目次
1.「火力発電の脱炭素化」ができるバイオマスの需要は“うなぎ上り”になる!
昨今、ニュースなどでもよく耳にする「再生可能エネルギー」。
英語では「Renewable Energy」と書き、尽きることのない自然界のエネルギーを指しています。
再生可能エネルギーは、太陽光、風力、水力、地熱、そしてバイオマスが代表的です。
これらのエネルギーを用いる場合、二酸化炭素を始めとする温室効果ガスを排出しないため、「カーボンニュートラル(大気中の温室効果ガスを増やさない)」です。
そのため、温暖化の進行を阻止するうえで大変有用なエネルギーだと考えられてます。
なかでも、バイオマス発電で用いられる「バイオマス燃料」は今後、皆さんが想像している以上に「世界中から求められる資源」になるのではないかと私は考えています。
バイオマス燃料の需要は“うなぎ上り”に上昇する——これが、私が想像する「未来予想図」です。
このような話をすると、
「バイオマス? 再生可能エネルギーのなかでは随分と地味なポジションじゃない」
などと疑問視されることがあります。
しかし、「バイオマスこそ再生可能エネルギーの救世主になりうる」という考えには、その考えを裏づける「いくつかの理由」があります。
一つは、世界で稼働している火力発電の「脱炭素化」と「カーボンニュートラル化」を一挙に実現できることです。
2.火力発電所を「カーボンニュートラル」にできる唯一無二の方法!
ご存じない方も多いのですが、実は、燃焼することで温室効果ガスを排出する「石炭」は、そのうち約半分が「火力発電」のために用いられています(残り半分は、製鉄業や化学品、セメント業界などの一般作業で使用されています)。
そのため、火力発電で用いられている「石炭」の使用料を減らせば、温暖化の阻止に「大きな貢献を果たす」と考えられています。
そこで、発電業界では、再生可能エネルギー化を推進するとともに、石炭を燃料に用いる「火力発電」を減らしていくことが決定しています。
とはいえ、すべてを廃炉にするのは、現実的ではありません。
発電設備の新設・交換には、莫大な予算が必要となるからです。
さらに、火力発電所を太陽光発電所や風力発電所などにすべて置き換えるのも現実的ではありません。
これらの再生可能エネルギーの発電量は「自然任せ」であり、実質的な稼働率としては20~30%ほどだからです。
私たちの日々の生活に必要な電力をまかなう「ベースロード電源」として使うことは期待できないものなのです。
そうしたなかで、私は火力発電所の「石炭」を「バイオマス燃料」に置換するというアイデアを考案しました。
こうすれば、現在稼働中の火力発電所を廃炉にせずとも「脱炭素化」できるからです。
また、「バイオマス燃料」に置換すれば「カーボンニュートラル」が実現できる点でも理に適っています。
※カーボンニュートラルとは? カーボンニュートラルとは、大気中の温室効果ガスを増やさないということ。 植物(バイオマス)は、成長過程で、空気中の二酸化炭素を吸収します。 そのため、植物(バイオマス)を燃焼したとしても、成長過程で吸収した二酸化炭素を再び排出しているに過ぎないことから、バイオマス燃料は「カーボンニュートラル(=温室効果ガスを増やさない)」だと考えられています。 |
この方法ならば、もっともローコストに温室効果ガスの排出抑制に取り組めるはずです。
コスト面でのメリットがとても大きいため、このアイデアが世界中で採用されれば、バイオマス燃料の需要は、今後数十年で“うなぎ上り”に高まると考えられます。
3.バイオマス資源をどうやって「バイオマス燃料化」すればいいのか?
「火力発電所の石炭をバイオマスに置換するのは、いいアイデアかもしれない」
「でも、バイオマスといっても植物でしょ? 水分が多いままでは、なかなか燃えないから、火力発電の『燃料』には使えないはず。そもそもどうやって調達するの?そして、どうやって燃料化するの?」
このような疑問を抱いた方もいるかもしれません。
その点については、「農業残渣物×加熱蒸気技術」が「一つの解決策」として挙げられます。
①「バイオマス」の調達方法:「農業残渣物」を回収する ②「バイオマス」の燃料化:「過熱蒸気技術」を用いる |
一つずつ、見ていきましょう。
①「バイオマス」の調達方法:農業残渣物の回収
まずバイオマス資源(植物)の調達方法ですが、世界中で廃棄されている「農業残渣物」を活用するのが良いと思います。
農業残渣物とは、作物の食べられない部分など、使い道のない残渣物のことです。
捨てられるだけならば、それを燃料として用いようというのが私のアイデアです。
この方法ならば「燃料の原価=ゼロ」です。
回収費や輸送費しかかからないため、非常に使い勝手がよいはずです。
農業残渣物について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
私自身、農業残渣物には大きな可能性を見出しており、過去、幾度に渡って記事にしてきました。
「農業残渣物」について知りたい方は以下の記事もチェック! |
・【専門家が解説】「農業残渣バイオマス」に秘められた可能性に政府も注目! ・【専門家が解説】農業残渣バイオマスとは?メリット・注意点・入手方法 ・「FIT認定燃料」に認可された農業残渣バイオマス燃料14種類!今後の動向も解説 ・【専門家コラム】近い未来、農業残渣・林業残材からSAFが作られる! |
②「バイオマス」の燃料化:「過熱蒸気技術」の活用
続いて、バイオマス資源(植物)を、火力発電で使える燃料にする方法ですが「過熱蒸気技術」を用いるのがグッドアイデアです。
この技術ならば「低コスト」ながら、「半炭化バイオマス※」を作ることができ、火力発電所の「バイオマス燃料」として使えるからです。
※「半炭化バイオマス」とは、炭化バイオマスほど熱処理を加えない固形炭素のことです。「炭化バイオマス」は「6000kcal/1㎏」である一方、「半炭化バイオマス」は「4500~4700kcal/1㎏」です。炭化バイオマスに比べると、やや熱量が低いですが、火力発電所で使う燃料として十分に事足ります。
「半炭化バイオマス」について知りたい方は以下の記事もチェック! |
・【解説】炭化バイオマスと半炭化バイオマスの違い・使い分け・メリット |
●「過熱蒸気技術」ってどんなもの?
過熱蒸気技術とは「超高温の蒸気」によって「乾燥・半炭化」できる技術です。
といっても、なんのことだかよくわからないので、かみ砕いて説明しますね。
皆さんもよく知る「水蒸気」は、モクモクとした湯気がたち上る「気体」であることはご存じかと思います。
この状態から、さらに250~300℃ほどまで過熱すると「高温の気体」になります。
この「高温の気体」の状態になると、モクモクとした蒸気は見えなくなります。
そして、この「高温の気体」を、バイオマスなどに吹きつけると、無酸素状態になり、水分が急速に奪われます。
そして、バイオマスを乾燥させることができます。
乾燥後、バイオマスの中心部まで、高温で加熱することで「半炭化(トレファクション)」できます。
このような流れで、バイオマスを燃料化(半炭化バイオマス化)できるのが「過熱蒸気技術」です。
バイオマス(植物)を「半炭化」できれば、火力発電でも問題なく燃料として活用できます。
ちなみにシャープの製品で「ヘルシオ」という調理器具がありますが、これは過熱蒸気を利用した調理器具です。
過熱蒸気技術は、身近な電化製品にも活用されているテクノロジーなのです。
以下に、過熱蒸気技術に関する資料がありますので、参考までにご覧ください。
この技術は、シニアベンチャー企業である「JBP(日本ブラックペレット株式会社」で取り扱っています。
この会社の過熱蒸気技術は、従来の炭化技術よりも格段に優れています。
次のようなメリットがあるからです。
【過熱蒸気技術のメリット5つ】 |
①炭化のムラがなく「均一」である ②製造コストが安い ③製品の歩留まりが高い ④プラントの発火・爆発リスクがない(火災が生じる高温は使用しないため) ⑤「炭化度合い」を調節できる |
技術の利点を把握するのがむずかしく、認知の獲得には時間が必要かと思いますが「大変有用な技術」ですので、個人的に応援しております。