【専門家記事】バイオマスのカスケード利用とは?定義・メリットを解説

バイオマスコラム

バイオマス発電所の経営を検討するなかで「カスケード利用」という言葉をお聞きになったことがあるかもしれません。

バイオマス資源のカスケード利用とは、バイオマス資源の「品質・用途別」に、余すことなく利用することで、資源を有効活用することです。

バイオマス発電所においては、使い道のない「木質ペレット」を燃料として活用しようという考え方があります。そうすれば、経費の大部分を占める燃料費を大幅に抑えられて、経営が安定するからです。

「バイオマス発電所の経営を安定させるための視点が知りたい」

という方にとって参考になる記事です。

それでは早速、ご覧ください。

1.バイオマス発電所における「カスケード利用」の定義

冒頭でお伝えした通り、バイオマス発電所におけるカスケード利用の定義は以下の通りです。

バイオマス発電所におけるカスケード利用の定義
バイオマス資源の「品質・用途別」に、余すことなく利用することで、資源を有効活用すること

製材工場に運び込まれた樹木を例に、順を追ってみていきましょう。

製材工場に運び込まれた樹木における「カスケード利用」
第1段階家具などの「角材」「板」として活用する
第2段階紙の原料であるパルプ用の「チップ」として活用する
第3段階おがくず・樹皮・小枝などの端材を「パーティクルボード」として活用する
第4段階パーティクルボードにできなかったおがくず・樹皮・小枝などの端材を「木質ペレット」として活用する

・【第1段階】家具などの「角材」「板」として活用する

製材工場は、机や椅子などの家具に利用するための材木を切り出す場所です。

これらの家具を製造するために必要なのは「角材」や「板」などの材木です。

切り出した丸太のうち「木目がきれいなところ」や「そのまま使える部分」が、角材や板となり、利用されます。

樹木のなかでも「価値の高い部分」が、家具の材木として利用されるということです。

みなさまもご存じかと思いますが、角材や板の断面は、正方形や長方形です。このような形になっているのは、丸太の側面を切り出しているからです。

切り出された片側だけ丸みのある端材は「背板」と呼ばれています。机や椅子の製造には使えませんが、カスケードの第2段階以降で余すことなく活用されます。

・【第2段階】紙の原料であるパルプ用の「チップ」として活用する

カスケード利用の第2段階は、紙の原料である「パルプ用のチップ」としての活用です。「背板」は、パルプ用のチップとして、製紙工場に運び込まれます。

まとまった量のチップを用いるため、残らず有効活用されます。

・【第3段階】おがくず・樹皮・小枝などの端材を「パーティクルボード」として活用する

家具を作るために角材や板を切り出すときには、背板以外にも「おがくず」「樹皮」「小枝」などの端材が出ます。また、林地には家具などに活用できない「未利用材」が放置されています。

これらはそのまま廃棄されるのでは?と思われるかもしれません。

しかし実は、これらの端材にも使い道があります。

それは「パーティクルボード」への加工です。

パーティクルボードとは、細かなチップ状にした端材を加熱圧縮した板のことです。

パーティクルボードは、丸太から切り出した材木と同じように、家具として使われるほか「遮音性」や「断熱性」に優れていることから、壁・床・屋根などの材料として活用されています。

「遮音性」があることから、スピーカーに活用されることもあります。

用途がなさそうな端材ですが、パーティクルボードに加工すれば、さまざまな用途があるものなのです。

・【第4段階】パーティクルボードにできなかったおがくず・樹皮・小枝などの端材を「木質ペレット」として活用する

パーティクルボードにも活用しない端材は、バイオマス発電所で用いられる「木質ペレット」などの燃料として活用されます。

製材工場にとっては「捨てるしかないものを有償で買い取ってもらえる」という点で、歓迎されるものです。

バイオマス発電所にとっても「非常に安価な価格で、燃料となる木質ペレットを調達できる」というメリットがあります。

従って、バイオマス資源のカスケード利用は、製材工場・バイオマス発電所の双方がWin-winになれる考え方だといえます。

これまでご説明してきた通り、切り出された樹木は、第1段階~第4段階までのプロセスを経ることで「無駄なく・余すことなく」有効活用することができます。

この一連の流れが「バイオマス資源のカスケード利用」なのです。

「バイオマスのカスケード利用」に似た概念「バイオマスの5F」とは?

バイオマスのカスケード利用に似た概念として「バイオマスの5F」があります。これも、カスケード利用と同様、価値あるものから順に使い、おがくずなどの端材に至るまで、余すことなく使おうという考えです。

イラストの通り、最上位にある第1段階が「食糧」としての活用です。

続く第2段階が、洋服などに用いる「繊維」として活用になります。

第3段階が、家畜の「飼料」として活用します。

第4段階が「肥料」としての活用です。

第5段階が、バイオマス発電所などの「燃料」として活用するものです。

カスケード利用と同じく「限りある資源の有効活用」を提唱する考え方といえます。

カスケード利用の流れを構築していくことは、地球環境保全と林産業の活性化にとって、大変重要な意味があります。

2.バイオマス発電所がカスケード利用するメリット

バイオマス発電所が、バイオマス資源をカスケード利用するメリットは「安価な燃料の調達が可能になる」という点です。

これまで説明した通り「家具→紙→パーティクルボード→木質ペレット」の順で、材木としての価値が下がっていきます。

もしも、家具や紙に加工できる段階の材木を、バイオマス燃料として調達すると、非常に高くつきます。バイオマス発電所としては、採算が取れないでしょう。

だからこそ、バイオマス発電所の経営においては、カスケード利用の最下層の段階である「捨てるしかない端材」を買い取り、燃料として活用することが望まれるのです。

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3.まとめ

いかがでしたが。

バイオマス資源のカスケード利用について、理解が深まりましたでしょうか。

ここで本記事の内容をまとめます。

●バイオマス発電所における「カスケード利用」の定義

バイオマス資源の「品質・用途別」に、余すことなく利用することで、資源を有効活用すること

製材工場に運び込まれた樹木における「カスケード利用」
第1段階家具などの「角材」「板」として活用する
第2段階紙の原料であるパルプ用の「チップ」として活用する
第3段階おがくず・樹皮・小枝などの端材を「パーティクルボード」として活用する
第4段階パーティクルボードにできなかったおがくず・樹皮・小枝などの端材を「木質ペレット」として活用する

●バイオマス発電所がカスケード利用するメリット

バイオマス発電所が、バイオマス資源をカスケード利用すると、安価な燃料の調達が可能になる

本記事が、バイオマス資源のカスケード利用について知りたい方の参考になりましたら幸いです。