「期待のバイオマス燃料『SAF燃料』ってどんなもの?」
あなたは、SAF燃料について興味があるのではないでしょうか。
しかし、インターネットを検索しても「SAF燃料に関するわかりやすい記事」が見当たらないため、理解が進まず、困っているのではないでしょうか。
SAF燃料とは、
日本語で「持続可能な燃料」と訳されている通り、SDGs時代の本格的な到来を見据えて、今、もっとも注目が高まっている“期待の燃料”だといえます。
本記事は、「バイオマス発電所の建設コンサルティング/バイオマス燃料の調達サポート」を専門で行うYK partnersの代表・草野が、どこの記事よりもわかりやすく「バイオガス発電」について詳しく解説します。
そのため、
「SAF燃料の製造メーカーになるべきか」
「SAF燃料の製造メーカーに投資すべきか」
などについて、ヒントが得られます。
それでは早速、見ていきましょう。
目次
1.世界中から熱視線が集まる!「SAF燃料」とは?
本章では「SAF燃料とは何か?」について、詳しく解説します。
一つずつ、みていきましょう。
・「SAF燃料」の定義
SAF燃料の定義は以下の通りです。
つまり、航空機の燃料に、バイオマスなどの「再生可能資源」が含有されているものが、SAF燃料なのです。
SAF燃料は「Sustainable Aviation Fuel」の略称です。
日本語では「持続可能な燃料」と訳されています。
補足として「環境省環境再生・資源循環局」についても記載します。
出典:環境省環境再生・資源循環局「持続可能な航空燃料(SAF)について」
以上の通り、主に「捨てる予定の資源」や「バイオマス(生物由来の資源)」を用いることから、温室効果ガスの排出抑制につながるものとして、期待されています。
例外的に思えますが、捨てる予定の資源ということで「プラスチック」を活用する場合も、SAF燃料の定義の範疇となっています(環境省の定義による)。
・「SAF燃料」の原料は?
SAF燃料の原料は、以下に挙げられます。
通常、航空機に使われるジェット燃料は、重油を蒸留することで生成される「ケロシン(≒灯油)」が用いられています。これは、石油の一種です。
二酸化炭素を多量に排出する恐れが指摘されていることから、航空会社各社は、SAF燃料の利用を推進しているのです。
とりわけ、注目すべきは「輸送量あたりの二酸化炭素の排出量」です。
1回の輸送量に対して、二酸化炭素の排出量がどれだけ多いかを示す指標です。
以下は国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」についてまとめた棒グラフです。
ご覧の通り、自家用車と同等レベルであることがわかります。
出典:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」
こういった背景が、航空機業界の「SAF燃料推進」を後押ししているものと考えられます。
いうまでもないことですが、人・地球・環境の持続可能性を追求する「SDGs時代」が既に到来しています。
持続可能性を追求しない企業は生き残れません。
航空業界も、時代の要請に従って、できることから、一つひとつ取り組んでいるのが現状なのです。その方策の一つが「SAF燃料」なのです。
・「SAF燃料」の価格は?
SAF燃料は1リットルあたり「200円~1600円」です。
ジェット燃料の製造コストは、1リットルあたり100円程度なため、「2~16倍」も製造コストが高いことになります。
商用化に成功しているのは、一部の外国企業に限られていることもあり「製造コストの低減」はもっとも大きな壁の一つといえるでしょう。
2.「SAF燃料」に対する日本の動きは?
●日本政府の目標
日本政府は、2030年に、国内におけるジェット燃料需要の10%を「SAF燃料」に変えることを表明しています。量にして130万キロリットル程度となります。
●日揮ホールディングス/三菱地所
国内においては、日揮ホールディングスと三菱地所が「廃棄予定の食用油の回収」を共同で行うことを発表しました。
三菱地所については、2023年3月より、JR東京駅周辺の飲食店から排出される油を、日揮ホールディングスに提供します。
日揮ホールディングスは、コスモ石油らと設立した共同出資会社にて、2024年より「SAF燃料」の製造に乗り出す見通しです。
●三菱商事/ENEOSホールディングス
一方、三菱商事とENEOSホールディングスは、2027年中に、国内において「数十万キロリットルの供給ネットワーク」を構築することを目標にしています。
●丸紅/JAL
丸紅とJALは、SAF燃料の製造技術をもつ「フルクラム・バイオエナジー」社への出資を検討しています。
出典:日本経済新聞「再生航空燃料のSAF、国産化へ供給網構築 コスト課題に」 |
3.「SAF燃料」に対する世界の動向は?
●国連の目標
国連の専門組織の一つである国際民間航空機関(ICAO)は、2050年までに、二酸化炭素の排出量を「実質ゼロ」にすることを掲げています。
ただし、現状における世界のSAF供給量は、2020年時点で「約6.3万キロリットル」となっています。これは、「世界のジェット燃料供給量の0.03%」となっており、非常に高い壁がそびえていることがわかります。
●「商用化」に成功しているフィンランド企業「ネステ」
日本の大手企業含め、多くの企業がSAF燃料の製造に興味を示していますが「商用化」に向けた動きは始まったばかりです。
一方で、既に「商用化」に成功している企業があります。
それはフィンランドの再生可能エネルギー企業「ネステ」です。
以下、ネステの動向です。
・ハンガリーの航空会社「ウィズエアー」に、SAF燃料の供給契約を結んだ(2025年~)。毎年3万6000トンの購入が可能 ・ブリュッセル航空へにSAF燃料を供給したことを発表した ・エミレーツ航空の旅客機のエンジンにネステのSAF燃料を100%使用する実証飛行を行う ・日本貨物航空は、ネステのSAF燃料を用いた貨物便を運航開始 |
「いかに早く商用化に乗り出せるか」が、SAF燃料を取り巻く各企業の命運を分けるものと考えられます。
出典: ・日本経済新聞「再生航空燃料のSAF、国産化へ供給網構築 コスト課題に」 ・経済産業省/資源エネルギー庁「『持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会』について」 ・JETRO(日本貿易振興機構)「フィンランドのネステ、持続可能な航空燃料を複数企業へ供給」 |
4.まとめ
期待の新燃料「SAF燃料」について、理解が深まりましたでしょうか。
ここで、本記事の内容を整理します。
●「SAF燃料」の定義
廃材やバイオマス、廃棄される油・動物の脂などを用いたジェット燃料のこと
●「SAF燃料」の原料は?
・廃材
・廃棄される食用油/動物の脂
・バイオマス(植物/藻類)
・化石由来の廃棄予定のプラスチック
●「SAF燃料」の価格は?
1リットルあたり「200円~1600円」です。
ジェット燃料の製造コストは、1リットルあたり100円程度なため、「2~16倍」も製造コストが高いことになる
本記事が、SAF燃料について知りたい方のお力になりましたら幸いです。