【専門家記事】バイオマスリファイナリーとは何か?

バイオマスコラム
Beautiful sunset over the modern biofuel factory

1.バイオマスリファイナリーとは何か?

●バイオマスリファイナリーとは?

「バイオマスリファイナリー」とは、バイオマス資源を精製することで、化学品・素材・燃料(エネルギー)などに変換することです。

言い換えれば、バイオマス資源を精製することで「付加価値」を高め、人類に役立つものを作ることが「バイオマスリファイナリー」だと表現できます。

わかりやすい事例としては、サトウキビやトウモロコシを精製し「バイオエタノール」を作ることなどが挙げられます。

以下は、産業技術総合研究所(産総研/AIST)が「バイオマスリファイナリー」を説明した図です。

「木質バイオマス(廃材、間伐材など)」や「廃棄物系バイオマス」に、何らかの手を加え(=分解、酵素糖化、ガス化など)、化学品・エネルギー・素材などに変換していることがわかります。

「バイオマスリファイナリーとは何か?」について、理解を深めるうえで、参考にしてみてください。

出典:産業技術総合研究所「産総研バイオマス化学の研究開発

●オイルリファイナリーとは?

「バイオリファイナリー」と、似たような言葉に「オイルリファイナリー」があります。

これは、石炭・石油などの科学資源から、ガソリン・軽油などの燃料、プラスチック・合成繊維などの素材を作ることです。

2.「バイオマスリファイナリー」で押さえたい「重要なポイント」=「余すことなく徹底活用する!」

●パルプの生成過程で抽出される「黒液」に秘められた可能性!

バイオマスリファイナリーで押さえておきたいのは「バイオマス資源を、余すことなく徹底的に有効活用する」ことです。

例えば、製紙メーカーは「木質チップ」を海外から輸入して、それを薬品と一緒に煮て「パルプ」と呼ばれる繊維状の原料を生成し、紙を製造します。

この紙を製造する「蒸解・洗浄」のプロセスでは、副産物として「Black liquor (黒液)」が生成されます。この黒液には、アルカリ等の薬品と木材から溶出した「リグニン」などの有機物が含まれています。

有機物が含まれていることから、黒液は、製紙工場のマシンを動かす「燃料(再生可能エネルギー)」として使うことができます。

製紙工場における「化石燃料の使用量削減」「温室効果ガスの削減」につながるグッドアイデアですね。

以上の通り「バイオマス資源を余すことなく徹底的に活用する」というのが、バイオマスリファイナリーにおいて押さえておきたい重要ポイントです。

●「熱分解装置」から生成される「ヘミセルロース」は「バイオプラスチック」の原料になる!

「バイオマス資源を、余すことなく徹底的に有効活用しよう」という観点では、欧州にある「熱分解装置=Pyrolysis, Thermal decomposition」も参考になります。

これは、木材を「無酸素状態」で蒸し焼きにして「炭」を作る装置です。

日本の伝統的な炭焼き技術を応用しています。

この装置では「個体(木炭)」だけでなく「液体(木酢液)」と「気体」を生成することができます。

このとき生成される「ヘミセルロース」という気体は、植物細胞壁に含まれる「不要性多糖類」なのですが、非常に素晴らしい可能性を秘めたものです。

なぜならば、ヘミセルロースを原料に「バイオプラスチック」を生成できるからです。

「HEMIX」というバイオプラスチックをご存じでしょうか。

これは、「海中生分解性」が100%のバイオプラスチックです。

海の中に漂った場合、100日間以内に「99%以上」が生分解されるようです。

これは「世界最速の分解速度」で、海洋プラスチック問題を解決する突破口になるだろうと考えられています。

ヘミセルロースを生成できる「熱分解装置」は実用化されていますが、プラントがかなり高価なため、あまり普及していないのが現状です。

将来的には、製紙メーカーの蒸解釜とならんで重宝される機械装置になるだろうと期待しています。

外部リンク(参考記事):ヘミセルロース活用のバイオプラスチック「HEMIX」とは? 世界最速の海中生分解速度の性質を知る

炭を生成するだけでなく「副産物」である「ヘミセルロース」も徹底的に有効活用するーこういった考え方が、バイオマスリファイナリーを実施するうえで、是非とも押さえておきたいことです。

「バイオマスリファイナリにおいては、バイオマス資源を徹底活用することが大切なのだ」と、覚えておいてください。

「バイオマスリファイナリー」と併せて覚えておきたい「カスケード利用」とは?

「バイオマスリファイナリー」に近い考えとして挙げられるのが「バイオマス資源のカスケード利用」です。
例えば、伐採した木から製材を作って終わりではなく、先端の細い部分や枝葉なども全部使い切ります。
また、木の伐採作業の際に出てくる「林地残材」を集めて、バイオマス燃料として活用するのも「カスケード利用」の好例です。
現在「林地残材」は、そのまま林地に放っておかれることが多いですが、これらを有効活用しようという考えですね。
カスケード利用では、バイオマス資源を最大限、有効活用するため、森林関連事業の従事者の方々の収益性を高めることにつながります。
バイオマスの「カスケード利用」について知りたい方におすすめの記事
【専門家記事】バイオマスのカスケード利用とは?定義・メリットを解説

3.まとめ

いかがでしたか。

バイオマスリファイナリーについて理解が深まりましたでしょうか。

ここで、本記事の内容をまとめます。

●バイオマスリファイナリーとは何か?
「バイオマスリファイナリー」とは、バイオマス資源を精製することで、化学品・素材・燃料(エネルギー)などに変換すること
●「バイオマスリファイナリー」で押さえたい「重要なポイント」=「余すことなく徹底活用する!」
・パルプの生成過程で抽出される「黒液」→工場で使う「燃料」になる
・炭を生成する「熱分解装置」から出る「ヘミセルロース」→「バイオプラスチック」の原料になる

本記事が、バイオマスリファイナリーについて知りたい方のお力になりましたら幸いです。