【専門家記事】大注目の「BECCS」が持つ魅力3つを徹底解説!

バイオマスコラム
Aerial view to rural landscape in Czech countryside. Fields, farm and small village Luzany in Czech Republic, Central Europe.

2023年の年末に「【専門家コラム】『BECCS』は『温室効果ガス』を減らす画期的な技術!」という記事で、今、私が注目している「BECCS」について解説させていただきました。

バイオマス発電所において、燃料の燃焼によって発生するCO₂を回収・貯留することで「温室効果ガス」の排出を抑制するのが「BECCS」という技術です。

このBECCSについては、「低コスト化」に向けた技術開発が進展するなかで、世界的な広がりを見せるのではないかと期待しています。

それは、BECCSに際立った「3つの魅力」があるからです。

「BECCS」がもつ「3つの魅力」
・「ネガティブエミッション」を実現できる
・安定的に「ネガティブエミッション」を実現できる
・「回収・貯留」したCO₂は「再利用」できる

本記事では、前回の記事で詳しくお伝えしきれなかった魅力について、解説したいと思います。

一つずつ、見ていきましょう。

・【魅力①】「ネガティブエミッション」を実現でき

BECCSの最大の魅力とは「ネガティブエミッション」を実現できることです。

ネガティブエミッションとは、温室効果ガスを減らすことです。

再生可能エネルギーにおいて、ネガティブエミッションを実現できるのは「バイオマス発電所+BECCS」による組み合わせだけです。

この点については「【専門家コラム】『BECCS』は『温室効果ガス』を減らす画期的な技術!」でもお伝えした通りです。

念のため、おさらいしておきましょう。

皆さんもご存じの通り、地球の地中には「石炭・石油」などの資源が埋まっています。

これらは、私たち人間が掘り起こさない限り、気化しません。

つまり、温暖化の原因になる「温室効果ガス」を生じさせません。

一方、人間が石油や石炭を掘り起こして燃やしたら(=燃料として使用したら)どうなるでしょうか。

結論を言えば「温室効果ガス」となって放出されます。

大気中に、温室効果ガスが漂うと、そこで生じた熱は、宇宙に逃げることなく「グリーンハウス(温室)」のように、貯めこまれてしまうのです。

これが「地球温暖化」の原因だとされています。

簡単にまとめると、以下の通りです。

・「CO₂」を地中に貯留する=「温室効果ガス」が増えない(±0)
・「CO₂」が空気中に放出される=「温室効果ガス」が増える(+)

以上の通り、「CO₂」が地中にあるのか、空気中に漂っているかが「温室効果ガスを生成するか否か」を左右するというわけです。

BECCSは、こうして放出される「温室効果ガス」を大気中に放出させず、「回収・貯留」させることで、温暖化の防止に役立てるテクノロジーです。

このことから、「CO₂」を貯留・固定するBECCSは「ネガティブエミッション技術」だといえます。

太陽光、風力、地熱などの「再生可能エネルギー」において、ネガティブエミッションを実現できるのは「バイオマス発電所+BECCS」による組み合わせだけです。

これが、BECCSの持つ“最大の魅力”です。

「BECCS」について知りたい方は以下の記事もチェック!
【専門家コラム】『BECCS』は『温室効果ガス』を減らす画期的な技術!
覚えておきたいトレンドキーワード:「CCS」
BECCSは「BioEnergy with Carbon Capture and Storage」の略語です。つまり、バイオマス発電と組み合わせた技術という意味合いに限定されます。
一方、バイオマス発電に限らず、広く一般に温室効果ガスを回収・貯留する技術を指す言葉に「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)」があります。
CCSは、発電所や化学工場などから排出されたCO₂を、回収・貯留する技術です。


出典:資源エネルギー庁「知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる『CCUS』

・【魅力②】安定的に「ネガティブエミッション」を実現できる

2つ目の魅力が「安定的にネガティブエミッション」を実現できるという点が挙げられます。

例えば「植林」は、ネガティブエミッション(=温室効果ガスの削減)を実現する手法の一つですが、維持管理が難しいという問題があります。

自然発生の山火事で植林が燃えてしまったとか、樹木が盗まれてしまう(=盗伐と言います)といったことが起こりえるからです。

一方、BECCSであれば、機器を用いた確実な回収・貯留が実現できるため、安定的にネガティブエミッションを実現できます。

・【魅力③】「回収・貯留」したCO₂は「再利用」できる

3つ目の魅力は「『回収・貯留』したCO₂を『再利用』できる」という点です。

「カーボンリサイクル」という言葉をご存じでしょうか?

温室効果ガスを回収・貯留し、再活用することです。

ただ単に、回収・貯留して終わりではなく、資源として有効活用しようというものです。

資源エネルギー庁は、このカーボンリサイクルを推進しています。

現在、カーボンリサイクルに関わる技術開発が進められています。

以下の通り、大きく分けて3つの活用方法が見出されています。

・化学品

・燃料

・鉱物

出典:資源エネルギー庁「未来ではCO2が役に立つ?!『カーボンリサイクル』でCO2を資源に

BECCSは「カーボンリサイクル」を実現できる技術です。

わかりやすいところでは「ドライアイスの製造」や「炭酸飲料の製造」などが挙げられます。

BECCSを用いて回収されたCO₂を、炭酸飲料に活用すれば「グリーンソーダ」などといったネーミングで販売できるかもしれませんね。

一方、とあるプラントでは、植物の生長を促すためにCO₂が必要なため、化石燃料から発生したCO₂を使っているそうです。

これを「バイオマス発電所から出てくるCO₂に切り替えたい。つまりグリーンCO₂に切り替えたい」という相談があります。

このように、BECCSで回収・貯留したCO₂は「再利用」し、ビジネス化できる点で魅力的です。

とりわけ、SDGs時代だからこそ、大きなビジネスチャンスがあるものと考えられます。

ただし、注意点が1つあります。

現時点では、広く一般には普及しておらず、より魅力的な技術開発、低コスト化に注力しているという点です。

資源エネルギー庁は、カーボンリサイクルにおけるロードマップを策定しており、おおむね以下のような計画を持っています。

資源エネルギー庁
「カーボンリサイクル技術ロードマップ」

【フェーズ①】(~2030年までに)技術開発・低コスト化
【フェーズ②】(~2050年までに)一般への普及
【フェーズ③】(2050年~)さらなる低コスト化(「CCS」は、現状の1/4分以下を目指す)

今後の開発・低コスト化に期待ですね。

余談ですが、回収・貯留した分離・貯留したCO₂を再活用する技術は「CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)」と呼ばれています。

CCUSも、昨今よく聞かれる再生可能エネルギー関連の用語です。

ぜひ、覚えておきましょう。

・まとめ

いかがでしたか。

「BECCSの魅力」について、理解が深まりましたでしょうか。

ここで本記事の内容を整理します。

「BECCS」がもつ「3つの魅力」
・「ネガティブエミッション」を実現できる
・安定的に「ネガティブエミッション」を実現できる
・「回収・貯留」したCO₂は「再利用」できる

既にお伝えした通り、BECCS「低コスト化」に向けて、今もなお技術開発が進められているところです。

今後の技術開発の動向に、引き続き注目していきたいと思います。

本記事が、BECCSについて知りたい方のお力になりましたら幸いです。