目次
●YKパートナーズ代表・草野が注目してきた「農業残渣バイオマス」に新展開!
あなたは「農業残渣バイオマス」をご存じでしょうか。
農業残渣バイオマスとは、バイオマス発電所の「燃料」として用いる「使い道のない農業残渣物(サトウキビ、アーモンドの殻、もみ殻など)などのことです。
バイオマスコラムでは、農業残渣バイオマスについて、何度か取り上げてきました。
この農業残渣バイオマスに、大きな展開があったので、本記事でお伝えしたいと思います。
「農業残渣バイオマス」について知りたい方は以下をチェック! |
・【専門家が解説】「農業残渣バイオマス」に秘められた可能性に政府も注目! ・【専門家が解説】農業残渣バイオマスとは?メリット・注意点・入手方法 |
●農業残渣バイオマス14種類が「FIT認定燃料」に!
先に結論を申し上げると、2023年1月に「14種類」の農業残渣バイオマスが『FIT認定燃料』として認められました。
新たに認定された燃料は以下の通りです。
「2023年1月」に「FIT認定燃料」に追加された14種類の燃料 |
・EFB(パームヤシ果実房) ・ココナッツ殻 ・カシューナッツ殻 ・くるみ殻 ・アーモンド殻 ・ピスタチオ殻 ・ひまわり種殻 ・コーンストローペレット ・ベンコワン種子 ・サトウキビ茎葉 ・ピーナッツ殻 ・カシューナッツ殻油 ・稲わら/麦わら(※) ・もみ殻(※) ※稲わら・麦わら・もみ殻は、食用バイオマスではないものの、これらを活用した食料生産を行っているため「継続的な議論が必要」とするのが政府の意向 |
出典:資源エネルギー庁「バイオマス発電について」(2023年1月)
そもそも、FIT制度のもと、製造した電力を買い取ってもらうためには「FIT認定燃料」を用いることが条件です。
今まで、固形燃料の「FIT認定燃料」は、以下の3つでした。
・木質ペレット ・木質チップ ・PKS(パームヤシの殻) |
上記のうち、農業残渣バイオマスはパームヤシの殻である「PKS」のみです。
今回の資源エネルギー庁の発表で、14種類の農業残渣バイオマスが「FIT認定燃料」に追加されたため、バイオマス発電業界では、ビッグニュースになっています。
●バイオマス発電事業者にとっての嬉しいメリット
どうして、バイオマス業界で、ビックニュースになっているのでしょうか?
それは、これまでよりも安価に「バイオマス燃料」を調達できるようになるかもしれないからです。
輸入ものの「木質ペレット」の燃料費は「2万円~/1トン」となりますが、標準的なバイオマス発電所では、年間8000トンほどの燃料が必要となります。
従って、それだけで「1億6000万円」もの経費が発生します。
一方、農業残渣バイオマスの場合は、どうでしょうか。
その名の通り、捨てる予定のものを用いるため、基本的には「原材料費=ゼロ」です。
もちろん、農業残渣バイオマスに含まれている水分量を「15%前後」まで落とすために「天日干し」で水分を飛ばすなど、手間はかかりますが、賦存量が多く、世界中、どこからでも入手しやすい点で、とても魅力的な燃料です。
経費のうち、80%を占めるバイオマス燃料費を「大幅にコストカットできるかもしれない」となれば、バイオマス発電所の「売上拡大」につながります。
この点が、バイオマス業界で「ビッグニュース」になっている理由です。
バイオマス発電所にとっては「追い風」といえる動きですね。
●バイオマス発電業界で「予想される動き」とは?
今後、バイオマス発電業界で予想されるのは「農業残渣バイオマスの開発競争」です。
とりわけ、カシューナッツの殻、ココナッツの殻、アーモンドの殻、ピーナッツの殻など、「殻系バイオマス」がまず先陣を切って開発されることになりそうです。
これらは、食品工場で発生する残渣物なので、集荷の手間がかからず「低価格」が期待できるからです。
ただし、農業残渣バイオマスは、発電ボイラーが嫌う成分(塩素・ナトリウム・カリウムなど)を含みますから、さまざまな工夫が必要になるかと思います。
農業残渣バイオマスが、発電ボイラーでの利用にも足りうるものとして、製品価値を高めれば「バイオマス発電所」だけでなく「一般産業」も、農業残渣バイオマスを利用するようになるのではないでしょうか。
具体的には、化学品メーカー、鉄鋼メーカー、セメントメーカーなど、石炭を大量に使用する業界です。
いずれにせよ「農業残渣バイオマス」の活用は、
①バイオマス発電所の「燃料費」を「大幅にカット」できる可能性がある
②捨てる予定の「残渣物」を燃料にするため、温室効果ガスを減らす「サステナブルな取り組み」である
という点で、今後とも注目を集めていくことでしょう。
●まとめ
いかがでしたか。
農業残渣バイオマスのビッグニュースについて、理解が深まりましたでしょうか。
最後に、本記事の内容を整理します。
●農業残渣バイオマス14種類が「FIT認定燃料」に!
「2023年1月」に「FIT認定燃料」に追加された14種類の燃料 |
・EFB(パームヤシ果実房) ・ココナッツ殻 ・カシューナッツ殻 ・くるみ殻 ・アーモンド殻 ・ピスタチオ殻 ・ひまわり種殻 ・コーンストローペレット ・ベンコワン種子 ・サトウキビ茎葉 ・ピーナッツ殻 ・カシューナッツ殻油 ・稲わら/麦わら(※) ・もみ殻(※) ※稲わら・麦わら・もみ殻は、食用バイオマスではないものの、これらを活用した食料生産を行っているため「継続的な議論が必要」とするのが政府の意向 |
●バイオマス発電事業者にとっての嬉しいメリット
安価に「バイオマス燃料」を調達できるようになるかもしれない
●バイオマス発電業界で「予想される動き」とは?
・「農業残渣バイオマスの開発競争」が活発化する
●「農業残渣バイオマス」の活用は、以下の2点から、今後とも注目を集めていく
①バイオマス発電所の「燃料費」を「大幅にカット」できる可能性がある
②捨てる予定の「残渣物」を燃料にするため、温室効果ガスを減らす「サステナブルな取り組み」である
本記事が「農業残渣バイオマス」について知りたい方のお力になりましたら幸いです。