸送コストだけで破綻してしまいます。
海外材なら、大型船で1万〜3万トンを一気に港へ横付けできるため、圧倒的にリーズナブルです。
すると、必然的に、輸入バイオマスを使おうという考えに至るのです。
ハードル②:急峻な「山」と林業構造の壁
日本の山はとにかく急です。
実は、我が国における平地は、国土の20~30%程度しかありません。
この点が大きな難点です。
日本の一般的な林業機械は、26度以上の斜面を登れないため、切った樹木を一度ケーブルで麓(ふもと)まで引き下ろさなければなりません。
そこから、小型トラックに積み替え、さらに大型トラックへに載せて製材所やペレット工場、チップ工場に運びます。
つまり、極めて手間とコストがかかるやり方でないと、バイオマスを運ぶことができないのです。
欧州のような高性能重機を導入すれば効率化できますが、個人の山林所有者が細切れに存在する日本の仕組みでは、高額な重機を買っても稼働率が上がりません。
結局のところ、「ベンツやロールスロイスを買って眠らせている」ような状態になってしまうのです。
この林業構造の改革を進めない限り、せっかくの「森林大国」のポテンシャルを100%発揮することはできません。
裏を返せば、「物流の仕組み」と「林業の機械化・合理化」を改善できれば、日本はエネルギー自給率を跳ね上げられるでしょう。
4.まとめ:地政学リスクに備えるなら、24時間動くバイオマスを軸にせよ!
皆さんもご存じの通り、「安価で安定した供給可能な燃料=化石燃料」という前提は崩れ去りました。
「二酸化炭素の排出源」として、敵視されるだけでなく、昨今の国際情勢のなかで「地政学リスク」が明るみになったからです。
そうしたなかで、バイオマス燃料の価値は、かつてないほど高まっています。
地政学リスクに強いことに加え、「24時間365日、天候に関係なく安定して発電できる」という、他にはない決定的な強みを持った再生可能エネルギーだからです。
今後は、日本の地域特性に合わせた「地産地消型」の比較的小さな国産バイオマス発電所を全国に増やしていくことが、日本のエネルギー安全保障にとって極めて重要な鍵となるでしょう。
「戦争や情勢不安に怯えない、持続可能なエネルギー基盤を作りたい」
もしもあなたもそうお考えであれば、今こそ「バイオマス」という選択肢に向き合ってみてはいかがでしょうか。
今回のコラムはこのへんでお開きにしたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!