「【専門家が解説】「農業残渣バイオマス」に秘められた可能性に政府も注目!」では、カンファレンス「Recycled Energy Asia」での内容をもとに「農業残渣バイオマスとは何か?」についてお話ししました。
本稿は「農業残渣バイオマス」に迫る第2弾として、前回のおさらいを踏まえつつ、以下の内容について解説します。
●農業残渣バイオマスとは何か?
●農業残渣バイオマスを活用する際のメリット・注意点
●農業残渣バイオマスの活用例
●農業残渣バイオマスの入手ルート
「バイオマス燃料の安価な入手方法を知りたい」という方にとって、参考になる内容かもしれません。それでは早速、みていきましょう。
目次
1.農業残渣バイオマスとは何か?
「農業残渣バイオマスとは何か?」について、ご存じない方もいらっしゃるかと思いますので、簡単にまとめてお伝えしたいと思います。以下をご覧ください。
●農業残渣バイオマスとは? 「使い道のない『農業残渣物』を、バイオマス発電所の燃料として有効活用しよう」というアイデアに基づいたバイオマス燃料 ●農業残渣バイオマスのメリット -捨てる予定の農業残渣物を燃料として活用するため「原材料費=ゼロ」 -世界中に、ふんだんに存在している -捨てる予定の農業残渣物を燃料として活用するため「食糧と競合しない」 ●農業残渣バイオマスにまつわる現状 -経済産業省が「農業残渣バイオマス」は「バイオマス燃料として適格か?否か?」を、審査・評価している ●農業残渣バイオマスの課題 -残渣バイオマスを燃料として加工する工程が必要になる |
農業残渣バイオマスについて詳しく知りたい方はこちらの記事もチェック! |
【専門家が解説】「農業残渣バイオマス」に秘められた可能性に政府も注目! |
2.農業残渣バイオマスを活用するメリット
バイオマス発電所の経営者様にとって、もっとも魅力的なのは
捨てる予定の農業残渣物を燃料として活用するため「原材料費=ゼロ」
という点だと思います。
一般的には「木質ペレット」などを用いますが、木質ペレットよりも燃料調達費が削減できるだろうと期待されているのです。
また「世界中にふんだんに存在している」のも、農業残渣バイオマスならではのメリットです(燃料においては「原料の賦存量(ふぞんりょう)が多い」という言い方をします)。
賦存量が多ければ多いほど、入手しやすくなる点で、バイオマス発電事業者の方々にとって、ありがたいことですね。
原材料費がゼロなので、燃料として安価である。
加えて、賦存量が多いため入手しやすい。
これが、農業残渣バイオマスを活用する最大のメリットです。
3.農業残渣バイオマスを活用する際の注意点
「1.農業残渣バイオマスとは何か?」で示した通り、農業残渣バイオマスには課題もあります。
それは「残渣バイオマスを燃料として加工する工程が必要になる」ということです。
重量に対して、50~70%ほどが水分で占められているような場合があると思います。そうした場合、水分を飛ばして、重量あたりの熱量を高めなければ、バイオマス燃料として使い物になりません。
この点をまず、理解しておきましょう。
そうしたなかで、「乾燥機やドライヤーで乾かそう」という発想に至るかもしれません。しかし、加工費にコストがかかりますから、できるだけ避けたいものです。
そのため「天日干し」をしたり、風通しのよい場所に保管するなど、自然の力を使って水分を落とすのがベストだと思います。
理想としては、50~70%程度含まれている水分を「15%前後」にまで落としたいものです。
なぜならば、農業残渣バイオマスの保持している熱量(kcal)が、自らの水分の蒸発に使われてしまい、バイオマス燃料としての性能が落ちてしまうからです。
このことは「木質チップと木質ペレットの熱量の違い」にも見て取れます。
木質チップでは、50%程度の水分が含まれていますが、それによって、熱量は2000kcal/1㎏程度しかありません。
一方、木質ペレットの水分量は「10%未満」となっているため、4000kcal/1㎏程の熱量があります。
木質ペレットと同じように、農業残渣バイオマスも、水分量を減らすひと工夫をすることで、燃料としての利用価値を向上できるのです。
内容をまとめます。
農業残渣バイオマスの市場優位性(=安価な燃料である)という特性を最大化するには、
天日干しなどの自然乾燥によって「4000kcal/1㎏」の熱量を含むようにする
のが手だということを知っておきましょう。
4.農業残渣バイオマスのメリット・注意点まとめ
ここで、農業残渣バイオマスのメリットと注意点を一覧表でまとめます。
以下を参考に、将来的に導入するか否かを検討してみてはいかがでしょうか。
◇農業残渣バイオマスのメリット・注意点まとめ
メリット | 注意点 |
・捨てる予定の農業残渣物を燃料として活用するため 「原材料費=ゼロ」 ・世界中に、ふんだんに存在している ・捨てる予定の農業残渣物を燃料として活用するため 「食糧と競合しない」 | ・残渣バイオマスを燃料として加工する工程が 必要になる →天日干しなどの自然乾燥によって 「4000kcal/1㎏」の熱量を含むようにすることで、 市場優位性(安価であること)を最大化する |
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【専門家が解説】「農業残渣バイオマス」に秘められた可能性に政府も注目! |
5.農業残渣バイオマスの活用例
「農業残渣バイオマスの活用を検討してみたい」と思った方のなかには「活用例が知りたい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論をいえば、サトウキビの搾りかすである「バガス」は、製糖工場の発電システム(ボイラー)に用いられている実用例です。
バガスは、製糖工場で発生する農業残渣物ですが、これがバイオマス燃料として有効活用されているのです。
一方、パーム油を製造する際に発生する農業残渣物「EFB(EMPTY FRUIT BUNCH)」は、農業残渣バイオマスとして活用できるのではないかと、期待を集めています。
以上が代表的な活用例です。
とはいえ、まだまだ活用例は、そう多くありません。
裏を返せば、これから本格的に到来するSDGs時代を見据えて、今から「農業残渣バイオマスの実用化(=農業残渣バイオマスメーカーになる)」に乗り出せば、先行者利益が得られる可能性があるといえます。
経済産業省は、農業残渣バイオマスは「バイオマス燃料として適格か?否か?」を、審査・評価している最中です。
今後の動向もウォッチしつつ、可能性を探っていきたいですね。
いずれにせよ、農業残渣バイオマスは、「これからの時代を担うスター燃料」になりうる可能性を秘めた“ダイヤの原石”なのではないでしょうか。
6.農業残渣バイオマスの入手ルート
前章を読んで、「バガスやEFBをバイオマス燃料として使いたい」と考えた方もいるかもしれませんね。
そういった方は「入手ルート」や「入手方法」が気になるのではないでしょうか。
結論をいえば、農業残渣バイオマスを入手するサプライチェーンは、まだしっかりと確立されていないのが現状です。
そのため、農業残渣バイオマスをバイオマス発電所で用いたいならば、メーカーやプランテーション各社に問い合わせるのが現実的です。
バガスであれば、海外の製糖メーカーに問い合わせてみるといった手段が考えられます。EFBであれば、インドネシアやマレーシアで、パームプランテーションを保有している会社や、パーム油の搾油工場に問い合わせるのがよいでしょう。
サトウキビの一大生産地は、ブラジル、オーストラリア、アジア諸国です。
このあたりの国々に目星をつけてみるのが良いかと思います。
(ちなみに、サトウキビは沖縄の名産品ですが、大規模産業にはなっておらず、バガスは自家消費されるのが現状のようです)
今後、農業残渣バイオマスのサプライチェーンが確立された際には、以下のような商流になるではないかと思います。
サプライチェーンが確立されれば、誰でも手軽に農業残渣バイオマスを活用できるようになるでしょう。
農業残渣バイオマスのサプライチェーン(想定) |
①海外の大規模農園(プランテーション保有会社/農業残渣の排出元) ↓ ②農業残渣バイオマスの燃料メーカー(天日干しなどの加工を行う) ↓ ③商社(燃料メーカーから農業残渣バイオマスを仕入れる) ↓ ④バイオマス発電所のオーナー |
7.まとめ
いかがでしたか。
農業残渣バイオマスについて、理解が深まりましたでしょうか。
ここで本稿の内容を整理します。
◇農業残渣バイオマスとは何か?
●農業残渣バイオマスとは? 「使い道のない『農業残渣物』を、バイオマス発電所の燃料として有効活用しよう」というアイデアに基づいたバイオマス燃料 ●農業残渣バイオマスのメリット -捨てる予定の農業残渣物を燃料として活用するため「原材料費=ゼロ」 -世界中に、ふんだんに存在している -捨てる予定の農業残渣物を燃料として活用するため「食糧と競合しない」 ●農業残渣バイオマスにまつわる現状 -経済産業省が「農業残渣バイオマス」は「バイオマス燃料として適格か?否か?」を、審査・評価している ●農業残渣バイオマスの課題 -残渣バイオマスを燃料として加工する工程が必要になる |
◇農業残渣バイオマスを活用する際のメリット・注意点まとめ
メリット | 注意点 |
・捨てる予定の農業残渣物を燃料として活用するため 「原材料費=ゼロ」 ・世界中に、ふんだんに存在している ・捨てる予定の農業残渣物を燃料として活用するため 「食糧と競合しない」 | ・残渣バイオマスを燃料として加工する工程が 必要になる →天日干しなどの自然乾燥によって 「4000kcal/1㎏」の熱量を含むようにすることで、 市場優位性(安価であること)を最大化する |
◇農業残渣バイオマスの活用例
・サトウキビの搾りかすである「バガス」は、製糖工場の発電システム(ボイラー)に用いられている
・パーム油を製造する際に発生する農業残渣物「EFB(EMPTY FRUIT BUNCH)」は、農業残渣バイオマスとして活用できるのではないかと、期待を集めている
◇農業残渣バイオマスの入手ルート
・バガスであれば、海外の製糖メーカーに問い合わせてみるといった手段が考えられる
・EFBであれば、インドネシアやマレーシアで、パームプランテーションを保有している会社や、パーム油の搾油工場に問い合わせるのが手
農業残渣バイオマスのサプライチェーン(想定) |
①海外の大規模農園(プランテーション保有会社/農業残渣の排出元) ↓ ②農業残渣バイオマスの燃料メーカー(天日干しなどの加工を行う) ↓ ③商社(燃料メーカーから農業残渣バイオマスを仕入れる) ↓ ④バイオマス発電所のオーナー |
本記事が、農業残渣バイオマスについて知りたい方のお力になりましたら幸いです。
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代表・草野は、バイオマス発電所のコンサルタントとして、これまでさまざまな開発事業に携わってきました。2017年からは、株式会社レノバ(東証プライム市場に上場している環境・エネルギー関連企業)で、エグゼクティブ・アドバイザーも務めております。
とりわけ「バイオマス燃料(木質ペレット)の安定調達」に関するサポートが一番の「得意分野」です。
これまで、数多くのバイオマス発電所さまに向けて、ニーズに合致した燃料供給事業者をご紹介してまいりました。
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