目次
1.日本はもともと「バイオマス国家」だった!
日本は森林資源に恵まれた国です。
国土面積に占める森林面積の割合のことを「森林率」と言います。
この森林率、実は、フィンランドに次いで、世界第2位が「日本」であることはご存じでしょうか。
これは、かなり驚くべき事実だと思います。
出典:森の教室「森の多い国ってどこ?」
石炭や石油が登場するまでは「木材」が燃料でした。
冬になる前に伐採した木をナタで割って、薪にして使っていました。
昔、砂鉄から製鉄していた製鉄業の走りに「宮崎駿」の「もののけ姫」に出てくる「たたら製鉄」があります。ここで使っていたのは「木炭」です。
つまりバイオマスである木質から作った炭ですね。
このように、当時の産業は、石炭や石油が無くても、バイオマスで成り立っていました。これは、日本は森林が豊富にあったからにほかなりません。
第二次大戦後に政府による産業振興策として、山林には杉やひのきが植林されましたが、もともと多かったのはブナやクヌギなどの広葉樹だったと思います。
日本は、恵まれた森林資源をエネルギー源にしていました。
いわば「バイオマス国家」と呼んでもよいような国だったのです。
2.輸入材の割合は「72.2%」!バイオマス国家衰退の背景には2つの要因があった
先述の通り、日本は「バイオマス国家」と呼べるような国でしたが、現在の様相は異なります。
例えば「電力供給源」の主力は、バイオマスではありません。
グラフにある通り、エネルギー源のうち、バイオマスが占める割合はたったの「4.6%」です。
出典:特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所「2022年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)」
エネルギーだけではありません。
机や家具、紙などに用いられている国内材の割合も「27.8%」に留まります。そして、輸入材の割合が「72.2%」も占めているのです。
それは、木材への需要減に加えて、アメリカやカナダなどの諸外国から輸入される輸入材の方が安いことに起因します。
現在の日本は「バイオマス国家」と呼べるような国ではなくなっているのです。
出典:森の教室「森の多い国ってどこ?」
3.温暖化対策の過程で「国内林業の復活」も目指したい
そうしたなかで、現在「国内材の積極的な活用」に注目が集まっていることはご存じでしょうか。
「どうせならば、バイオマス資源は海外ではなく、国内から調達しよう!」
「国内林業を『エネルギー産業』の一つとして、復興させよう」
といった動きが目立っているのです。
事実、政府は
「国内産業では、国内材を使ってほしい」
「日本国内の林業の活性化につながるように」
といった主旨の発言をしています。
海外の輸入材よりも、国内材の方が「コスト高」ではありますが、それでも「国内材の利活用を推進する流れ」になることは、間違いありません。
日本政府は「温暖化対策」を進めるなかで「国内林業の復活」も実現したいのだと考えられます。
4.バイオマス国家に返り咲くメリット
僕は、かつての日本のように、再び「バイオマス国家」として返り咲くことに、大きなメリットがあると考えています。
バイオマス国家として返り咲くというのは、「林業」を日本の主力産業の一つに捉え直すなど、国内材を積極的に活用することを意味します。
なぜ、バイオマス国家として返り咲くことが大切なのでしょうか。
それは、「温室効果ガスの排出量削減」に向けて、大きく前進できるからです。
例えば「火力発電所の燃料を『石炭→バイオマス資源』に置き換える」としましょう。
そうすると、燃料を置き換えるだけで、すぐさま「カーボンニュートラル」を実現できます。今、稼働している火力発電所を廃棄しなくても済むのです。
現状では、石炭を主燃料とする「火力発電」の割合が「27.8%」と、LNGに次いで多く、火力発電を廃棄するのは、現実的ではありません。
火力発電に用いる燃料を、石炭をバイオマス資源に代替するのは、すぐに実現できる「超現実的なアイデア」だと、僕は思っています。
こういったアイデアを一つひとつ実行していくことが、地球温暖化の阻止に必要なことです。
「バイオマス国家」として返り咲くことには、持続可能な社会の実現に向けて前進できるという“大きなメリット”があるのです。
出典:特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所「2022年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)」
「カーボンニュートラルとは何か」知りたい方は、以下の記事もチェック! カーボンポジティブ、カーボンネガティブ、カーボンニュートラル |
5.バイオマス国家として返り咲くために必要なこと
日本がバイオマス国家として返り咲くために行いたいことがあります。
一つは、耕作放棄地への「エネルギー用途目的の植林」です。
つまり、使われずに放置されている土地に、バイオマス資源として活用するための樹を植樹するということです。
「後継ぎがいない」などの理由で、耕作放棄地が日本全国に点在しています。
その耕作放棄地に、一般的な樹木よりも成長が早く、比較的短時間でバイオマス資源として活用できる「早生樹種」を植えて、バイオマスエネルギーとして活用しようということです。
こういった取り組みを積み重ねていくなかで、日本は「バイオマス国家」として、再び返り咲くことができるのではないかと、私は考えています。
林野庁から出された提言ですが、現時点ではこれが、有益なアイデアの一つです。
「バイオマス国家」として返り咲くことで、日本は「温室効果ガスの削減目標」の達成に向けて、力強く前進することができるでしょう。
6.終わりに
2030年度における「温室効果ガス排出量」を2013年度比で「46%削減」する。
これは、菅義偉元首相が「地球温暖化対策推進本部」で、2021年4月に発言した内容です。
日本は、「持続可能な社会」のための一手として、温室効果ガスの大幅な削減を目指しています。
地球温暖化の原因として、石炭などが槍玉に挙げられており、既にヨーロッパ諸国は「脱石炭」を宣言しています。
しかし、日本は「脱石炭」を宣言できていません。
この現状をどうにかしなければならないと、僕は考えています。
そのアイデアの一つが「バイオマス国家」を目指すことであり、林業の復活でもあるのです。