【「FIT認定燃料」に認可された農業残渣バイオマス燃料14種類!今後の動向も解説】

バイオマスコラム
bio power plant with storage of wooden fuel against blue sky"n

YKパートナーズ代表・草野が注目してきた「農業残渣バイオマス」に新展開!

あなたは「農業残渣バイオマス」をご存じでしょうか。

農業残渣バイオマスとは、バイオマス発電所の「燃料」として用いる「使い道のない農業残渣物(サトウキビ、アーモンドの殻、もみ殻など)などのことです。

バイオマスコラムでは、農業残渣バイオマスについて、何度か取り上げてきました。

この農業残渣バイオマスに、大きな展開があったので、本記事でお伝えしたいと思います。

「農業残渣バイオマス」について知りたい方は以下をチェック!
【専門家が解説】「農業残渣バイオマス」に秘められた可能性に政府も注目!
【専門家が解説】農業残渣バイオマスとは?メリット・注意点・入手方法

農業残渣バイオマス14種類が「FIT認定燃料」に!

先に結論を申し上げると、2023年1月に「14種類」の農業残渣バイオマスが『FIT認定燃料』として認められました。

新たに認定された燃料は以下の通りです。

「2023年1月」に「FIT認定燃料」に追加された14種類の燃料
・EFB(パームヤシ果実房)
・ココナッツ殻
・カシューナッツ殻
・くるみ殻
・アーモンド殻
・ピスタチオ殻
・ひまわり種殻
・コーンストローペレット
・ベンコワン種子
・サトウキビ茎葉
・ピーナッツ殻
・カシューナッツ殻油
・稲わら/麦わら(※)
・もみ殻(※)
※稲わら・麦わら・もみ殻は、食用バイオマスではないものの、これらを活用した食料生産を行っているため「継続的な議論が必要」とするのが政府の意向

出典:資源エネルギー庁「バイオマス発電について」(2023年1月)

そもそも、FIT制度のもと、製造した電力を買い取ってもらうためには「FIT認定燃料」を用いることが条件です。

今まで、固形燃料の「FIT認定燃料」は、以下の3つでした。

・木質ペレット
・木質チップ
・PKS(パームヤシの殻)

上記のうち、農業残渣バイオマスはパームヤシの殻である「PKS」のみです。

今回の資源エネルギー庁の発表で、14種類の農業残渣バイオマスが「FIT認定燃料」に追加されたため、バイオマス発電業界では、ビッグニュースになっています。

●バイオマス発電事業者にとっての嬉しいメリット

どうして、バイオマス業界で、ビックニュースになっているのでしょうか?

それは、これまでよりも安価に「バイオマス燃料」を調達できるようになるかもしれないからです。

輸入ものの「木質ペレット」の燃料費は「2万円~/1トン」となりますが、標準的なバイオマス発電所では、年間8000トンほどの燃料が必要となります。

従って、それだけで「1億6000万円」もの経費が発生します。

一方、農業残渣バイオマスの場合は、どうでしょうか。

その名の通り、捨てる予定のものを用いるため、基本的には「原材料費=ゼロ」です。

もちろん、農業残渣バイオマスに含まれている水分量を「15%前後」まで落とすために「天日干し」で水分を飛ばすなど、手間はかかりますが、賦存量が多く、世界中、どこからでも入手しやすい点で、とても魅力的な燃料です。

経費のうち、80%を占めるバイオマス燃料費を「大幅にコストカットできるかもしれない」となれば、バイオマス発電所の「売上拡大」につながります。

この点が、バイオマス業界で「ビッグニュース」になっている理由です。

バイオマス発電所にとっては「追い風」といえる動きですね。

●バイオマス発電業界で「予想される動き」とは?

今後、バイオマス発電業界で予想されるのは「農業残渣バイオマスの開発競争」です。

とりわけ、カシューナッツの殻、ココナッツの殻、アーモンドの殻、ピーナッツの殻など、「殻系バイオマス」がまず先陣を切って開発されることになりそうです。

これらは、食品工場で発生する残渣物なので、集荷の手間がかからず「低価格」が期待できるからです。

ただし、農業残渣バイオマスは、発電ボイラーが嫌う成分(塩素・ナトリウム・カリウムなど)を含みますから、さまざまな工夫が必要になるかと思います。

農業残渣バイオマスが、発電ボイラーでの利用にも足りうるものとして、製品価値を高めれば「バイオマス発電所」だけでなく「一般産業」も、農業残渣バイオマスを利用するようになるのではないでしょうか。

具体的には、化学品メーカー、鉄鋼メーカー、セメントメーカーなど、石炭を大量に使用する業界です。

いずれにせよ「農業残渣バイオマス」の活用は、

①バイオマス発電所の「燃料費」を「大幅にカット」できる可能性がある

②捨てる予定の「残渣物」を燃料にするため、温室効果ガスを減らす「サステナブルな取り組み」である

という点で、今後とも注目を集めていくことでしょう。

●まとめ

いかがでしたか。

農業残渣バイオマスのビッグニュースについて、理解が深まりましたでしょうか。

最後に、本記事の内容を整理します。

●農業残渣バイオマス14種類が「FIT認定燃料」に!

「2023年1月」に「FIT認定燃料」に追加された14種類の燃料
・EFB(パームヤシ果実房)
・ココナッツ殻
・カシューナッツ殻
・くるみ殻
・アーモンド殻
・ピスタチオ殻
・ひまわり種殻
・コーンストローペレット
・ベンコワン種子
・サトウキビ茎葉
・ピーナッツ殻
・カシューナッツ殻油
・稲わら/麦わら(※)
・もみ殻(※)
※稲わら・麦わら・もみ殻は、食用バイオマスではないものの、これらを活用した食料生産を行っているため「継続的な議論が必要」とするのが政府の意向

●バイオマス発電事業者にとっての嬉しいメリット

安価に「バイオマス燃料」を調達できるようになるかもしれない

●バイオマス発電業界で「予想される動き」とは?

・「農業残渣バイオマスの開発競争」が活発化する

●「農業残渣バイオマス」の活用は、以下の2点から、今後とも注目を集めていく

①バイオマス発電所の「燃料費」を「大幅にカット」できる可能性がある

②捨てる予定の「残渣物」を燃料にするため、温室効果ガスを減らす「サステナブルな取り組み」である

本記事が「農業残渣バイオマス」について知りたい方のお力になりましたら幸いです。